その告白は勘違いです

雨宮里玖

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1 告白したつもりはない

1-1

 俺は今、人生最大の危機を迎えている。

「さ、三点……」

 教室の一番後ろのさらに端っこの席に座る俺の手には、バツだらけの数学の答案がある。
 七沢莉紬ななさわりつって名前の横には、でかでかと三点の記載。高一、高二と成績はとんでもなく悪かったが、高校三年生、一学期の中間テストはマジで終わった。

「おい、莉紬。百点満点で三点とかお前やばくね?」

 ニヤニヤしながら俺の答案を覗き込んでくるのは、隣の席に座る俺の友達の今村裕太いまむらゆうただ。

「見んなよ」
「見えちゃったんだよ。さすがの俺もひと桁はない」
「俺だってここまでひどいのはねぇよ」

 会話の途中、教壇に立っている数学教師が「そこのふたり、静かにしろ!」と睨みつけてきたので俺たちは黙る。テストもできないのに、これ以上授業点を引かれたら俺はやばい。
 だって俺ができないのは数学だけじゃない。主要五教科は壊滅的だし、他の科目も目も当てられない。人並みって言えるのは体育だけだ。

 成績が悪い。素行もよくない。俺は高三に進級するときに校長から直々に警告を受けている身だ。
 だから頑張らなきゃいけないのに、さらに成績は下がった。これで期末まで爆死したらマジで卒業できない。

「今回のテストで満点は学年でひとりだけだ。有馬ありま、よくやったな!」

 教師が教室の中央あたりに座っている有馬に向かって拍手をする。それに合わせてクラスのみんなも「有馬すげぇ」「また有馬くん百点」と有馬に賞賛の拍手を送っている。
 有馬は「得意分野だったんだ」とか言って謙遜しているけど、まんざらでもない顔をしている。

 何が得意分野だよ。

 有馬の成績はいっつも学年一位か二位だ。得意分野だったから百点なら、有馬は全教科全範囲が得意分野ってことかよ。

「中間が悪かったやつは期末で挽回しろよ」

 んなこと言われなくてもわかってるってことを教師が偉そうに黒板を叩きながらのたまっている。いや、そういうの要らねぇから、どうしたら楽に成績が上がるかを教えてくれよ。

「はぁ……」

 俺は溜め息をつく。
 これはなんとかしなきゃいけない。俺は高校を辞めたくない。あと一年頑張れば卒業できるところまで粘ってきたのに。 


 数学の授業が終わり、昼休みになってすぐ裕太が俺のそばにやってくる。三年間クラスが同じ裕太は、俺の危機的状況をとても理解してくれている。

「おい、莉紬。お前三年になったら勉強頑張るって言ってただろ? これ、やばいって」
「うぅ……俺だってそう思ってるよっ」

 裕太に泣き言を言いたくなる。めっちゃ頑張って勉強した結果がこれだった。

「俺、莉紬と一緒に卒業したいよぉ」
「俺だってそうだよ」

 あー! と俺は頭を抱える。二百八十八人中、二百八十八位の俺の成績はどうやったらまともになるんだ!

「周りのやつらが頭がよすぎるんだよ……」

 俺は高校受験のときに、無謀にもこの進学校に受験を挑んだ。模試でもずっとE判定だったのに、なぜか俺は見事に補欠合格を勝ち取ったのだ。

 喜び勇んで入学してから思い知る。
 周りのやつらの出来がよすぎてまったくついていけない。あっという間に落ちこぼれになり、俺より成績の悪いやつは高三に上がる前にみんな退学していった。

 つまり、今この学校でもっとも卒業に遠い男は、俺だ。

「裕太ぁ、なんとかしてくれよ」

 裕太の両肩を掴んで揺らしても、裕太は「あばばばば」とアホな声を出すだけだ。

「くっそー!」

 俺が頭を抱えているとき、ふと視界に入ってきたのはさっきのテストで百点だった有馬だ。

 有馬とは高三になって初めて同じクラスになったけど、優秀な有馬はこの学校の有名人だから高一のころからこいつの逸話は俺の耳にも入ってきていた。

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