片方の鼻で生きてきた男

榊 直 (さかき ただし)

文字の大きさ
1 / 7

第1話 匂いが良く分からないんだ

しおりを挟む
 僕は奥田 尚志。小さな自家焙煎のコーヒー屋でアルバイトをしている。

今は充実しているとは言えない。

もう32歳なのに、アルバイトだし。高校まで出たが、進学なんてしてない。

成績も運動もだめ。緊張が強く、接客は大の苦手だ。

このコーヒー屋でも接客があるが、あまりやりたくない。

たまに気分が乗ってくると、お客さんと話せる時もあるが、次に接した時にはもう話せなくなったりする。

なんなんだ。僕は。

 コーヒーも匂いがよくわからない。致命的だろう?コーヒー屋で。

新しいコーヒーを店頭に出す時、店のみんなで試飲するが、みんなは飲む前にコーヒーの匂いを嗅いで、



「わ!フルーティーね!」とか「オレンジのようだね」とか言ったりするが、僕は分からない。



以前、もうやめたが、タバコを吸っていたので、鼻が悪くなったのか。

タバコを吸っている時は最悪。今はすこ~し匂いが分かるが、吸っている時は感度ゼロ。

ひどい悪臭がする場面でも、分からず昔はびっくりされてたっけ。

しかし、コーヒーは好きだ。飲めば分かる。分かっているつもり。匂いがすればもっと味が分かるのかな。



 自宅で、ネット検索した。匂いについて。簡単なテストがあるらしい。アルコール消毒の匂いがわからないと鼻の異常があり、耳鼻科に行ったほうが良いとのこと。

 やってみるか。

そこらへんにあったアルコール消毒液をティッシュに吹き掛け、右の鼻だけで嗅いてみる。

分かる。ちゃんとアルコールの匂いがする。

続いて、右鼻を押さえ、左はと・・・

分からない!まったくアルコールの匂いがしない。

なぜ、左だけ?

気になった。僕の左鼻は匂わない。右だけで嗅いでたのか。どうりで匂わんはずだ。

 

 この時はただ、片方の鼻が匂わないだけだと思っていた。後にもっと深刻な状態だったと思い知る。



 僕は花粉症もひどく。ついでだったので、片方の匂いも相談しに近所の町にある耳鼻科に行った。

先生に片方がアルコールの匂いがしなかったと告げた。

 先生はライトを当て、僕の左鼻を覗くと、



「あ~これね。君ね。鼻の中が曲がっているよ。だいぶ塞がっているね」



「え?そうなんですか?」



 その時は特に先生はこうしようとかはなかった。しょうがないよという感じ。

花粉症のケアだけして帰った。

 くそ。鼻が曲がってる?しょうがないのか。

秋が終わり、風が冷たい夕方だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...