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2 特別な時間
2-6
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「ありがとうございました!」
俺は保育士さんにお礼を言って、結月の手を引き保育園をあとにする。ここからス―パーまで徒歩五分。でも結月がいるからもっとかかるかな。
「にいに抱っこ!」
「ええっ……」
歩き始めたばかりなのに、いきなり言われて俺は困惑する。重いスクールバッグに保育園バッグにさらに抱っこか……きっついな。
「少しだけな」
「うん!」
俺は結月の視線に弱い。大変だけど、今日も一日保育園で頑張ったんだからと思うと無下にはできない。
「よいしょっ」
俺は大量の荷物と五歳の妹を抱える。荷物の持ち手が食い込む肩は痛いし、足腰もきついけど、結月の可愛い顔を見て元気をもらい、俺は力をふり絞る。
「にいに、今日の夕ご飯はなぁに?」
「お好み焼きにしようと思ってるんだ」
「やったぁ! ゆづ、お好み焼き、好きー!」
結月は俺の腕の中ではしゃいで暴れる。俺はそれをバランスを保って支える。
「なぁ、結月、聞いてくれよ、俺の学校の友達でさ、お好み焼きを食べたことがないってやつがいたんだ。信じられないだろ?」
「えっ? にいにと同じ年なのに?」
「そうだよ。十七年間、何食ってたんだろな。あんなおいしいもの食べたことないって異常だよ」
「もったいないね。おいしいのにね」
俺は結月と会話をしながら有馬のことを考えている。
有馬んちの夕飯ってどんななのかな。今度聞けたら聞いてみようかな。
まぁ、俺の作る夕飯よりもあきらか豪華なんだろうな。
「にいに、スーパーでお菓子買ってくれる?」
「いいよ。ひとつだけな。熱が下がって元気になったお祝いだ!」
今日、元気に保育園に行ってくれて正直助かった。俺には今日、大切な有馬との約束があったから。そのぶんの気持ちも込めてお菓子をひとつくらい買ってやってもいいと思った。
ちょっと重いけど、行けるところまでこのまま結月を抱っこしてスーパーに行こうと俺が歩いていたときだった。
俺の目の前に、さっき別れたはずの有馬が制服のまま立っている。
有馬は結月を抱っこした俺を見て何か言いたげだ。
「あ、あれ? 帰ったんじゃなかったの? 買い物?」
あまり見られたくないところを見られてしまった。俺はなんでもないことのように必死で取り繕う。
「荷物、持つよ」
「えっ? あ、大丈夫だって」
有馬が俺の両肩にあった荷物に手を伸ばしてきたから俺は慌ててお断りを入れる。それなのに、有馬は「いいから」と俺のスクールバッグと結月の保育園バッグを奪い取った。
「お前のどうしても外せない用事って、これ?」
「あ……」
やばい。結構バレてる感じかな。
「学校のあといつも保育園に行って妹迎えに行ってんの?」
「いや、今日はたまたま……」
「そうだよー! ママはお仕事だからいつもにいにが来てくれるよ!」
「おい結月!」
結月が勝手に喋ったせいで台無しだ。もちろんそれを有馬は聞き逃さない。
「ねぇ、結月ちゃん。昨日、にいには保育園に迎えに来た?」
「来たよ。ゆずがお熱になっちゃったから、にいにが来てくれたんだよ」
俺は結月の口を塞ぎたくてたまらない。
頼むよ、結月。これ以上、俺の秘密をバラさないでくれ!
