俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖

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6.放課後の教室

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「有栖ごめんっ! 俺、カバン忘れた! 先に帰ってて!」

 有栖と下校しようとしていたのに、学校最寄りのバス停まで来て、バスに乗ろうとしたときに定期入れどころかカバンごと忘れたことに気がついて俺は慌てて学校に戻る。
 いやこれ結構恥ずかしい。
 カバンごと忘れるなんてどうかしてるよ。自分が情けなくなる。




 教室に入ろうとしたとき、これ絶対入っちゃ駄目だろの雰囲気を察して俺は躊躇した。

 だって教室には男女ふたりきり。しかもなんか深刻な雰囲気だ。
 浅宮と、瀬野せのはるか。瀬野は顔もスタイルも良くて素人ながらインスタでなかなかのフォロワーを獲得している校内でも有名な美人だ。

「どうしても駄目なの?」
「ごめん……俺好きな人いるから……」

 申し訳ないけど気になりすぎて、廊下に潜んでふたりの会話に聞き耳を立てた。
 話の内容から察するに、瀬野が浅宮に告白して、浅宮が断ったという感じだ。

「浅宮くんが好きな人って誰なの? 私その人みたいになるから。教えてほしい……」

 瀬野って案外健気なんだ。

「そんなことしなくていいし、俺の好きな人を教える気もないよ」

 たしかにそうだな。浅宮が好きなのは有栖だ。まさかここで男が好きだなんてカムアウトするわけがないだろう。

「そう……。わかった。諦めるね……。浅宮くんは好きな人とうまくいくといいね……」

 瀬野は声が震えている。泣いてるのかもしれない。

「うん……俺はいま、頑張ってるとこ。いつまでもこんな気持ちじゃいられないからさ、俺ももうすぐ告白、してみるわ」

 浅宮は有栖に告白することを決めたのか。もうすぐっていつなんだろう。

「瀬野。俺が振られたら笑ってくれよ」
「浅宮くんが振られるわけないよ」
「そうならいいけど、すげぇ自信ない。多分振られるんだ。怖くて仕方がなくて、だからずっと言えずにいる……」

 自信がないから、俺にアドバイスを求めたり、デートの練習してるんだもんな。
 でもきっと浅宮なら——。

「いいなぁ、その人。浅宮くんに想われて。あ! 浅宮くんがその人に振られたらあたしと付き合ってよっ。あたし、もう一回浅宮くんに告白するから」
「おい、さっきは『うまくいくといいね』とか言っといて急に俺が振られたあとの話をすんじゃねぇよ!」
「ごめん。冗談だよっ」

 ふたりは和やかな雰囲気だ。俺には全然縁のない高校生アオハル。


 あ! ヤバい! ふたりが教室を出ようとしてる!
 俺はいったん隣の教室に逃げ込んで、ほとぼりが冷めてから再び教室に戻った。
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