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波乱の卒業式 ③
しおりを挟む彼女は何を言ったのでしょうか。
アースアイを持っている?
アースアイは王族の証拠。しかも不思議なことに嫁いだ先で、子には遺伝されない神の気まぐれに等しい不思議な瞳なのですよ。
それを元金貸しの娘が持っていると?
周りの姿が見えていないのか、彼女の口は油を差された機械のように滑らかにしゃべっている。
「魔王はアースアイが欲しい。この女は私が邪魔。Win-Winな関係じゃない?」
可愛らしくふふと笑う彼女に、この異様な雰囲気が相まって背筋が寒くなりました。それなのに、王子殿下と彼女の側にいる数人の男達はちやほや彼女を持ち上げ、わたくしには悪態の言葉を述べるのみ。
その前に、王子殿下の瞳と全く違うというのに、お揃いとは嬉しいな羨ましいな等といっております。
王子殿下はこんなに馬鹿では無かったと思うのですが。
恋は盲目とはこういうことなのですかね。
「君を魔王に渡しなどしない。」
「ティグリス…。」
「魔王もそいつは要らないだろうよ。」
異様な雰囲気に包まれていた会場に一人の男が入ってきた。その男はあの時に助けてくれた仮面の男です。仮面の男は迷いなく真っ直ぐに陛下とわたくしの側に寄り添って守るように立ってくれている。
その顔を見上げれば、優しい笑みを浮かべていてこんな状況ながらに、ほっとした安心感を感じることができます。
ただ、彼がわたくしの手に残る、引っ張り出された時に付いたアザを目撃したときは一瞬だけ殺気に包まれましたが。
その殺気はすぐに消えました。けど仮面の男の声色は低くなっています。
「お嬢さんは知らないと思うが、魔王はすでにアースアイを手に入れてる。」
「はぁ?アースアイはこの国の至宝でしょ?守っているものでしょ?」
「至宝だが、別の国の者と結婚する奴もいるだろ。でもって自ら魔王の妻になりに行ったらしいぜ。女神の様な人は。」
その名は、レオの大事な人の名前?
ハッとして、仮面の男を見れば口元には肯定とも取れる笑みが浮かび、大人びた手は優しく頭を撫でてくれた。そこにはちゃんと温もりを感じられる生きた手です。
「誰よそれ!私は特別な存在なの!」
「お前は女神と言うより人を誑かす楽園の蛇だな。」
「なんですって!未来の王妃に対して無礼よ!」
「無礼はお前だ。」
仮面の男は、目元を隠していた仮面に手を掛けてそれを外す。
その下に隠されていたのは紛れもなく、昨日までわたくしと共に居てくれた、レオの顔。でも、彼にはちゃんと実体があって半透明ではない。こえもはっきりと聞こえていて何時もよりも心地好い。
いえいえ、それよりもです。仮面で見えていなかった瞳には青色とブラウンがちゃんと混在したアースアイが現れた事が一番の驚きでした。
わたくしは察しが悪くはないとは思います。
その瞳と、彼の状況でレオが何者か分かってしまいました。
「私はレオナルド・コンティネンス。第36代国王の弟だ。」
やっぱりそうでした。
王弟が眠り続けていたのは魂が身体に居なかったから。レオ、いえレオナルド様が身体に戻らなかったのは自分が生きていることを知らなかったから。
陛下が婚約解消の時にレオナルド様がそわそわとしていた訳が分かりましたわ。そしてその時の話で、自分が生きていることを知ったのですね。
正体がわかり、陛下と王弟に囲まれているという状況に居心地が悪いのですが、レオナルド様の手がわたくしの肩をしっかりと抱き締めていて逃げられません。
陛下は少しだけ離れてによによとしていますし、アリアは顔を歪めて睨んできている。王子殿下は、驚愕の表情で当てに出来ないし、他の皆は、まさかのもう一人の王族登場に臣下の礼をとっている。
「アリア・ウォーレン。お前に教えておく。アースアイは青みがかったブラウンでなく青色とブラウンが混在した物だ。お前のそれは偽物だよ。」
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