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1.叶わぬ想い
ああ、俺はどうしてあんな奴を好きになったんだろう……。
柊介には好きな人がいる。その相手が男というだけでも厄介なのに、やたらとモテる男で、しかも彼女を取っ替え引っ換えしているようなとんでもない奴だ。
そいつの名前は松崎紘星。大学二年の時にホストをして稼いだ金を元手に起業して、現在webサイトを運営しており、実質そこの代表取締役だ。ビジネス系のテレビ番組に出演したこともある、新進気鋭の大学生起業家という顔を持つ異端児。
そんな男が何故か柊介が大学入学をしたばかりの時から、ずっと付きまとってくるのだ。
「柊介。お前、午後も授業あるだろ? 一緒に昼メシ食おうぜ」
講義の後、隣に座っていた絋星にいつも通りに誘われる。
「いいよ」
柊介もいつものように快諾する。ふたりは友達だ。時々人から「お前よく松崎と一緒にいられるよな」と驚嘆されるが、柊介の大学生活には絋星がいるのが当たり前になっており、今ではなんら違和感もない。
絋星とふたり、くだらない話をしながら学食へ向かっていると、正面からにこやかに手を振って、美人が友人と連れ立ってやってきた。確か絋星のひとつ前の元カノの珠莉だ。
「絋星、おっはよー!」
「おー、珠莉。おはよ」
一体どんな別れ方をしたらこんなに元カノと円満に友達に戻れるんだろう。珠莉は絋星と別れた後も笑顔で絋星に接してくる。絋星も絋星で、普通。ふたりの間に険悪な空気は一切ない。
「ね、絋星。また絋星の家に遊びに行きたいんだけど。玲奈たちとか呼んでみんなで家パーティーやらない?」
すごいな。元カレの家でパーティーするのか。確かに絋星はタワーマンションに住んでいるらしいので、夜景が綺麗なのかもしれないが。
「あー。いつ?」
「今度の土曜の夜」
「いいぜ。来いよ」
即答でオッケーかよ。いくら元カノとはいえ寛大すぎないか?
「やったーっ! ありがと!」
珠莉は絋星の腕に絡みつく。それを見てついイラっとしてしまうが、まぁ、元恋人のふたりだし、距離は近くて当然か。
「ちなみに24日と25日は絋星は空いてないよね……?」
上目遣いで珠莉が絋星を見つめる。
「空いてない」
これも即答。だよな。だって絋星には今カノがいるから。
はぁ、と溜め息がでる。俺も女だったら絋星の彼女になれてたのかな。
それとも女だったら絋星はこんな俺と気楽につるんだりしなかったのかな。
好きなのに、好きと伝えることも許されない。
こんなに近くにいるのに。
手を伸ばせばすぐに届く距離なのに。
絋星の隣で自分の想いを偽る日々にはもう慣れた。
そう思っていたのに、時々こうやって醜い嫉妬心が頭をもたげてくる——。
絋星と一緒にいると、人間としての格差を感じる。
普通の飲み会でも絋星の周りはいつも人が集まる。話が上手いし、質問力もある。
一緒に街に買い物に行けば、その突出した見た目の良さで絋星は逆ナンされる。服のセンスもスタイルもいいから雑誌のスナップに載らないかと声をかけられる。そして絋星はそれらを全て断るのだ。柊介からしたら羨ましい話なのに。
テレビに出た時なんか、放送された直後から絋星のスマホが鳴り止まない。それなのに絋星は電源を切って、「ウザくてごめん」とその時一緒にいた柊介に謝ってきた。もっと天狗になれよと思った。
そして彼女が途切れない。顔、金、地位みんな持ってる。モテて当然だと思う。
そんな奴といつも一緒にいる柊介は周りから、友人として釣り合わないと評価を受けることもある。でも声をかけてくるのは毎回、絋星の方だ。
会社代表だし、一見クールそうに見えるのだが、普通の大学生として一緒にバカもやってくれる。
テストを乗り切るノウハウも全部教えてくれて大学の成績が良いのは絋星がいてくれたからに違いない。
集団で遊ぶ時もいつも柊介を気にかけてくれて、輪の中心にいたくせに、そこを見事な手腕で抜け出して、柊介をひとりにしないように、楽しませるようにと柊介の隣に来て笑わせてくれる。
皆の中心にいるような絋星が柊介のことを一目置いているからか、周りの奴らも柊介を仲間に引き入れてくれる。どんな時も絋星がその場にいてくれるとすごく安心する。とても心強い。
女関係がだらしないのは絋星の悪いところだ。絋星にとって彼女なんてアクセサリーの一つかのような扱い。
絋星の話を聞いている限りだが、絋星はまだ本気の恋はしていないと思う。仕事と大学生活の両立も相まって、恋愛にはあまり興味も割く時間もどちらもなさそうだ。
なんで絋星は俺のそばにいていつも助けてくれるんだろう。
柊介に返せるものなどないのに絋星はそんなもの要らないと言わんばかりの態度。ギブアンドテイクの友達じゃない。ギブギブギブ、絋星から与えられてばかりだ。
