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2.嘘をつく
「なぁ、柊介はクリスマスどうすんの?」
学食での雑談。これだから12月は嫌いだ。毎年恒例で、この質問を絋星から浴びせられ、そのたびバイトだのなんだの言い訳みたいに適当に受け流してきた。
意地の悪い絋星は、柊介にデートの予定がないことを知るとニヤニヤと嬉しそうな顔をする。それが毎年腹立たしい。「予定がないなら、俺と一緒にクリスマスを過ごさないか?」なんて甘い言葉は返ってきやしない。
いつも「へー、今年もぼっちなんだw」と柊介を見下すだけ。
柊介は今まで彼女なんていたこともない。そもそも昔から女に興味はなく今ではすっかり絋星に惚れ込んでいる。……と、本人には言えるわけがないのだが。
「うっせぇな、どうでもいいだろ?」
ほっとけよ。誰だよクリスマスは恋人と過ごすとか決めた奴!
「バイト? それとも休み?」
絋星はしつこい。
「クリスマスだぜ? 彼女とデートに決まってんじゃん」
もちろん冗談だ。柊介に彼女はいない。
「……え?」
急に絋星が真顔になった。
「ちょっと待て、お前彼女いたの?」
やっべ。絋星は本気で信じてるみたいだ。
でも普段、冷静沈着な奴が珍しく動揺してる姿が面白くて、もう少しだけからかってやろうと思った。
「あー、ごめん、お前にいつ言おうかと思ってたんだけどさ、最近できたんだよね、彼女」
「嘘だろ?!」
失礼だな。普段から目が大きいなと思ってたけど、絋星は驚いてさらに目を見開いている。
「黙ってて悪かったよ」
「全然わからなかった……。俺、お前のそばにずっといたのに……」
どうした絋星。友達に裏切られたみたいでショックなのかな……。
「別にずっと黙ってたわけじゃない。本当に最近の話なんだ」
嘘に嘘を重ねていく。絋星が本気で信じるもんだから、本当のことを言い出しにくくなってしまった。
こうなったら、嘘彼女がいるように振る舞って、年明けにでも嘘彼女に振られたことにすればいいんだ。
よし、そうしよう。モテない男の小さい嘘くらい許してくれ。絋星、お前はいつだって入れ食い状態でモッテモテなんだから。
「いつどこでどうやって知り合って何で付き合うことになったんだ? 告白は彼女から? お前は人がいいから嫌でもOK出したのか?」
「おい、待てよ、そんなにまとめて質問するな」
矢継ぎ早の質問攻めは困る。だって全ては嘘だから。
「それともまさか、お前から告ったのか?!」
絋星がいつもの雰囲気とまるで違う。まるで尋問するかのようにすごい勢いでグイグイくる。
「お前、そのコに本気なの? それとも遊び?」
「遊びな訳ないだろ」
遊びで付き合って彼女を取っ替え引っ替えするのは絋星、お前くらいだよ!
「じゃあマジなのか……。マジでお前に好きな人が出来て、その人と付き合えることになって、二人でクリスマスを過ごすことになって……」
絋星はなぜか泣きそうな顔をしている。なんなんだよ、こいつ……。
「柊介。彼女とチューした?」
「はぁっ?!」
やめてほしい。そういう下世話な質問!
嘘彼女だから、当然キスなんてしてる訳ないけど、考えただけで赤面してしまう。
「なんだよ急に耳まで真っ赤じゃん……。もしかしてファーストキス? だよな? 俺の知る限りお前に彼女はいなかったし、今まで誰とも付き合ったことがないって言ってたもんな?」
「うるさいな!」
やめろよ。これ以上話を広げるな!
「嘘だろ……。マジでキスしたんだ……。ちょっと待て。俺、現実が受け入れられない……」
失礼な奴だ。柊介だって二十一歳の大学生だ。平凡でもそのくらい現実にあり得る話だろ。
まぁ、柊介の現実に彼女はいない。見栄っ張りの嘘なのだが。
「付き合うことになるくらいの好きな人がいたなら俺に話してくれよ。なんで黙ってた?」
「それは……」
ヤバいぞ言い訳なんてノープランだ。さっきからの質問の嵐にだんだん苦しくなってきた。いっそ嘘だと、ここでネタバレするか——。
「え?! 何その話! 私も聞きたい! 柊介君に彼女できたの?!」
おいおい! 突然の乱入者が現れた。絋星の今カノの凛だ。凛は遠慮なしに話に加わろうと絋星の隣の席に座った。
「う、うん……まぁ……」
あー。もうあとに引けないぞ。話が大きくなってきた。
「キャーまじで? どんな人が聞いていい?」
聞くなよ! 今すぐあっちいけ! とは言えずに黙る。
「ね、写真とかないの?」
うっぜぇと思うが、身から出た錆だ。こうなったら腹を括るしかない。
「ない。SNSで知り合って、試しに会ってみたら意気投合して急に付き合うことになったんだ。俺にはもったいないくらいの可愛い子。だからどうせすぐに振られるよ」
口から出まかせで、嘘彼女を作り上げた。この設定を覚えておかなくちゃ。嘘をつくのも楽じゃない。
「おめでとう。よかったね、柊介君! いつかステキな彼女さん、私にも紹介してね! 柊介君の彼女さんだったら私友達になりたいな」
凛は嬉しそうだ。
だが、
絋星は違った。
「凛。俺たち別れよう」
疲れ切ったような低い声で絋星は突然凛に告げた。
当然凛は「えっ? えっ?」と理解が追いつかない様子だ。
「柊介ごめん。俺、ちょっと体調が悪いみたいでさ。今日は帰る。午後の講義は全部休む」
絋星は確かに具合が悪そうだ。引き止めることも出来ずに「わかった」と力なく返すしかなかった。
学食での雑談。これだから12月は嫌いだ。毎年恒例で、この質問を絋星から浴びせられ、そのたびバイトだのなんだの言い訳みたいに適当に受け流してきた。
意地の悪い絋星は、柊介にデートの予定がないことを知るとニヤニヤと嬉しそうな顔をする。それが毎年腹立たしい。「予定がないなら、俺と一緒にクリスマスを過ごさないか?」なんて甘い言葉は返ってきやしない。
いつも「へー、今年もぼっちなんだw」と柊介を見下すだけ。
柊介は今まで彼女なんていたこともない。そもそも昔から女に興味はなく今ではすっかり絋星に惚れ込んでいる。……と、本人には言えるわけがないのだが。
「うっせぇな、どうでもいいだろ?」
ほっとけよ。誰だよクリスマスは恋人と過ごすとか決めた奴!