「それで……午後の授業をサボったのか」
有馬は俺を見る。ここまで知られたからには言い訳できない。俺は「そうだよ」と観念した。
「……誰にも言わないで。このこと、先生にも言ってない」
俺が学校をサボってまで妹の面倒を見ていることを知られたら、確実に母さんが責められる。
母さんは家族のために必死で働いてくれてるんだから、そんなことになったら可哀想だ。
聞く人が聞いたら高校生のくせに何をしているんだと思うかもしれない。でも、俺にとって家族を支えることは部活よりも勉強よりも大切な最優先事項なんだ。
俺は保育士さんにお礼を言って、結月の手を引き保育園をあとにする。ここからス―パーまで徒歩五分。でも結月がいるからもっとかかるかな。
「にいに抱っこ!」
「ええっ……」
歩き始めたばかりなのに、いきなり言われて俺は困惑する。重いスクールバッグに保育園バッグにさらに抱っこか……きっついな。
「少しだけな」
「うん!」
俺は結月の視線に弱い。大変だけど、今日も一日保育園で頑張ったんだからと思うと無下にはできない。
「よいしょっ」
俺は大量の荷物と五歳の妹を抱える。荷物の持ち手が食い込む肩は痛いし、足腰もきついけど、結月の可愛い顔を見て元気をもらい、俺は力をふり絞る。
「にいに、今日の夕ご飯はなぁに?」
「お好み焼きにしようと思ってるんだ」
「やったぁ! ゆづ、お好み焼き、好きー!」
結月は俺の腕の中ではしゃいで暴れる。俺はそれをバランスを保って支える。
「なぁ、結月、聞いてくれよ、俺の学校の友達でさ、お好み焼きを食べたことがないってやつがいたんだ。信じられないだろ?」
「えっ? にいにと同じ年なのに?」
「そうだよ。十七年間、何食ってたんだろな。あんなおいしいもの食べたことないって異常だよ」
「もったいないね。おいしいのにね」
俺は結月と会話をしながら有馬のことを考えている。
有馬んちの夕飯ってどんななのかな。今度聞けたら聞いてみようかな。
まぁ、俺の作る夕飯よりもあきらか豪華なんだろうな。
「にいに、スーパーでお菓子買ってくれる?」
「いいよ。ひとつだけな。熱が下がって元気になったお祝いだ!」
今日、元気に保育園に行ってくれて正直助かった。俺には今日、大切な有馬との約束があったから。そのぶんの気持ちも込めてお菓子をひとつくらい買ってやってもいいと思った。
ちょっと重いけど、行けるところまでこのまま結月を抱っこしてスーパーに行こうと俺が歩いていたときだった。
俺の目の前に、さっき別れたはずの有馬が制服のまま立っている。
有馬は結月を抱っこした俺を見て何か言いたげだ。
「あ、あれ? 帰ったんじゃなかったの? 買い物?」
あまり見られたくないところを見られてしまった。俺はなんでもないことのように必死で取り繕う。
「荷物、持つよ」
「えっ? あ、大丈夫だって」
有馬が俺の両肩にあった荷物に手を伸ばしてきたから俺は慌ててお断りを入れる。それなのに、有馬は「いいから」と俺のスクールバッグと結月の保育園バッグを奪い取った。
「お前のどうしても外せない用事って、これ?」
「あ……」
やばい。結構バレてる感じかな。
「学校のあといつも保育園に行って妹迎えに行ってんの?」
「いや、今日はたまたま……」
「そうだよー! ママはお仕事だからいつもにいにが来てくれるよ!」
「おい結月!」
結月が勝手に喋ったせいで台無しだ。もちろんそれを有馬は聞き逃さない。
「ねぇ、結月ちゃん。昨日、にいには保育園に迎えに来た?」
「来たよ。ゆずがお熱になっちゃったから、にいにが来てくれたんだよ」
俺は結月の口を塞ぎたくてたまらない。
頼むよ、結月。これ以上、俺の秘密をバラさないでくれ!
「それで……午後の授業をサボったのか」
有馬は俺を見る。ここまで知られたからには言い訳できない。俺は「そうだよ」と観念した。
「……誰にも言わないで。このこと、先生にも言ってない」
俺が学校をサボってまで妹の面倒を見ていることを知られたら、確実に母さんが責められる。
母さんは家族のために必死で働いてくれてるんだから、そんなことになったら可哀想だ。
聞く人が聞いたら高校生のくせに何をしているんだと思うかもしれない。でも、俺にとって家族を支えることは部活よりも勉強よりも大切な最優先事項なんだ。
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