付き合っているのに喧嘩ばかり。俺から別れを言わなければならないとさよならを告げたが実は想い合ってた話。

雨宮里玖

文字の大きさ
11 / 17

11.春希

 深夜0時を過ぎた。もう大河を待つ必要もない。
 35ヶ月も二人暮らしをしていたせいで一人暮らしにまだ慣れないが、きっといつかは慣れるだろう。

 今日は久しぶりに職場で大河と話をしてしまった。もうあんなことはしないようにしよう。
 大河の隣にいると、大河に触れたくなる。
 もう少しで指輪のない大河の左手に、右手を伸ばしてしまいそうだった。


 結局いつものようにぐるぐると大河のことばかり考えて、大河からもらったシルバーの指輪を眺めていると、ピンポーンとドアのインターフォンが鳴る。
 オートロックじゃない。いきなり玄関のインターフォンが鳴った。

 とりあえず無くさないよう指輪を右手薬指にはめ、こんな深夜になんだと不審に思いながらもドアを開ける。

「あー、すいません、また大河連れてきましたぁ」

 いつか酔い潰れた大河を連れてきた男。確か春希と大河が呼んでいた。春希は肩に、飲み過ぎてフラフラになった大河を抱えている。

 大河の家はもうここじゃない。
 そう言おうと思ったが、春希がここに大河を連れてきたということは、大河の事情を知らないのかもしれないし、大河が今どこに住んでいるのかも陸斗にはわからない。

 なによりこんな状態の二人を無下に放り出すのは可哀想に思い、「ありがとうございます」と大河を部屋に運ぶのを手伝うことにした。



「あれ? 大河の部屋、なんかすっかり片付いてますね」

 大河を部屋のベッドに寝かせた後、春希は部屋が様変わりしていることに気がついたようだ。以前来た時と比べて不自然なくらいに物が減っているのだから気がついて当然だろう。


「……別れたんでしょ」

 え……。春希の突然の呟きに驚き、咄嗟の答えが出なかった。

「大河と、別れたんですよね?」

 なんなんだ、この男は。一体何をどこまで大河から聞いて知っているのだろう。

「俺の方が、大河との付き合いは長いんです。俺、大学から大河と一緒ですから」

 なんのマウントだよ。急に……。

「大河は大学時代、色々あったのに結局誰とも付き合わなかったんですよ」
「へぇ。そうなんだ」
「俺もずっとただの友達扱いでした。なのに就職した途端に……」

 春希は悔しそうに唇を噛み締めた。

「俺はずっと、大河が好きで……。大河も恋愛対象が男だって知った時から運命みたいに思ってて……でも大河は俺に見向きもしない。恋愛に興味がないのかと思ってたのに、就職してからは陸斗、陸斗って大河の話はいつも俺以外の男の話ばっかりで……」

 春希は「あんたがその陸斗なんだろ」とキッと陸斗を睨みつけた。

「俺は三年待ちました。それでこの前、大河から『恋人と上手くいってない』ってこぼされた時、どれだけ俺が嬉しかったか。早く壊れろ、さっさと別れろって思いました」

 春希は学生の頃から大河が好きで、大河が陸斗と付き合うことになってもまだ大河が好きで、今でもずっと想っているのか。

「それで、大河と別れたんですよね?!」

 春希はすごく必死だ。陸斗にそれを認めて欲しいと切に訴えてくる。

 それは間違いじゃない。
 陸斗と大河はもう恋人同士じゃない。

「……別れた。別れたよ。大河はもう俺のことは興味がないみたいだから」

 ずっと思ってはいたけど、自分で事実を口に出してみると、また胸が苦しくなる。

「ですよね?! じゃあ、じゃあなんで大河は……」

 春希は言葉を詰まらせた。

「……なんでもないです。お邪魔しました」
「おいっ……」

 春希は陸斗の引き止めも無視して言いたいことだけをぶつけて出て行った。
感想 18

あなたにおすすめの小説

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

恋人がキスをしてくれなくなった話

神代天音
BL
大学1年の頃から付き合っていた恋人が、ある日キスしてくれなくなった。それまでは普通にしてくれていた。そして、性生活のぎこちなさが影響して、日常生活もなんだかぎくしゃく。理由は怖くて尋ねられない。いい加減耐えかねて、別れ話を持ちかけてみると……? 〈注意〉神代の完全なる趣味で「身体改造(筋肉ではない)」「スプリットタン」が出てきます。自己責任でお読みください。

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

好きなタイプを話したら、幼なじみが寄せにきた。

さんから
BL
無愛想美形×世話焼き平凡 幼なじみに好きバレしたくない一心で、真逆の好きなタイプを言ったら……!?

別れたはずの元彼に口説かれています

水無月にいち
BL
 高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。  なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。  キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。  だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?  「やっぱりアレがだめだった?」    アレってなに?  別れてから始まる二人の物語。

不倫の片棒を担がせるなんてあり得ないだろ

雨宮里玖
BL
イケメン常務×平凡リーマン 《あらすじ》 恋人の日夏と福岡で仲睦まじく過ごしていた空木。日夏が東京本社に戻ることになり「一緒に東京で暮らそう」という誘いを望んでいたのに、日夏から「お前とはもう会わない。俺には東京に妻子がいる」とまさかの言葉。自分の存在が恋人ではなくただの期間限定の不倫相手だったとわかり、空木は激怒する——。 秋元秀一郎(30)商社常務。 空木(26)看護師 日夏(30)商社係長。