その告白は勘違いです

雨宮里玖

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1 告白したつもりはない

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「有馬くん、この問題の解き方教えて」

 二人組の女子生徒が有馬にいそいそと声をかける。有馬が「いいよ」と答えると女子のはしゃいだ声が聞こえてきた。

 ほんとムカつくな。

 メガネ野郎の有馬は成績もいいが運動もできる。さらにはこのクラスの学級委員長で、背が高くて顔がいい。
 対して俺はバカだし真面目にはなれないから学校でもふざけてばかり。背もまだ百七十ちょっとだ。一応、髪型や見た目には気を遣っているけど女子には「弟みたい」「可愛い」と言われる始末。

 男らしくなりたいのに、俺の身長は去年五ミリしか伸びなかった。このまま止まってたまるかと、俺は牛乳を飲んでなるべく早く寝るようにしている。

 みんなはなんでもできる有馬のことを『出木杉くん』とか言うけど、俺はそうは思わない。優等生ぶった大人しいキノコみたいな髪型にクソダサいメガネ。どちらかといえば『のび太』だろ、有馬は。

「有馬ばかりモテてつまんねぇよな」

 隣にいた裕太が呟いたことに、俺も激しく同意して大きく頷く。さっすが裕太、俺と気が合うな。俺もあいつのことをクソ野郎って思ってるよ。

「でもさ、有馬って勉強教えるのうまいらしいぜ。有馬に聞くとすっげぇわかりやすいんだってさ」
「はぁー、へー、ほーん。それで?」

 俺は聞く気もないと適当な相槌を打つ。有馬を褒める言葉なんて聞きたくもないわ。

「有馬にさ、頼んでみたら?」
「は? 何をっ?」
「勉強教えてって」
「あいつにぃっ?」

 思ってもみなかったことを言われて俺は変な声が出た。
 秀才、有馬に勉強を教われば、俺のテストの点数は確実に上がるんじゃないだろうか。
 あいつは頭がいいのはもちろんだが、この学校のテスト攻略の達人だ。各教科の先生の趣味嗜好をよく知っていて、どこがテストで出るかよく当ててるらしい。傾向と対策がバッチリじゃなきゃ、毎回学年一位や二位を取るのは不可能だろう。

「いや、莉紬の気持ちもわかるよ、あいつに頭下げるなんて腹立つけどさ……」
「裕太! お前、天才か!」
「……え?」
「それだよ、なんとかしてあいつにすり寄って勉強教えてもらおう! 俺が無事に卒業するためには有馬の力が必要だ!」

 グッと拳を握りしめてウンウン頷く俺を、裕太は呆れ顔で見ている。

「莉紬はプライドねぇのかよ」
「あるよ。どんな手を使ってでも卒業してやるっていうプライドがな!」

 俺は有馬の背中を狙い澄ました視線で睨みつける。

 すぐ近くにいいやつがいたじゃないか。

 待ってろよ、有馬。俺はなんとしてでもお前を利用して成績を上げてやる。
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