4 / 4
4.真相
しおりを挟む~桐野side~
「あ、ごめん俺の勘違いだった。君、もう行っていいよ」
桐野はさっき捕まえた男子生徒を早々に解放してやる。
当たり前だ。
だってこいつは蒼井への当て付けで連れてきただけなんだから。
蒼井のショックそうな顔。あの顔を思い出しただけで、幸せが止まらない。
今ごろ蒼井は桐野への憎悪や疑念、そして愛情で心も頭もいっぱいで苦しんでるだろう。あとでこっそり覗きにいってやろう。桐野のことで蒼井が苦悩している顔を永遠に拝んでいたい。
——俺がせっかくライブ中に愛の告白してやろうと思ったのに、逃げやがって。
そのお返しだ。もう少しだけ桐野を想って苦しんでくれよと思っている。
——毎回そうなんだ。あいつは俺から逃げられない。だから最初から付き合おうって言ってやったのに。
桐野は全部覚えている。
あいつが無類のチョコ好きなことも、二人で大空を見上げながら過ごしたあの日々も。大空の下、草原に転がって飽きるほどキスしたことも。「この景色を俺はずっと忘れないよ」って言ってたのはあいつなのに。
——でもお茶を渡されたときはびっくりしたなー。まさかあいつが思い出したのかと思ったよ。
桐野は遠い昔に、「喉渇いたのか? これ飲めよ」と戦いの最中にあいつが貴重な飲み物を分けてくれたことを思い出した。いつだってあいつは桐野の「渇き」を満たしてくれる。
「さてと」
今度はどうしようかな。もう少しだけ素っ気なくして、あいつの方から追っかけてくるように仕向けてやろうか。
それともやっぱり追いかけようか。
ああ、早くあいつを押し倒したい。十七歳になるまで出会えなかったんだから欲求不満が溜まってる。
それにしても、あいつまた前世の記憶がないんだな。俺は全部覚えてるのに。
今世では蒼井って名前なのか。今度だって俺はお前を逃がさない。
絶対に捕まえて俺のものにしてやる。待ってろよ、真田、じゃなくてマリア、じゃなくてラインハルト。じゃなくて、
アオ——。
——完。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
152
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
iku様感想ありがとうございます!
番外編はないんですけど、この話のもう一つの結末『多分前世とは関係ないふたりの追いかけっこ』はあります😅
でも、結末二つあると混乱するかなと😵💫
この作品を見つけてくださり感想までくださり、ありがとうございます。