その告白は勘違いです

雨宮里玖

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4 期末テスト

4-1

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 期末テスト初日の朝、俺は母さんと結月と三人で顔を見合わせる。
 昨日の夜、結月はあまり元気がなかった。疲れているのかなと思い、俺は結月を早めに寝かしつけたんだけど、今朝になって結月は発熱した。
 母さんは今日はどうしても外せない仕事がある。俺は期末テストがある。
 こういうときのために病児保育のシッター登録はしているけど、空いてる人がいないと断られてしまった。

「午前中だけ、頑張ってくれたら……」

 スーツをばっちり着込んだ出勤前の母さんがポロッと本音をこぼす。
 そうなんだ。俺はテスト期間中だから、学校は午前中で終わる。だから半日だけでも結月が保育園に行ってくれたら助かるんだ。

「結月、お薬飲もうね」

 母さんはごく自然に解熱剤を取り出して結月に与える。
 母さんの考えはわかった。薬で結月の熱を37.5度よりも下げて保育園に連れて行く気だ。
 でもいつかは薬が切れる。昼間には再び熱が上がるだろうけど、そのころには俺が迎えにいける、という算段だろう。

「お薬飲めば元気になるからね。結月、ちょっとだけ頑張ろうね」
「ほんと?」
「うん。大丈夫よ」

 母さんは結月の背中を撫でて、あやしている。
 本当にそれでいいんだろうか。俺の目にうつる結月は、どう見ても体調が悪そうだ。
 こんな小さな子に解熱剤を飲ませて、無理をさせて、保育園に預けることは正しいことなんだろうか。
 でも、俺は今日、学校を休みたくない。この日のために有馬とふたりで頑張ってきたんだ。
 どうしても期末テストを受けたい。いい点取って、有馬に「お前のおかげだ」って見せつけてやりたい。

「ママが言うならだいじょうぶだね」

 結月は少し充血した目を細めて、弱々しく微笑む。
 その顔を見た母さんの顔が引きつった。その悲痛な顔を見てわかった。母さんも自分が何をしているのかわかっている。俺と同じ気持ちでいるんだ。
 母さんも、俺と同じように罪悪感に胸を痛めている。

「じゃ、保育園行こうね」

 結月の手を引き出勤しようとする母さんを俺は止めた。

「今日は俺が連れてくよ。俺ならあと二十分家にいられるから」

 俺と母さんは目配せして互いの意思を確認し合う。
 今日の結月は少しでも家にいられたほうがいい。それは母さんも思っていることだろう。

「わかった。莉紬、お願いね」
「うん」

 俺は母さんを見送る。そして結月のほうを振り返ると、結月は床にぐったりと倒れていた。

「あと二十分、寝られるからな」

 俺はブランケットをかけてやり、クッションを結月の頭の下に敷いてやる。
 結月の頭は熱い。
 結月はどう見ても元気じゃない。
 俺は結月のそばで今日の範囲の英単語を覚えようとする。でも、全然頭に入ってこない。

「あぁ、クソッ……!」

 今度こそ期末テストでいい点を取りたかったのに。この日のために寝る間も惜しんで勉強してきたのに。
 でも、結月を家でゆっくり休ませてやりたい。病気のときくらいそばに付き添ってやりたい。
 どうしよう。
 どうしたらいい?
 俺が本当に大切にしているものはなんだ。俺はどうしたい……?
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