その告白は勘違いです

雨宮里玖

文字の大きさ
24 / 76
3 好きなのかな

3-7

しおりを挟む
「そうだよな。あのとき七沢が隣にいてくれたら、英語の発表のときみたいに俺を助けてくれたんだろうな」

 有馬は俺に微笑みかけてくる。
 そのときの有馬の笑顔になぜか俺の胸が跳ねた。

 なんだろう。
 なんて言えばいい?
 感覚みたいなものなんだけど、有馬が心から笑ってくれた気がしたんだ。
 やばい。
 俺、今の笑顔、めっちゃ好き。

「俺、あのとき本当に英文が頭からふっとんだんだ。次に何を言うべきだったのか、最初の一文字も出てこない。おじさんとチーズケーキの絵しか浮かんでこなかったんだ」

 それって裕太の考えた英文がアホすぎたせいなんじゃ……有馬の中にはない理解を超えたアホセンスだったのかも。

「怖かった。手が震えた。でも、七沢のおかげで失敗せずに済んだ。ありがとう」
「違うって、俺が困ってたのを有馬が助けてくれたんだ。あんな短時間で英文丸暗記しろってなって、あれだけのクオリティで話せる有馬のほうがすごい。ホント尊敬、マジ尊敬」
「あはは。七沢はいいな」

 有馬は声を出して笑って、目の前の改札に定期券をかざす。そのピピッ音に話が遮られたようだった。

「何? 有馬っ、俺の何がいいんだよっ」

 俺は慌てて有馬についていく。

「俺、もっと早く七沢に出会いたかった」
「はぁっ?」
「なんでもないっ」
「はっきり言えよっ!」
「い、や、だ!」

 有馬は無邪気に笑う。その姿は全然有馬らしくない。
 でも、なんか有馬、さっきより元気になった……?

「七沢。さっきの話、黙ってろよ。俺の黒歴史なんだから」

 有馬は俺にぐっと迫る。
 なんだよ、そんな当たり前のことを俺に言って。俺がこんな大切なことを誰かに話すわけないだろう。

「話さないよ。有馬が俺の秘密を黙っててくれる限りはな」
「俺は言わない」
「だったら俺も言わない。当たり前だろ」

 俺と有馬は互いに目を合わせたあと、フフッと笑う。
 もしかしたら有馬は、俺の最大の秘密を知ってしまったから、代わりに自分の秘密も話してくれたのかもしれない。
 学校で見る有馬と、俺とふたりでいるときの有馬はなんか違う。
 俺は、放課後の有馬のほうが好きだ。


 やがて満員電車が来て、俺たちはいつものように定員オーバーな車内に身体を潜り込ませる。
 こんなふうにして何度も有馬と帰ってるんだけど。

 俺はすでに気がついている。
 有馬はいつも、俺を庇うようにして電車に乗っているんだ。俺を壁側にしてくれて、有馬が盾になってくれたり、俺がふらつかないように身体を支えてくれたり。

 俺、男だから別に大丈夫って思うのに。
 俺は長男で、一家を支えている自負がある。頼れる人なんていなくて、基本的に日々、孤軍奮闘してる。

 だから、なんか、甘やかされると弱い。

 電車が揺れるたび、俺を守るように伸びる有馬の手に、俺は惹かれる。

 俺、ひとりで頑張ることに疲れているのかも。


 電車から降りて、最寄り駅の改札を出たあと、俺と有馬は左右バラバラ。ここでお別れだ。
 毎週金曜日だけ、有馬と過ごす放課後の終わり。
 いつも名残惜しいんだよな……。

「あのさ、有馬」

 去ってしまいそうになった有馬の腕を掴んで引き止める。
しおりを挟む
感想 185

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね
BL
受けが攻めと恋人同士だと思って「俺の彼氏は真面目だからなぁ」って言ったら、攻めの様子が急におかしくなった話。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

彼氏の優先順位[本編完結]

セイ
BL
一目惚れした彼に告白されて晴れて恋人になったというのに彼と彼の幼馴染との距離が気になりすぎる!恋人の僕より一緒にいるんじゃない?は…!!もしかして恋人になったのは夢だった?と悩みまくる受けのお話。 メインの青衣×青空の話、幼馴染の茜の話、友人倉橋の数話ずつの短編構成です。それぞれの恋愛をお楽しみください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話

雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。 樋口(27)サラリーマン。 神尾裕二(27)サラリーマン。 佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。 山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。

処理中です...