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番外編『心配性のゼイン』1
番外編『心配性のゼイン』
ゼインと気持ちを通わせてから一年が経った。今日はゼイン二十歳の誕生日で、慎ましやかにゼインの誕生日を祝うパーティーが開かれた。
慎ましやかというのは、ゼインが派手なものを望まなかったからだ。近しい者だけで祝いたいと言い、それでもさすがは王太子。大勢の人が祝いに訪れていた。
今日のゼインの誕生パーティーに、ハルは欠席ということになっている。ゼインが出席を許さなかったのだ。
そう言われてもハルは黙っていない。重い身体を引きずってでも参加してやる気持ちでいる。
「いいから寝てろって言われても、ゼインさまの晴れ姿を見ないと気が済まない」
ベッドから這い出したハルは、少しふらつく身体で着替えを済ませて、大広間に向かう。
ハルはパーティーで浮かないよう、紫色の質のいいウェストコートの上から煌びやかなコートを羽織り、見栄えだけは整えた。少しやつれた顔をしているが、それは笑顔で誤魔化そう。
やがて大広間が近づき、中から賑やかな声が聞こえてきた。
ゼインに見つかったら怒られるかもしれないと、ハルはひっそりと入り口を通り抜け、広間の端っこに人混みに紛れてみる。
男にしては背が低くてよかった。これならバレないようにここにいられそうだ。
場の中心には、もちろん主役のゼインがいる。碧色の服を着たゼインは、いつも以上に輝いて見える。
(やっぱりかっこいい……)
黒ばかりを好んでいたゼインは、最近明るい服を着るようになった。理由を尋ねたら「明るい色はハルを思い出すからだ」という意味のわからない返事をもらった。
そしてゼインが両手に抱きかかえているのは生まれたばかりの赤ん坊だ。
「今日が初めてのお披露目です。我が息子、テオドールにどうぞ祝福を」
ゼインはテオドールを横抱きにしたまま皆の近くに歩み寄る。
パーティーの参加者からはわぁ、と歓声が上がり、ひと目見たいとゼインの周りに人だかりができた。
テオドールはハルの産んだ息子だ。
そう。
ハルはひと月前に出産を終えたばかりだ。だから、ゼインはハルをパーティーには呼ばず、療養するよう命じたのだ。
でもゼインの言うことを聞かずに、この場に来てよかった。
ゼインはテオドールを抱いて、この上なく嬉しそうな顔をしている。
ふたりのときは甘えたような顔をすることもあるけれど、人前で、あんなに頬を緩ませることがあるとは。
「はい。ハルヴァードに似て、青い目をしているのです。肌の白さもハルヴァードに似たのでしょう」
人混みに紛れつつ、ゼインの背後から聞き耳を立てる。ゼインはさっきから「ハルヴァードに似た」とばかり言っている。
(目鼻立ちはゼインさまに似ているのに)
自分よりもゼインに似ていると思うのは、ハルだけなのだろうか。この話をゼインとすると、ゼインは決まって「俺ではなくハルに似てほしい」と口にするからいつまでたっても話は進まない。
「ハル! 具合は大丈夫なのかい?」
「わっ」
油断しているところに急に自分の名前を呼ばれてビクッと身体を震わせる。
隣にはゼインの双子の兄のオルフェウスがにこにこと機嫌が良さそうに立っていた。
オルフェウスは、白銀色の正装を身につけている。病気で伏せがちだったオルフェウスは、薬ですっかり元気を取り戻し、今ではゼインの補佐として経理の仕事の取りまとめをしている。
「どうしたのハル」
「オ、オルフェウスさま声が……大きいっ」
ゼインの晴れ姿だけを見て、さっさと部屋に戻ろうと思っていたのに、あまり目立ちたくない。特に名前だけは呼ばないでほしかったのに!
ゼインと気持ちを通わせてから一年が経った。今日はゼイン二十歳の誕生日で、慎ましやかにゼインの誕生日を祝うパーティーが開かれた。
慎ましやかというのは、ゼインが派手なものを望まなかったからだ。近しい者だけで祝いたいと言い、それでもさすがは王太子。大勢の人が祝いに訪れていた。
今日のゼインの誕生パーティーに、ハルは欠席ということになっている。ゼインが出席を許さなかったのだ。
そう言われてもハルは黙っていない。重い身体を引きずってでも参加してやる気持ちでいる。
「いいから寝てろって言われても、ゼインさまの晴れ姿を見ないと気が済まない」
ベッドから這い出したハルは、少しふらつく身体で着替えを済ませて、大広間に向かう。
ハルはパーティーで浮かないよう、紫色の質のいいウェストコートの上から煌びやかなコートを羽織り、見栄えだけは整えた。少しやつれた顔をしているが、それは笑顔で誤魔化そう。
やがて大広間が近づき、中から賑やかな声が聞こえてきた。
ゼインに見つかったら怒られるかもしれないと、ハルはひっそりと入り口を通り抜け、広間の端っこに人混みに紛れてみる。
男にしては背が低くてよかった。これならバレないようにここにいられそうだ。
場の中心には、もちろん主役のゼインがいる。碧色の服を着たゼインは、いつも以上に輝いて見える。
(やっぱりかっこいい……)
黒ばかりを好んでいたゼインは、最近明るい服を着るようになった。理由を尋ねたら「明るい色はハルを思い出すからだ」という意味のわからない返事をもらった。
そしてゼインが両手に抱きかかえているのは生まれたばかりの赤ん坊だ。
「今日が初めてのお披露目です。我が息子、テオドールにどうぞ祝福を」
ゼインはテオドールを横抱きにしたまま皆の近くに歩み寄る。
パーティーの参加者からはわぁ、と歓声が上がり、ひと目見たいとゼインの周りに人だかりができた。
テオドールはハルの産んだ息子だ。
そう。
ハルはひと月前に出産を終えたばかりだ。だから、ゼインはハルをパーティーには呼ばず、療養するよう命じたのだ。
でもゼインの言うことを聞かずに、この場に来てよかった。
ゼインはテオドールを抱いて、この上なく嬉しそうな顔をしている。
ふたりのときは甘えたような顔をすることもあるけれど、人前で、あんなに頬を緩ませることがあるとは。
「はい。ハルヴァードに似て、青い目をしているのです。肌の白さもハルヴァードに似たのでしょう」
人混みに紛れつつ、ゼインの背後から聞き耳を立てる。ゼインはさっきから「ハルヴァードに似た」とばかり言っている。
(目鼻立ちはゼインさまに似ているのに)
自分よりもゼインに似ていると思うのは、ハルだけなのだろうか。この話をゼインとすると、ゼインは決まって「俺ではなくハルに似てほしい」と口にするからいつまでたっても話は進まない。
「ハル! 具合は大丈夫なのかい?」
「わっ」
油断しているところに急に自分の名前を呼ばれてビクッと身体を震わせる。
隣にはゼインの双子の兄のオルフェウスがにこにこと機嫌が良さそうに立っていた。
オルフェウスは、白銀色の正装を身につけている。病気で伏せがちだったオルフェウスは、薬ですっかり元気を取り戻し、今ではゼインの補佐として経理の仕事の取りまとめをしている。
「どうしたのハル」
「オ、オルフェウスさま声が……大きいっ」
ゼインの晴れ姿だけを見て、さっさと部屋に戻ろうと思っていたのに、あまり目立ちたくない。特に名前だけは呼ばないでほしかったのに!
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