1 / 31
全部忘れてやる
1.
しおりを挟む
「あんな奴、好きなわけないじゃん」
「うっわ、マジで?! お前、酷いな」
「あいつ俺が『好きだ』って言ったら真に受けてやんの。今でも自分は俺の恋人だって信じてんじゃねぇかな」
「ウケるな、あいつ身の程知らずだな。あんな平凡な奴がヒカルと付き合えるわけないのにな!」
放課後の教室。ヒカルと奏多の二人の会話を、弦は偶然聞いてしまった。
——やっぱりそうだったんだ!
ヒカルが、弦に告白してくるなんてことあるわけないと思っていた。
ヒカルは全てを持っているような男だ。トップアイドル並の完璧なルックス。財閥の家の次男だが、勉強も運動も得意、度胸、リーダーシップ、決断力に長けており、長男よりも後継ぎとして期待されているらしい。
そのため、ものすごくモテる。恋愛の意味だけでなく、ヒカルのカリスマ性に惹かれてしもべのような奴らまでいる。
さっきヒカルと話していた奏多がヒカルのしもべのうちのひとりだ。ヒカルと同級生なのだが、いつもヒカルに媚びへつらってヒカルの隣にいる。
弦だってバカじゃない。ヒカルに突然呼び出されて、「お前が好きだ。俺と付き合って欲しい」と言われて最初はもちろん疑った。
「冗談だろ」と言ったら「本気だよ」とヒカルに返された。
「わかった! 罰ゲームで誰でもいいから告れって言われたんだな!」と言ったら「俺がそんなくだらないゲームをするような奴に見えるのか」と睨まれた。
「偽物の恋人が欲しいんだろ!」と言ったら「だったら普通女を選ぶだろ。男のお前じゃ、俺と付き合ってることは隠さなきゃ」と鼻で笑われた。
そこまで言われてしまうと、弦にはヒカルの本心がまるでわからない。
ヒカルが本気で弦を好きになるなんて絶対にありえないことだ。
なのに、どうして——。
「弦。俺と付き合ってくれ。俺の恋人になって欲しい」
黒曜石のようにキレイな瞳で見つめられ、この瞳の奥には絶対に嘘が隠されているはずだと思っているのに、抗えなかった。
「こんな俺でいいのなら……」
ヒカルは人間としての格が違いすぎて好きになることすら許されないと思っていた。
それなのにまさかのヒカルの告白に身体が震えてる。
「弦。いいの? 俺のものになってくれるの?」
弦は頷く。ヒカルに魔法をかけられたみたいに。
「弦、お前に触れてもいい?」
ヒカルは弦を抱き締めてきた。その抱擁が普段、全てのものに対して冷ややかな態度のヒカルとは対照的に、温かく人間味にあふれており、弦にとってそのギャップが至高でしかない。
——ヤバい。気持ち良すぎる。
ヒカルの鼓動を感じる。冷徹な人間にも、ちゃんと血は通っているんだなと当たり前のことを思った。
「今日から弦は俺の恋人ね」
耳元で囁かれた。
「だから他の誰かに告白されても断ってよ。弦は俺のものだから」
「うん……」
断るに決まってるじゃないかと弦は頷く。弦は誰かに告白されたことも今日が初めてだし、断るもなにも、そのような事態にはならないだろうと思った。
「いい子だな」
ヒカルは弦の頭を撫でてきた。
「俺たちの関係は内緒にしよう。男同士だなんてお前も絶対にバレたくないだろ? でも俺がお前を呼び出しただけで、騒ぐ奴らがいるんだよな」
学校における、ヒカルの一挙手一投足は生徒たちによって監視されていると言っても過言ではない。それだけヒカルの注目度は高い。
今、二人は理科準備室にいる。だが既に廊下から人の話し声が聞こえてくる。きっとヒカルがなぜ弦を呼び出して二人きりになったのかを噂しているのだろう。
「廊下にいる奴らは、まさか俺が弦と抱き合ってるなんて思ってもないだろうな」
おい、ヒカル! 赤裸々にそういうことを言葉にしないで欲しい。
「ヒカル……」
ヒカルと離れる前に確認しておきたい。
「なに?」
「俺、ヒカルのこと、信じてもいいの?」
少しだけ身体を離し、嘘かどうかを見透かしたくてヒカルの目をじっとみる。
「いいよ」
ヒカルは微笑んだ。
「お前のことは俺が守るから」
ヒカルにそう言われて、不意に弦を襲う既視感。
この台詞——。
たしかに聞き覚えがあった。だが、いつのことだったのか思い出せない。
「うっわ、マジで?! お前、酷いな」
「あいつ俺が『好きだ』って言ったら真に受けてやんの。今でも自分は俺の恋人だって信じてんじゃねぇかな」
「ウケるな、あいつ身の程知らずだな。あんな平凡な奴がヒカルと付き合えるわけないのにな!」
放課後の教室。ヒカルと奏多の二人の会話を、弦は偶然聞いてしまった。
——やっぱりそうだったんだ!
