7 / 29
尊史
尊史 -02
しおりを挟む
事前に渡された資料によると、高機動装甲車が輸送班。随伴としてAVが数機つい
てくるらしい。漏洩情報の譲り渡しにAV数機つけるとはまた随分と豪儀なやり方だ
と思うが、敵対する戦力の情報はあるのと無いのとでは全く準備の仕方が変わる。
AV数機、ではなく、向こうも傭兵を雇っているかもしれない。
「準備はしっかりしておく、ってことでいいのね?」
周辺地図を見つつ、オペレーションと装備の検討をしていた恵令奈が聞いてきた
「そうだ。……装備はいつもの右手バズーカと、肩部レーダー、それと多弾頭ミサイルを。」
同じ地図を見ながら、相手はどのルートで侵入するかを俺も検討する。レーダー
があるため、アドリブで対応することも可能だが、予測してあるのと無いのとでは
反応するまでの速度が違う。どんな任務であれ、準備をしっかりしておくのは必要
なことだ。
「盗まれた情報って、次々世代モデルのだっけ?」
「画期的な技術を盛り込んだパーツの設計らしい。相手方にわたると、技術的なア
ドバンテージが崩されるから、そうならないために早めに対処、それと、見せしめ
だな。」
金に目がくらんでことに及んだことらしく、その制裁は、おおよそ荒事から遠い市民から見れば、苛烈で冷酷と言えるレベルだった。手始めに家族を攫い、それをネタに犯行を洗いざらい吐かせ、犯行に及んだ本人はとうに死亡、家族もそのあとを追
わされる形で抹殺。
今回の依頼は、すでに外部へ盗み出されたパーツと、設計データを運び屋ともど
もつぶしてしまおう、という計画のもと、LASへ依頼されたものだった。
「……向こうも傭兵雇ってるかな?」
「さてな。いつも通り、始まってみなきゃ実際の戦力がわからんよ。AVがFAVだ
ったなんて、割かしあるだろ?」
話を進めつつ、パイロットスーツに不備が無いか確認、試着して問題ないこと
も確認した。
「……よし、ハッチを開けるぞ。」
スーツについている無線機を通して語りかける。
「了解。この子のオペレーションも久しぶりね」
恵令奈は気に入った機械や機体を「この子」と呼んだりする。もともとは機械
にそこまで強くなかったが、俺や自分の命を預ける者と認識してから、少しずつ
愛着がわくようになった、という話だった。
『……油圧チェック完了、FCS、IFF動作正常。チェック項目、オールクリア―。
システム・オールグリーン。マスター、おはようございます。』
「おはよう、紅刃|《こうじん》。あと3時間後に出撃する。出撃準備状態。」
『了解しました。タスクを更新します。機体テスト完了、アイドルに入ります』
FCSとセットに搭載されたシステムへオーダーする。必要なテストと換装はこ
れで完了。ハンガーからそのまま機体をキャリアへ移動し格納庫からキャリアの
居住室へ移る。
「あー。この狭い居住室、久しぶりねー。」
狭い、という批判ともとれる発言をしつつ、恵令奈の口調は明るかった。
どういう心境なのかは、言うまでもないだろう。
「長距離の移動じゃないから、食料その他は今回必要ないわね。」
アルコールを持ち込みたい気持ちに先回りされたらしい。本当に、こいつは
よくわかっていらっしゃる。俺に歩み寄り、後ろ手に隠したものを見つけたと
ころでヒドイ叱られ方をした。正論でしかないので、今回はおとなしく従って
格納庫に置いてきてしまった。
「……気分転換にいいかと……」
「言い訳無用!!久しぶりの作戦だっていうのに、アルコールで判断鈍らせる
気?」
ひとしきりそんなじゃれあいをしたところで、作戦領域に近づいてくる。
そろそろ、依頼主と、今回協同する傭兵との合流地点だ。
てくるらしい。漏洩情報の譲り渡しにAV数機つけるとはまた随分と豪儀なやり方だ
と思うが、敵対する戦力の情報はあるのと無いのとでは全く準備の仕方が変わる。
AV数機、ではなく、向こうも傭兵を雇っているかもしれない。
「準備はしっかりしておく、ってことでいいのね?」
周辺地図を見つつ、オペレーションと装備の検討をしていた恵令奈が聞いてきた
「そうだ。……装備はいつもの右手バズーカと、肩部レーダー、それと多弾頭ミサイルを。」
同じ地図を見ながら、相手はどのルートで侵入するかを俺も検討する。レーダー
があるため、アドリブで対応することも可能だが、予測してあるのと無いのとでは
反応するまでの速度が違う。どんな任務であれ、準備をしっかりしておくのは必要
なことだ。
「盗まれた情報って、次々世代モデルのだっけ?」
「画期的な技術を盛り込んだパーツの設計らしい。相手方にわたると、技術的なア
ドバンテージが崩されるから、そうならないために早めに対処、それと、見せしめ
だな。」
金に目がくらんでことに及んだことらしく、その制裁は、おおよそ荒事から遠い市民から見れば、苛烈で冷酷と言えるレベルだった。手始めに家族を攫い、それをネタに犯行を洗いざらい吐かせ、犯行に及んだ本人はとうに死亡、家族もそのあとを追
わされる形で抹殺。
今回の依頼は、すでに外部へ盗み出されたパーツと、設計データを運び屋ともど
もつぶしてしまおう、という計画のもと、LASへ依頼されたものだった。
「……向こうも傭兵雇ってるかな?」
「さてな。いつも通り、始まってみなきゃ実際の戦力がわからんよ。AVがFAVだ
ったなんて、割かしあるだろ?」
話を進めつつ、パイロットスーツに不備が無いか確認、試着して問題ないこと
も確認した。
「……よし、ハッチを開けるぞ。」
スーツについている無線機を通して語りかける。
「了解。この子のオペレーションも久しぶりね」
恵令奈は気に入った機械や機体を「この子」と呼んだりする。もともとは機械
にそこまで強くなかったが、俺や自分の命を預ける者と認識してから、少しずつ
愛着がわくようになった、という話だった。
『……油圧チェック完了、FCS、IFF動作正常。チェック項目、オールクリア―。
システム・オールグリーン。マスター、おはようございます。』
「おはよう、紅刃|《こうじん》。あと3時間後に出撃する。出撃準備状態。」
『了解しました。タスクを更新します。機体テスト完了、アイドルに入ります』
FCSとセットに搭載されたシステムへオーダーする。必要なテストと換装はこ
れで完了。ハンガーからそのまま機体をキャリアへ移動し格納庫からキャリアの
居住室へ移る。
「あー。この狭い居住室、久しぶりねー。」
狭い、という批判ともとれる発言をしつつ、恵令奈の口調は明るかった。
どういう心境なのかは、言うまでもないだろう。
「長距離の移動じゃないから、食料その他は今回必要ないわね。」
アルコールを持ち込みたい気持ちに先回りされたらしい。本当に、こいつは
よくわかっていらっしゃる。俺に歩み寄り、後ろ手に隠したものを見つけたと
ころでヒドイ叱られ方をした。正論でしかないので、今回はおとなしく従って
格納庫に置いてきてしまった。
「……気分転換にいいかと……」
「言い訳無用!!久しぶりの作戦だっていうのに、アルコールで判断鈍らせる
気?」
ひとしきりそんなじゃれあいをしたところで、作戦領域に近づいてくる。
そろそろ、依頼主と、今回協同する傭兵との合流地点だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる