その告白は勘違いです

雨宮里玖

文字の大きさ
14 / 76
2 特別な時間

2-6

しおりを挟む
「ありがとうございました!」

 俺は保育士さんにお礼を言って、結月の手を引き保育園をあとにする。ここからス―パーまで徒歩五分。でも結月がいるからもっとかかるかな。

「にいに抱っこ!」
「ええっ……」

 歩き始めたばかりなのに、いきなり言われて俺は困惑する。重いスクールバッグに保育園バッグにさらに抱っこか……きっついな。

「少しだけな」
「うん!」

 俺は結月の視線に弱い。大変だけど、今日も一日保育園で頑張ったんだからと思うと無下にはできない。

「よいしょっ」

 俺は大量の荷物と五歳の妹を抱える。荷物の持ち手が食い込む肩は痛いし、足腰もきついけど、結月の可愛い顔を見て元気をもらい、俺は力をふり絞る。

「にいに、今日の夕ご飯はなぁに?」
「お好み焼きにしようと思ってるんだ」
「やったぁ! ゆづ、お好み焼き、好きー!」

 結月は俺の腕の中ではしゃいで暴れる。俺はそれをバランスを保って支える。

「なぁ、結月、聞いてくれよ、俺の学校の友達でさ、お好み焼きを食べたことがないってやつがいたんだ。信じられないだろ?」
「えっ? にいにと同じ年なのに?」
「そうだよ。十七年間、何食ってたんだろな。あんなおいしいもの食べたことないって異常だよ」
「もったいないね。おいしいのにね」

 俺は結月と会話をしながら有馬のことを考えている。
 有馬んちの夕飯ってどんななのかな。今度聞けたら聞いてみようかな。
 まぁ、俺の作る夕飯よりもあきらか豪華なんだろうな。

「にいに、スーパーでお菓子買ってくれる?」
「いいよ。ひとつだけな。熱が下がって元気になったお祝いだ!」

 今日、元気に保育園に行ってくれて正直助かった。俺には今日、大切な有馬との約束があったから。そのぶんの気持ちも込めてお菓子をひとつくらい買ってやってもいいと思った。

 ちょっと重いけど、行けるところまでこのまま結月を抱っこしてスーパーに行こうと俺が歩いていたときだった。

 俺の目の前に、さっき別れたはずの有馬が制服のまま立っている。

 有馬は結月を抱っこした俺を見て何か言いたげだ。

「あ、あれ? 帰ったんじゃなかったの? 買い物?」

 あまり見られたくないところを見られてしまった。俺はなんでもないことのように必死で取り繕う。

「荷物、持つよ」
「えっ? あ、大丈夫だって」

 有馬が俺の両肩にあった荷物に手を伸ばしてきたから俺は慌ててお断りを入れる。それなのに、有馬は「いいから」と俺のスクールバッグと結月の保育園バッグを奪い取った。

「お前のどうしても外せない用事って、これ?」
「あ……」

 やばい。結構バレてる感じかな。

「学校のあといつも保育園に行って妹迎えに行ってんの?」
「いや、今日はたまたま……」
「そうだよー! ママはお仕事だからいつもにいにが来てくれるよ!」
「おい結月!」

 結月が勝手に喋ったせいで台無しだ。もちろんそれを有馬は聞き逃さない。

「ねぇ、結月ちゃん。昨日、にいには保育園に迎えに来た?」
「来たよ。ゆずがお熱になっちゃったから、にいにが来てくれたんだよ」

 俺は結月の口を塞ぎたくてたまらない。
 頼むよ、結月。これ以上、俺の秘密をバラさないでくれ!

「それで……午後の授業をサボったのか」

 有馬は俺を見る。ここまで知られたからには言い訳できない。俺は「そうだよ」と観念した。

「……誰にも言わないで。このこと、先生にも言ってない」

 俺が学校をサボってまで妹の面倒を見ていることを知られたら、確実に母さんが責められる。
 母さんは家族のために必死で働いてくれてるんだから、そんなことになったら可哀想だ。
 聞く人が聞いたら高校生のくせに何をしているんだと思うかもしれない。でも、俺にとって家族を支えることは部活よりも勉強よりも大切な最優先事項なんだ。
しおりを挟む
感想 185

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね
BL
受けが攻めと恋人同士だと思って「俺の彼氏は真面目だからなぁ」って言ったら、攻めの様子が急におかしくなった話。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

彼氏の優先順位[本編完結]

セイ
BL
一目惚れした彼に告白されて晴れて恋人になったというのに彼と彼の幼馴染との距離が気になりすぎる!恋人の僕より一緒にいるんじゃない?は…!!もしかして恋人になったのは夢だった?と悩みまくる受けのお話。 メインの青衣×青空の話、幼馴染の茜の話、友人倉橋の数話ずつの短編構成です。それぞれの恋愛をお楽しみください。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...