ヒカルが、弦に告白してくるなんてことあるわけないと思っていた。
ヒカルは全てを持っているような男だ。トップアイドル並の完璧なルックス。財閥の家の次男だが、勉強も運動も得意、度胸、リーダーシップ、決断力に長けており、長男よりも後継ぎとして期待されているらしい。
そのため、ものすごくモテる。恋愛の意味だけでなく、ヒカルのカリスマ性に惹かれてしもべのような奴らまでいる。
さっきヒカルと話していた奏多がヒカルのしもべのうちのひとりだ。ヒカルと同級生なのだが、いつもヒカルに媚びへつらってヒカルの隣にいる。
弦だってバカじゃない。ヒカルに突然呼び出されて、「お前が好きだ。俺と付き合って欲しい」と言われて最初はもちろん疑った。
「冗談だろ」と言ったら「本気だよ」とヒカルに返された。
「わかった! 罰ゲームで誰でもいいから告れって言われたんだな!」と言ったら「俺がそんなくだらないゲームをするような奴に見えるのか」と睨まれた。
「偽物の恋人が欲しいんだろ!」と言ったら「だったら普通女を選ぶだろ。男のお前じゃ、俺と付き合ってることは隠さなきゃ」と鼻で笑われた。
そこまで言われてしまうと、弦にはヒカルの本心がまるでわからない。
ヒカルが本気で弦を好きになるなんて絶対にありえないことだ。
なのに、どうして——。
「弦。俺と付き合ってくれ。俺の恋人になって欲しい」
黒曜石のようにキレイな瞳で見つめられ、この瞳の奥には絶対に嘘が隠されているはずだと思っているのに、抗えなかった。
「こんな俺でいいのなら……」
ヒカルは人間としての格が違いすぎて好きになることすら許されないと思っていた。
それなのにまさかのヒカルの告白に身体が震えてる。
「弦。いいの? 俺のものになってくれるの?」
弦は頷く。ヒカルに魔法をかけられたみたいに。
「弦、お前に触れてもいい?」
ヒカルは弦を抱き締めてきた。その抱擁が普段、全てのものに対して冷ややかな態度のヒカルとは対照的に、温かく人間味にあふれており、弦にとってそのギャップが至高でしかない。
——ヤバい。気持ち良すぎる。
ヒカルの鼓動を感じる。冷徹な人間にも、ちゃんと血は通っているんだなと当たり前のことを思った。
「今日から弦は俺の恋人ね」
耳元で囁かれた。
「だから他の誰かに告白されても断ってよ。弦は俺のものだから」
「うん……」
断るに決まってるじゃないかと弦は頷く。弦は誰かに告白されたことも今日が初めてだし、断るもなにも、そのような事態にはならないだろうと思った。
「いい子だな」
ヒカルは弦の頭を撫でてきた。
「俺たちの関係は内緒にしよう。男同士だなんてお前も絶対にバレたくないだろ? でも俺がお前を呼び出しただけで、騒ぐ奴らがいるんだよな」
学校における、ヒカルの一挙手一投足は生徒たちによって監視されていると言っても過言ではない。それだけヒカルの注目度は高い。
今、二人は理科準備室にいる。だが既に廊下から人の話し声が聞こえてくる。きっとヒカルがなぜ弦を呼び出して二人きりになったのかを噂しているのだろう。
「廊下にいる奴らは、まさか俺が弦と抱き合ってるなんて思ってもないだろうな」
おい、ヒカル! 赤裸々にそういうことを言葉にしないで欲しい。
「ヒカル……」
ヒカルと離れる前に確認しておきたい。
「なに?」
「俺、ヒカルのこと、信じてもいいの?」
