警護者キリュウ

どらんくうざ

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十八才 資格試験と失恋と

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 虫の鳴き声と空にのぼった太陽の熱射が暑くなる夏。
丁度、キリュウが生まれてから十八年目になった。
つまり十八才になった。

 彼は本日の出漁を終えて、釣った魚を市場に運んでいるところだった。
隣の同期のサナエが並んで歩いている。
彼女は矢継ぎ早に発言を続けていた。

「今回の水揚げは、ガボンとアジが主で、量はまあまあだったね」

 彼女は運び手のキリュウの顔を見ながら口元が笑っていた。
どうしても訊きたい内容があるらしく、それを我慢している様子だった。

「やっぱり警護者の資格試験は受けるの?
受けるよね」

「この年齢にまでなるのを夢にまで見てきたから、合格する自信もあるからさ。
漁師は少しお休みの事が増えちゃうけどな。
初年度は数十日の訓練で長めだったかな」

 警護者の資格を得た翌年からは、十数日。
しかし、初年度は警護者の組織の説明や武具の手入れ、心構えも教練などを行う必要があり長めに設定されていた。

「試験は、集まった十数名ほどの人たちの組で挑戦するらしい」

 キリュウは、今までに見知った知識をサナエに伝えた。
もっとも彼が今のところ知っている知識は公開されても問題の無い部分だけだった。

 サナエと並んで歩いて市場についた。
買い手は市場で買った商品を調理して近場の都会まで流通させていた。
そのため、市場には調理場が併設されている。

 市場にはたくさんといっても、数名の買い手しかいなかった。
諸々の食材を一か所の市場で取り扱っていた。
市場に集まった者同士は、元から互いに契約を結んでおり安定供給をもたらしていた。
その集団の中で高い値をつけた人が購入していた。
稀に予想外の豊作だったときは公開の競りもおこなわれていた。

「おおコールレェン漁業会ポロポロ支部のお二人さんか」

 漁業会と売買を取り結んでいる料亭と仕入れ担当の人が声を二人に声をかけた。
この三人はここ一、二年で顔馴染みになっていた。

「本日の水揚げした魚介類です」

 サナエが淡々といった調子があうように喋る。
そこにキリュウは釣れた魚介類を床に置いた。
三人は魚の周りに集まる。それから細かくチェックを始めた。
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