いっそ就活も上手くいかなかったら絋星の会社で雇ってもらおうか。そんな自虐と本音が半分半分。
柊介には好きな人がいる。その相手が男というだけでも厄介なのに、やたらとモテる男で、しかも彼女を取っ替え引っ換えしているようなとんでもない奴だ。
そいつの名前は松崎紘星。大学二年の時にホストをして稼いだ金を元手に起業して、現在webサイトを運営しており、実質そこの代表取締役だ。ビジネス系のテレビ番組に出演したこともある、新進気鋭の大学生起業家という顔を持つ異端児。
そんな男が何故か柊介が大学入学をしたばかりの時から、ずっと付きまとってくるのだ。
「柊介。お前、午後も授業あるだろ? 一緒に昼メシ食おうぜ」
講義の後、隣に座っていた絋星にいつも通りに誘われる。
「いいよ」
柊介もいつものように快諾する。ふたりは友達だ。時々人から「お前よく松崎と一緒にいられるよな」と驚嘆されるが、柊介の大学生活には絋星がいるのが当たり前になっており、今ではなんら違和感もない。
絋星とふたり、くだらない話をしながら学食へ向かっていると、正面からにこやかに手を振って、美人が友人と連れ立ってやってきた。確か絋星のひとつ前の元カノの珠莉だ。
「絋星、おっはよー!」
「おー、珠莉。おはよ」
一体どんな別れ方をしたらこんなに元カノと円満に友達に戻れるんだろう。珠莉は絋星と別れた後も笑顔で絋星に接してくる。絋星も絋星で、普通。ふたりの間に険悪な空気は一切ない。
「ね、絋星。また絋星の家に遊びに行きたいんだけど。玲奈たちとか呼んでみんなで家パーティーやらない?」
すごいな。元カレの家でパーティーするのか。確かに絋星はタワーマンションに住んでいるらしいので、夜景が綺麗なのかもしれないが。
「あー。いつ?」
「今度の土曜の夜」
「いいぜ。来いよ」
即答でオッケーかよ。いくら元カノとはいえ寛大すぎないか?
「やったーっ! ありがと!」
珠莉は絋星の腕に絡みつく。それを見てついイラっとしてしまうが、まぁ、元恋人のふたりだし、距離は近くて当然か。
「ちなみに24日と25日は絋星は空いてないよね……?」
上目遣いで珠莉が絋星を見つめる。
「空いてない」
これも即答。だよな。だって絋星には今カノがいるから。
はぁ、と溜め息がでる。俺も女だったら絋星の彼女になれてたのかな。
それとも女だったら絋星はこんな俺と気楽につるんだりしなかったのかな。
好きなのに、好きと伝えることも許されない。
こんなに近くにいるのに。
手を伸ばせばすぐに届く距離なのに。
絋星の隣で自分の想いを偽る日々にはもう慣れた。
そう思っていたのに、時々こうやって醜い嫉妬心が頭をもたげてくる——。
絋星と一緒にいると、人間としての格差を感じる。
普通の飲み会でも絋星の周りはいつも人が集まる。話が上手いし、質問力もある。
一緒に街に買い物に行けば、その突出した見た目の良さで絋星は逆ナンされる。服のセンスもスタイルもいいから雑誌のスナップに載らないかと声をかけられる。そして絋星はそれらを全て断るのだ。柊介からしたら羨ましい話なのに。
テレビに出た時なんか、放送された直後から絋星のスマホが鳴り止まない。それなのに絋星は電源を切って、「ウザくてごめん」とその時一緒にいた柊介に謝ってきた。もっと天狗になれよと思った。
そして彼女が途切れない。顔、金、地位みんな持ってる。モテて当然だと思う。
そんな奴といつも一緒にいる柊介は周りから、友人として釣り合わないと評価を受けることもある。でも声をかけてくるのは毎回、絋星の方だ。
会社代表だし、一見クールそうに見えるのだが、普通の大学生として一緒にバカもやってくれる。
テストを乗り切るノウハウも全部教えてくれて大学の成績が良いのは絋星がいてくれたからに違いない。
集団で遊ぶ時もいつも柊介を気にかけてくれて、輪の中心にいたくせに、そこを見事な手腕で抜け出して、柊介をひとりにしないように、楽しませるようにと柊介の隣に来て笑わせてくれる。
皆の中心にいるような絋星が柊介のことを一目置いているからか、周りの奴らも柊介を仲間に引き入れてくれる。どんな時も絋星がその場にいてくれるとすごく安心する。とても心強い。
女関係がだらしないのは絋星の悪いところだ。絋星にとって彼女なんてアクセサリーの一つかのような扱い。
絋星の話を聞いている限りだが、絋星はまだ本気の恋はしていないと思う。仕事と大学生活の両立も相まって、恋愛にはあまり興味も割く時間もどちらもなさそうだ。
なんで絋星は俺のそばにいていつも助けてくれるんだろう。
柊介に返せるものなどないのに絋星はそんなもの要らないと言わんばかりの態度。ギブアンドテイクの友達じゃない。ギブギブギブ、絋星から与えられてばかりだ。
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