少しだけ身体を離し、嘘かどうかを見透かしたくてヒカルの目をじっとみる。
「いいよ」
ヒカルは微笑んだ。
「お前のことは俺が守るから」
ヒカルにそう言われて、不意に弦を襲う既視感。
この台詞——。
たしかに聞き覚えがあった。だが、いつのことだったのか思い出せない。
522
あなたにおすすめの小説
【完結】嫁がされたと思ったら放置されたので、好きに暮らします。だから今さら構わないでください、辺境伯さま
中洲める
BL
錬金術をこよなく愛する転生者アッシュ・クロイツ。
両親の死をきっかけにクロイツ男爵領を乗っ取った伯父は、正統な後継者の僕を邪魔に思い取引相手の辺境伯へ婚約者として押し付けた。
故郷を追い出された僕が向かった先辺境グラフィカ領は、なんと薬草の楽園!!!
様々な種類の薬草が植えられた広い畑に、たくさんの未知の素材!
僕の錬金術師スイッチが入りテンションMAX!
ワクワクした気持ちで屋敷に向かうと初対面を果たした婚約者、辺境伯オリバーは、「忙しいから君に構ってる暇はない。好きにしろ」と、顔も上げずに冷たく言い放つ。
うむ、好きにしていいなら好きにさせて貰おうじゃないか!
僕は屋敷を飛び出し、素材豊富なこの土地で大好きな錬金術の腕を思い切り奮う。
そうしてニ年後。
領地でいい薬を作ると評判の錬金術師となった僕と辺境伯オリバーは再び対面する。
え? 辺境伯様、僕に惚れたの? 今更でしょ。
関係ここからやり直し?できる?
Rには*ついてます。
後半に色々あるので注意事項がある時は前書きに入れておきます。
ムーンライトにも同時投稿中
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた
無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
妹の代わりにシロクマ獣人と真っ白婚!?
虎ノ威きよひ
BL
結婚相手が想像以上にシロクマでした!!
小国の王子ルカは、妹の代わりに政略結婚することになってしまった。
結婚の相手は、軍事大国の皇子のクマ獣人!
どんな相手だろうと必ず良い関係を築き、諸外国に狙われやすい祖国を守ってもらう。
強い決意を胸に国を渡ったルカだったが、城の前にデンッと居たのは巨大なシロクマだった。
シロクマ獣人とは聞いていたが、初対面で獣化してるなんてことがあるのか!
さすがに怯んでしまったルカに対してシロクマは紳士的な態度で、
「結婚相手のグンナルだ」
と名乗る。
人の姿でいることが少ないグンナルに混乱するルカだったが、どうやらグンナルにも事情があるようで……。
諸事情で頻繁にシロクマになってしまう寡黙な美形攻め×天真爛漫でとにかく明るい受け
2人がドタバタしながら、白い結婚から抜け出す物語
※人の姿になったりシロクマ姿になったりする、変身タイプの獣人です。
※Rシーンの攻めは人間です。
※挿入無し→⭐︎ 挿入有り→★
※初日4話更新、以降は2話更新
【書籍化決定】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました!
応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます!
発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる