わたくしは貴方を本当に…

SHIN

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小さな不穏の灯火

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 レオナルド様と幸せの余韻を堪能していると、父のわざとらしい咳払いが聞こえました。
 パッとお互い離れて、気恥ずかしげにしている隙にわたくしは父の隣に移動させられています。それについて、レオナルド様が舌打ちをしております。しかし父はそれを聞かなかったふりをしてまた、話を再開します。


「あとは、あの男爵令嬢がなぜアースアイだと思い込んでいたのか。」
「そうですわね。よくみても全く違いましたのに。」
「…蛇を唆した更なる悪魔か。」


  ちょっとだけふて腐れているレオナルド様の言葉にわたくしの不安が強まった。
 今考えると、彼らの退場はあまりにもあっさりではなかったでしょうか。
 特にアリアはもっと噛みついてくるかと思っていたのにたかだか、追い詰められただけで口をつぐむなんてらしくないわ。
 もっとわたくしのせいにしても可笑しくなかったのに。



「なんかきな臭くなってきたな。」
「兄さんにも伝えておく。」
「あら、そう言えば陛下がお兄様になるのですね。」


 そう言うことよね。
 あらあら、更に言えばレオナルド様の想い人のエルザ様も、魔王も親族になるのね。

 そう言えば自ら魔王の妻になりに行ったと言ってましたが、付き合いはあるのかしら。


「エルザ、正式にはエリザベート・クウェイトなんだが、彼女は秘された姫でな。」
「秘された姫ですか?」


 わたくしの疑問に答えてくれたのは、レオナルドさまで、エルザ様が以前に陛下が言っていたエリザ様だと教えてくださいました。


「エルザは、禁忌の末に出来た子なんだ。だからと言って本人は強かな性格でさ。」
「強かな性格とはまた、優しい言い方だな。」
「はは。でも女神の様に美しくて本当に優しいんだよ。」
「それは素敵ですね。」
「私は、姉のように懐いてて、名をもじり神話の女神、エルザと呼んだんだ。」
「えっ、姉のよう?」


 確か愛しい人なのでは。
 もしかして、異性としてではなく家族としてということでした?
 わたくしの勘違いでしたのね。それでは、エルザ様に申し訳ないことを。

 わたくしの勘違いの事を伝えれば、ブンブンと首をふって否定してくる。


「エルザは、あくまでも姉の様な人だからな。大切な人ではあるが。」
「そうですのね。」
「あの、ティグリスみたいに二股みたいなことはしてないぞ。わ、私が好きになったのは…(お前。)」
「?…はい。わかりました。」


 後半が聞こえにくかったですが、必死に言い訳をするように顔色を変えている、レオナルド様の姿が面白くてクスクス笑ってしまう。
 
 でも、二人で屋上から落ちたのですよね。


「そう。正確には、自殺しようとしたエルザを助けようとして二人で落ちたんだ。」
「…自殺。」
「ラスレアと一緒だよ。婚約者に裏切られたんだ。」


 そうですね。わたくしも、レオが居なかったら今頃居なかったか、嫉妬で狂っていたでしょうね。あの時はそんな気分でしたから。
 
 エルザ様の気持ちがよくわかってしまいます。


「で、二人共に木にぶつかって助かったけど、私は自分が死んだと思ってさ迷っていた。姫さんに出逢うまで学園から出られなかったし、生きてるなんて分からなかったよ。そして、ここから先は兄さんから聞いたはなしだけど。」


 レオナルド様を巻き込んでしまって、我に帰ったエルザ様は、婚約者だった人にこちらから三行半を叩きつけてしまったそうです。で、向こうはエルザ様を悪役しようとして自分自身を正当化しようとしていたらしいです。
 そのとき、下見に来ていた魔王がエルザ様の味方になってくれたのですって。
 そして、一目惚れしたエルザ様は魔王が帰った後に後を追って行ってしまったとか。魔王は強かな姫の心の綺麗さと、強い意思に相まって輝くアースアイの美しさに惹かれて、めでたく夫婦になったと。
 今では、二人のお子様を抱えてたまに遊びに来るのだとか。交流はあるみたいです。


 それにしてもエルザ様、行動力が半端ないですわ。


「身体に戻って魔王と仲良く写っているエルザの写真を見せられたときはなんとも言えないよ。」
「ふふ、でも、良かった。もし、エルザ様が恋敵だったら勝てませんわ。」
「だから、違うって。姫さん信じて。」


 そうね。姫さん呼びをやめてくださったら考えます。


「じゃあさ、レオナルド様も止めてよ。ラスレアにはレオって呼んで欲しい。」


 心ではたまにレオ呼びだったのですけど、それで良いと仰るなら堂々と呼ぶことにします。
 そう言えば、とても嬉しそうに笑ってくれました。

 そしてわたくしがさっそくレオと呼ぼうとした時、いつもでは考えられない姿の陛下が現れて中断してしまいました。



「レオナルド!お兄ちゃんだよ!」
「はっ倒す!」




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