「バイト? それとも休み?」
絋星はしつこい。
「クリスマスだぜ? 彼女とデートに決まってんじゃん」
もちろん冗談だ。柊介に彼女はいない。
「……え?」
急に絋星が真顔になった。
「ちょっと待て、お前彼女いたの?」
やっべ。絋星は本気で信じてるみたいだ。
でも普段、冷静沈着な奴が珍しく動揺してる姿が面白くて、もう少しだけからかってやろうと思った。
「あー、ごめん、お前にいつ言おうかと思ってたんだけどさ、最近できたんだよね、彼女」
「嘘だろ?!」
失礼だな。普段から目が大きいなと思ってたけど、絋星は驚いてさらに目を見開いている。
「黙ってて悪かったよ」
「全然わからなかった……。俺、お前のそばにずっといたのに……」
どうした絋星。友達に裏切られたみたいでショックなのかな……。
「別にずっと黙ってたわけじゃない。本当に最近の話なんだ」
嘘に嘘を重ねていく。絋星が本気で信じるもんだから、本当のことを言い出しにくくなってしまった。
こうなったら、嘘彼女がいるように振る舞って、年明けにでも嘘彼女に振られたことにすればいいんだ。
よし、そうしよう。モテない男の小さい嘘くらい許してくれ。絋星、お前はいつだって入れ食い状態でモッテモテなんだから。
「いつどこでどうやって知り合って何で付き合うことになったんだ? 告白は彼女から? お前は人がいいから嫌でもOK出したのか?」
「おい、待てよ、そんなにまとめて質問するな」
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「それともまさか、お前から告ったのか?!」
絋星がいつもの雰囲気とまるで違う。まるで尋問するかのようにすごい勢いでグイグイくる。
「お前、そのコに本気なの? それとも遊び?」
「遊びな訳ないだろ」
遊びで付き合って彼女を取っ替え引っ替えするのは絋星、お前くらいだよ!
「じゃあマジなのか……。マジでお前に好きな人が出来て、その人と付き合えることになって、二人でクリスマスを過ごすことになって……」
絋星はなぜか泣きそうな顔をしている。なんなんだよ、こいつ……。
「柊介。彼女とチューした?」
「はぁっ?!」
やめてほしい。そういう下世話な質問!
嘘彼女だから、当然キスなんてしてる訳ないけど、考えただけで赤面してしまう。
「なんだよ急に耳まで真っ赤じゃん……。もしかしてファーストキス? だよな? 俺の知る限りお前に彼女はいなかったし、今まで誰とも付き合ったことがないって言ってたもんな?」
「うるさいな!」
やめろよ。これ以上話を広げるな!
「嘘だろ……。マジでキスしたんだ……。ちょっと待て。俺、現実が受け入れられない……」
失礼な奴だ。柊介だって二十一歳の大学生だ。平凡でもそのくらい現実にあり得る話だろ。
まぁ、柊介の現実に彼女はいない。見栄っ張りの嘘なのだが。
「付き合うことになるくらいの好きな人がいたなら俺に話してくれよ。なんで黙ってた?」
「それは……」
ヤバいぞ言い訳なんてノープランだ。さっきからの質問の嵐にだんだん苦しくなってきた。いっそ嘘だと、ここでネタバレするか——。
「え?! 何その話! 私も聞きたい! 柊介君に彼女できたの?!」
おいおい! 突然の乱入者が現れた。絋星の今カノの凛だ。凛は遠慮なしに話に加わろうと絋星の隣の席に座った。
「う、うん……まぁ……」
あー。もうあとに引けないぞ。話が大きくなってきた。
「キャーまじで? どんな人が聞いていい?」
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「ね、写真とかないの?」
うっぜぇと思うが、身から出た錆だ。こうなったら腹を括るしかない。
「ない。SNSで知り合って、試しに会ってみたら意気投合して急に付き合うことになったんだ。俺にはもったいないくらいの可愛い子。だからどうせすぐに振られるよ」
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「おめでとう。よかったね、柊介君! いつかステキな彼女さん、私にも紹介してね! 柊介君の彼女さんだったら私友達になりたいな」
凛は嬉しそうだ。
だが、
絋星は違った。
「凛。俺たち別れよう」
疲れ切ったような低い声で絋星は突然凛に告げた。
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