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10章 最後の物語

第41話 みんな、ありがとう

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 「せまい・・」
「どこだ・・」
キューが電気を付けた。キューはこの世界に来たことがる。
「ここが、ちいの世界・・」ジルが見渡した。
「早くちいを探そう!」キューが言った。
皆はちいの部屋を出て、外に出た。
3人が外に出ると、女子高生の2人が悲鳴を上げた。
「きゃー!」
マウンテンゴリラに似た大男のコング。背の小さなジル。
ピエール王国の服装のキュー。
「コングが目立ち過ぎる・・」ジルが言った。
「なんだ!あいつらは!」
「映画の撮影か⁉」
「ゴリラ⁉」
 辺りは人が集まり、ざわざわしてきた。
「行こう!」キューが走った。
コングもジルも走った。
走っても通行人はびっくりしてしまい目立った。
2、3時間走ってちいを探していると、いつの間にか車が追ってきた。
TV局だ。カメラを回している。
「見てください。あれが珍しい服装と大男の3人組です」
「くそ!なんだあいつらは!なんだあの乗り物は!」コングが言った。
ヘリコプターも上空から追ってきた。
3人は雑居ビルの間に入った。
TV局の車も入れない路地だ。
薄暗い路地に入ると、一人の男が手招きした。
「こっちに来て」
3人は疲れていたので、男が示したビルに入った。
「ここは・・」
「静かに・・」男が言った。
ビルの外で人だかりがコングたちを探していた。
しばらくすると静かになった。人だかりはあきらめてどこかへ行った。
 部屋にはテレビがあり、3人を見失ったと報じていた。
「私はちいの父です。服装であなた達の世界と分かりました。私も一度行った事があるので」
「やっぱりお父さんだ!前にお会いしましたね」キューが言った。
「そうですね。また会いましたね」
「俺たちはちいを助ける為、時空を超えて来た。ちいはどこだ」
「病院で寝ています。2,3日が山場で危ない状況です」
「ちいを助ける事ができる魔法の小瓶を持っている。ちいに合わせてくれ」ジルが言った。
「夜中まで待ちましょう。今は目立ちすぎる」
「コーヒーなど、飲みませんか?」パパが言った。
「ここは家?」
「minku coffeeという私のカフェです」
「ミンクー⁉」キューがびっくりした。
「私もミンクーの世界のコーヒーが好きでね。メニューをどうぞ」
「お、夜空ブレンドもあるのか」コングが言った。
「僕は極みブレンド」キューが言った。
「俺は紅ブレンド」とジル。
「今、淹れましょう」
3人はコーヒーをすすり、日が落ちるのを待った。
「うまい。この夜空ブレンド。本場に劣らない。深み、コク、美味いぞ」とコング。
「僕の極みブレンドも香りが豊かで、バランスが良い」とキュー。
「俺の紅ブレンドはベリー感があり、あと味はワインのようで、たまらない」ジルも満足した。
日が落ち、だいぶ暗くなった。
「もういいでしょう。私の後についてきて」パパが言った。
3人は車でちいの病院へ向かった。

 病院につくと、非常階段から病院に入った。
夜間の為、看護師かんごしも少なかった。コング達は隠れながら、ちいの病室に向かった。
パパは注意深く進んだ。
ついにちいの病室に着いた。
個室にちいが寝ていた。いろいろ器具が取り付けてあった。
「ちい・・」キューが涙ぐんだ。
「小瓶を振りかけるんだ」ジルが小瓶を出した。
「もう、振りかけるか?」とコング。
「僕が・・僕が振りかける」
キューは小瓶のふたを開け、ちいの体に振りかけた。
ちいの体が金色に輝き、病室が閃光した。


 ミンクーの世界のちいは魔女といた。
ちいの体が金色に光った。
「おお!ちい!向こうの世界で成功したらしいよ」
「魔女さん!」
「ちい!元気でやるんだよ!」


 病室のちいは目を覚ました。
「キュー・・なの?」
「ちいたん!良かった!助かったんだ!」
「砂時計が終わりそうだ」とジル。
「ちいたん!元気で・・」キューが涙ぐみながら言った。
「キューありがとう・・」
ちいとキューは手を繋いだ。
三人の体が透明になってきた。
「ちい・・僕はちいの事が・・」
「キュー・・」
三人はふっと消えた。
「キュー・・」ちいがわ~んと泣いた。
パパはちいを抱きしめた。


 パパの店、minku coffeeは大繁盛。パパとママは忙しくコーヒーを淹れていた。
「パパ。私もコーヒーを飲む。minkuブレンドを」
「おや!コーヒーを飲むのは初めてだね。ちい」
「飲めるような気がするの。今日は」
ちいは外を見た。プロペラ飛行機がひこうき雲を出していた。
その雲はキューの姿に似ていた。
外を眺めていると、遠くから大きな鳥が近づいて来た。
なんと、アーリーだった。アーリーはクチバシで窓を叩いた。
ママをびっくりさせないように、パパはママの注意をそらした。パパはちいに目配せした。
ちいが窓を開けた。アーリーは
「ドルゾー様のお力で時空を超えて来たよ。キューから手紙を預かっている。ほら」
アーリーはちいに手紙を渡した。


 「ちいたん。すごいんだよ。ドルゾーさんはちいがまたこっちの世界に戻れるように、
イヤリングを作ったんだ。これをつければこっちに戻れるらしよ!
ちいたん、君の事を愛している。心から。結婚したい。早いかな?イヤ、早くない。
たくさん話したいよ。待っているからね」
アルフレッド


 手紙にイヤリングが貼り付けてあった。ちいはイヤリングを手に取った。
「じゃ、戻るよ。ここは空気があんまり美味しくないねぇ」
アーリーは飛び去っていった。
ちいはイヤリングをつけた。
「パパ、すごいよ。向こうへ行けるみたい!」
「信じられん。もう行けないかと思った。気をつけるのだよ」
「うん、自分の部屋にもどるね。あそこが出発する所だと思うから」
ちいは走って、自分の家に向かった。
どこからか、ミンクーの歌声が聴こえたような気がした。
優しい、暖かい声が。

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みんなの感想(1件)

ラビ
2024.04.10 ラビ

とっても読みやすいです。面白い!

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