その告白は勘違いです

雨宮里玖

文字の大きさ
63 / 76
7 一緒にいたいから

7-8

しおりを挟む
 文化祭の熱もすっかり落ち着き、高三はすっかり受験モードに入っていった。そんな少し慌ただしいころの土曜日の夕方。
 有馬が俺の家にやってきた。

「ありまぁ、いらっしゃい!」

 エプロン姿で有馬を玄関まで一番に迎えに出たのは結月だ。
 ちなみに結月は、普段、お手伝いはあまりしないんだけど、このお気に入りの猫のキャラクターの絵柄のエプロンをすると張り切って手伝ってくれる。お仕事モードになるみたいだ。
 結月が有馬を「ありま」呼びしてしまっているのは、まぁ、ごめんなさい。俺のせいです。

「有馬、上がれよ。もうお好み焼きパーティーの準備できてるよ」
「ありがとう。お邪魔します」

 有馬は爽やかな笑顔で俺と結月に挨拶をする。それから靴を脱いで、丁寧に靴を揃えて端に置く。
 その所作がいちいち綺麗なんだよな。なんか、しつけがしっかりされた、いい家の子って感じが伝わってくる。

「これ、母からです」

 丁寧にお辞儀と挨拶をしたあと、有馬はリビングにいた俺の母さんに手土産を渡している。
 うちはそんなに畏まるような家じゃないんだけど、有馬んちはさすがだな。

 ほどなくして、お好み焼きパーティーが始まった。
 俺の得意料理、お好み焼きをずっと有馬に食べてもらいたかったんだ。それが叶うなんて思いもしなかったな。
 俺と母さんと結月、有馬の四人で、ホットプレートを囲み、俺が率先してお好み焼きを焼く。

「キャベツの切り方と混ぜ方にもコツがあるし、一番は焼き方なんだよ!」

 俺はドヤ顔で有馬にこだわりを語ってみせる。有馬はそれを「へぇ、すごいな」「それで?」と相槌を打ちながら聞いてくれている。

「にいに、話ながいー。つまんないよ」
「へっ?」

 素直な気持ちで結月にツッコまれ、俺はハッとする。
 だよな。俺のこだわりなんて聞いても有馬はつまらないよな!

「結月ちゃん、俺はこの話を聞くの初めてなんだ。だから、すごく楽しいよ。それに、こんなに張り切ってる七沢を初めて見た」

 有馬は俺の長い話もものともせずに、結月と俺に笑顔を見せる。
 本当にいいやつだな、有馬って。

「焼けた! はい。有馬」

 俺のこだわりたっぷりのお好み焼きを切り分け、有馬に差し出す。ちなみにソースやマヨネーズ等々はセルフでやってもらってる。

「おいしい。七沢、マジでうまい」
「よかったぁ」

 俺の作ったお好み焼きを有馬が食べてくれてる。
 嬉しいな、素直に嬉しい。

「俺も。七沢の手料理食べられるとは思わなかった」
「料理って言ってもお好み焼きだけどな」
「お好み焼きは手料理だろ。こんなにこだわってるなら、俺は真似できないな」
「食べたくなったら俺が作ってやるから、いつでも遊びに来いよ」
「うん」

 有馬は頷き、それから俺のお好み焼きをめっちゃ食べてくれてる。

 当然だけどそこには結月も母さんもいて、有馬と親しげに会話を楽しんでいる。
 なんか、不思議な感じだ。
 いつもの俺の日常に、有馬がいる。
 少し前までは、ただのクラスメイトだった有馬が、こうして俺の生活の一部みたいに溶け込んでいく。

 それって本当は、奇跡みたいな確率なんじゃないだろうか。

「七沢、そろそろひっくり返さなくていいの?」
「えっ? あ、本当だやっば!」

 あっぶな、有馬ばっかり見てて手元がおろそかになってたよ。

「にいに、ありまばっかり見てるー」
「はっ、はぁっ?」

 待って、やばいって、それ、結月にまでバレてるのっ?
 そんなに俺、有馬のこと見てるんだ……。

「しょうがないだろ、有馬がうちに来てくれるなんて初めてのことなんだから!」

 俺は結月に意味のわからない言い訳をして、お好み焼きをひっくり返しにかかる。

 あれだけ得意だと豪語していたくせに、見事にひっくり返すことに失敗し、お好み焼きを台無しにしたことは、ご愛嬌。
しおりを挟む
感想 185

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね
BL
受けが攻めと恋人同士だと思って「俺の彼氏は真面目だからなぁ」って言ったら、攻めの様子が急におかしくなった話。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

彼氏の優先順位[本編完結]

セイ
BL
一目惚れした彼に告白されて晴れて恋人になったというのに彼と彼の幼馴染との距離が気になりすぎる!恋人の僕より一緒にいるんじゃない?は…!!もしかして恋人になったのは夢だった?と悩みまくる受けのお話。 メインの青衣×青空の話、幼馴染の茜の話、友人倉橋の数話ずつの短編構成です。それぞれの恋愛をお楽しみください。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...