その異界者、陰陽師なり。

SHIN

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初めての異世界ライフ

呪われた姫君



 ルードリィッヒを先頭に部屋から出れば、騒ぎを聞き付けた兵士が集まってくる。それをルードリィッヒが部屋に入らないように指示を出してくれている。
 まあ、換気したと言ってもまだ、鱗粉があるかも知れないしな。

 とりあえず、少しの間部屋は封鎖することにしたみたいだ。寝ているだけなのでそんなに急ぐことはないだろうと判断したようだ。
 



 所変わり、僕たちは石作の高い建物を上っている。
 もちろん、ルードリィッヒの案内でだ。そもそも、僕はルードリィッヒを人質にするつもりはなかった。だが、少し前に後で話があると言われていたのを思いだしてしまったのだ。
 それなら人質とした方が怪しまれないだろうと、そうしたまでだ。ちなみにルードリィッヒに巻き付けた紐は穏形の術と嘯いて外し済みだ。
 それで反撃してきたら本当に人質にするつもりだったのだが黙って話にのってくれたのでそのまま行くことにした。


「しかし、不思議な術を使うのですね。」
「ああ。まあな。」
「これが下法師の力なら色んな国が欲しがると思いますよ。」
「誰かに縛られるなんてごめんだね。」
「……あなた達、よく喋れる、わね。」


たかだか、百数段の階段を登ったぐらいで情けない。
 ぜーぜーと声を荒げ登る速度が落ちたユエを一瞥した。そして軽くため息を付けばそれが、揮発材となったのかまた速度が戻り再度登りを再開する。


「ほら、あそこです。」


 更に数分登れば、目の前には扉が現れた。
 窒素に見えて、上質な木材で作られているを見ればそこには重要な何かを隠しているのは確実だ。
 ルードリィッヒが扉を開ければ中には少し高台の寝床が
見えた。そこには小柄な人物が寝ている様だった。
 
 その人物はルードリィッヒと同じ若緑色の髪をしている。

 説明をという意味を込めて視線を送ればルードリィッヒは頷いた後静かに話を始める。


「彼女は私の双子の妹です。」


 彼女は3年前、謎の病に倒れたのだと言う。
 其までは健康でなんの前触れもなかった。
 病は彼女の四肢の自由を奪い、ゆっくりと石化していくのだという。その病が心の臓に至った時、死にいたる事となるらしい。

 今、この国の治癒師によって現状を維持している。

 
「父さんは、この病は魔族の呪いだと言っているが私には信じられない。」


 話をしているルードリィッヒの表情は苦しげだ。
 僕は、少女に視線を向けた。
 僕の眼にはおそらく彼には見えてないものが見えている。

 何が見えているか?
 ふふ、平安京でよく見慣れたものだよ。本当に怖いのは人間だと言うことだ。

 彼女には黒い靄が掛かっている。
 靄は時折人の形になり彼女を恨めしそうに睨んでいた。この正体はおそらく女。しかも結構年配の。

 僕は、彼女から視線を外し辺りを見回した。そして、彼女と同じ気配を持つ場所を見つける。それは寝床の下にあった。
 寝床の下を探せば手に触る箱の感触。うむ、間違いなさそうだ。


「ドーマン様?」
「この箱に呪いの媒体がある。」
「えっ。では……。」
「人を呪うのは人の専売特許だ。犯人は人族だろう。」


 そうですがと呟く声は優れない。下向き具合の表情は読めないが落ち込んでいる様だった。魔族に濡れ衣をきせているんだもんな。

 僕は、横目でそれを見たあとおもむろに少女の胸元の洋服を乱す。そのときに見えた彼女の腕は石の色となりひび割れていた。


「ちょっと!何しているの。」
「なんだ、やっと回復したか。」
「そうじゃなくて、身動きの取れない少女に何をしてるって話!」


 階段登りの疲労から回復したユエに『この野獣がぁ』と叫ばれているが気にせずに胸元を観察する。胸元が上下するのを見る限り生きているのが分かる。
 その奥元に見える呪いの媒体と繋がる靄を回収すべく胸元に手を這わす。

 チャキッ……

 更に置くに手を進めようとしたら、首もとに冷たい金属の感触がした。ルードリィッヒの武器だ。


「あなたがそんな男だとは思いませんでした。」
「はあ。」
「……なんですか。」
「ちょっと失礼するよ。」


 少女から手を離し、小袿をするりと脱ぎ更に狩衣の上を乱す。そこから現れるのは形のよい豊かな双丘。
 その姿のまま武器を軽くどかし、ルードリィッヒの方に向き直れば動きが止まり顔を真っ赤にする。


「あ、貴方女性?」
「ルードリィッヒ、続けても良いか?」
「は、はいっ!」


 目を細め微笑めば、ルードリィッヒは入り口の方を向きこちらに背中を向ける形の体勢になる。
 ユエは口をあんぐりと開き固まっていた。

 そんなに、驚きな事だったのだろうか。
 まあ、いい。
 僕が作業を続けようとしたら、今まで沈黙を守っていた青龍王が蛇の尻尾で嗜めるように素肌を叩く。
 わかっているちゃんと身だしなみを整えるよ。

 ちゃっちゃと元の姿になると少女の胸元に右手を当て、左手を自らの口許に剣印の形にして添える。
 囁く様に真言を唱えつつ、右手に力を込める。そうすると右手が少女の胸元に入ってゆく。少し入った所で何かを掴むと直ぐに抜いた。

 右手につかんだのは親指大の黒い塊。


「それは、何ですか。」
「少女を苦しめてた呪いの元だ。」


 えっ、と驚いた顔をしたルードリィッヒは少女の手を手に取りまじまじと見つめた。そこにはかつてはあったであろう石化の症状はない。
 ほっとした顔に変わったのを確認したら、呪いの触媒の箱をふって意識をこちらに向けさせる。


「これは、僕が貰っても良いか?」
「え、ええ。ですが危険ですよ。」
「んー、こういうのが専門だから大丈夫だ。ちなみに、今日中に女の死人がでたらそれが犯人だから。」


 箱を懐にしまい、少女の衣服を元に戻す。
 そして立ち上がると入口に向かう。ここから逃げるためだ。それを察したルードリィッヒは僕に声を掛け足を止めさせると、腕に填まっている腕輪を渡してきた。


「隠し出口まで案内します。それと、腕輪ソレを売ってしばらくの旅費としてください。」
「ありがたく戴こう。ほら、僕に付いてくるんだろ。」
「あ、待って。」


  さてはて、こうして僕の異世界生活が始まる事になったのだが、王がレリックの地をあきらめ無さそうだからな。そこをどうにかしないとないとな。
 ルードリィッヒは今回の事で疑問を持ち始めてくれたようだが、下手に説得は危ないからと伝えておく。

 とりあえずは、逃亡生活かな。






感想 1

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みんなの感想(1件)

sami
2017.03.12 sami

とても面白く、楽しく読ませていただきました。もう続きは書かれないのでしょうか?

2017.03.22 SHIN


拙い文章ながら、お読みいただきありがとうございます。
こうして感想をいただき、とても嬉しく思います。
この作品は少しずつ作ってゆく予定ですので、お待ちいただけると幸いです。

解除

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