その告白は勘違いです

雨宮里玖

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6 手紙

6-3

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「有馬と七沢を追っかけたときに、拾ったんだよ。いつ落としたかは見てないけど」
「追っかけたっ?」

 俺、走って逃げたときに落としたんだ。で俺たちを追っかけてきた佐久間が、俺が落とした手紙に気がついたんだ。

「だって有馬にひとこと言ってやりたかったんだよ。あいつ絶対に外せない大切な用事だって言って俺たちとの約束破ったくせに、なんで七沢と……」
「だよねぇ」

 俺と出かけることは、そんなに重要なことじゃないと思う。それなのにどうして有馬は友達の誘いをそんなふうに言ってまで断ったんだろう。

 変だ。
 俺のことが嫌いなら、有馬はどうして俺と夏祭りに行こうとしたんだろう。

 だって、俺の手紙が嘘だったってことに気がついていたのなら、その時点で普通にデートをキャンセルすればいい。
 もともと有馬が言い出したことだし、嘘つきで、思いやりがない俺のことなんて雑に扱ってもいい。約束をなかったことにしてもいいじゃないか。

 なんで有馬は友達との約束を蹴ってまで、俺と夏祭りに行きたかったんだろう。

「とにかく、これは七沢に返しておく」

 佐久間は水色の封筒を俺の前に突き出した。
 佐久間が俺を呼んだのは、この手紙のことを俺に伝えるためだったんだ。

「いい。それ、捨てといてよ」

 俺は手紙を持つ佐久間の手を押し返した。

「もう要らない。必要なくなったんだ」

 この手紙を有馬に渡すことは絶対にない。
 文章もろくに書けないけど、俺なりに気持ちを込めて書いたんだ。でもそれは有馬に届くこともなく、終わってしまった。

 全部俺のせいだから、なにも言えない。
 手紙を失くしたのも俺。有馬に勘違いさせたことをずっと謝らなかったのも俺。
 有馬は何も悪くない。

「でもさ……」
「いい。佐久間が捨てて」

 俺は手紙を佐久間の胸に押しつける。
 それを見たくもないっていうのが俺の本音だ。

「わかった。そうするよ」

 佐久間は俺に突き返してはこなかった。これ以上は俺の傷をえぐるような行為だと思ったのかもしれない。 


「はぁーあ!」

 佐久間は頭の後ろで手を組んだ。

「七沢って学校で有馬のことばっか見てるよねー」
「えっ? うそっ?」
「無自覚なの? それはやばいって。俺、一学期のころから気づいてたよ。なんかやたらこっち見てくるやつがいるなって思ってた。で、七沢の視線の先を追うといつも有馬がいた」
「マジ……」

 俺、そんなに有馬のこと見てたのか。俺の中ではチラ見程度のつもりだったのに。

「それ、よくなかったかもしれないよ? 有馬は人からジロジロ見られるの、好きじゃないから」
「そ、そうだったのっ?」

 知らなかった。有馬は優しいから俺に何も言わなかったけど、実は俺の視線に気づいてて、内心イライラしていたのかな。

「あと、有馬に『何が好き?』とか聞かないほうがいい。好きな食べ物とかそういう質問。有馬はあんまりいい顔しないんだよね」
「それは、知ってます……」

 その地雷は最初に踏んだ。有馬と無言で歩いているのが気まずくて有馬を質問攻めにしちゃったんだ。

 あれも、有馬にとっては嫌なことだったよな。
 俺、最悪なことばかりしてる。こんなんじゃ嫌われて当然だよな。

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