ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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中学生と婚約解消

好きなひと…亜耶

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 ヤバイ、待ち合わせに遅れる。
 私は、彼を放置し慌てて鞄に参考書・ノート・筆記用具を詰め込んでいく。
「ん? どっか出掛けるのか?」
 涙目になりながら顎を押さえ、不思議そうな顔をして見てくる彼に。
「そうだよ。友達と待ち合わせしてて、これから勉強会なの。」
 淡々と答える私に。
「それって、男居るのか?」
 何時もより、冷気を放射してる気がするが…臆することなく。
「居るよ。」
 そう答えれば、その場で呆然としだす彼の横を足早に抜け、部屋を出て階段を降りようとしたら。         
 腕を捕まれ、後ろに引っ張られる。
「駄目だ! そんな所には行かせられない!! 勉強なら、俺が見てやる。」
 って、部屋に逆戻りされる。男が居るってだけでこれだよ。
  
 意地悪しすぎた?
  
 私もいけなかったのかなって反省はする。
 でもね、これぐらいいいと思うんだよね。
 だって、来るのはただのクラスメイト(今のところはだけど)なんだし……。
 でもこれだけは言わせて貰いたい。
「いい加減にしてよ! 前から、約束してたのを破るわけにはいかないでしょ。」
 そう、彼が突撃してくる前から決まってた事なのだ。だから、ドタキャンする訳にもいかない。
 何時も、突然やって来ては強行する彼に嫌気もさしてきていた。
「じゃあ、俺も一緒に行く。」
 と言い出すから手に終えなくなる。
「大の大人が、中学生の勉強会に出るんですか?」
 私が、呆れたように言えば。
「心配だから……。」
 って、小声で聞こえてくる。
 目の前の彼、高橋遥は十才も年の離れたお兄ちゃんの同級生なのだ。
 そんな彼を相手にてこずっている私は、隣の部屋に続く壁に近付き思いっきり壁をドンドンと叩いた(今日は、お兄ちゃんで掛けないと聞いていたので)。
 それに気付いてくれたお兄ちゃんが、ドアから顔を出し。
「どうした、亜耶。そろそろ家を出ないと間に合わないぞ。」
 って、呑気に声をかけてくる。
「出たいんだけど、遥さんが邪魔してくる。」
 困ったように言えば、お兄ちゃんが遥さんを見るなり。
「何やってるの、遥? 亜耶を困らせて。」
 呆れ口調のお兄ちゃんに対して。
「だって、亜耶が……俺以外の男と、会うって言うから……。」
 涙声で反論する、遥さん。大の大人が何泣いてるの?
「仕方無いだろう。前から決まってたことだし、クラスの仲間で集まっての勉強会なんだから……邪魔するなよ。」
 お兄ちゃんに諫められて、俯く遥さん。
 そして、遥さんの首根っこを掴み部屋を出て行く。それを充分に見届けてから部屋を出て階段を駆け降り、靴を履くと玄関を飛び出した。

 もう待ち合わせ時間ギリギリだよ。
 そう思いながら、足を動かした。


 私、鞠山亜耶十五才。
 至って普通の中学三年生。
 普通じゃないのが、この年で婚約者フィアンセが居ること。
 私自身は、納得してないが……。
 だって、恋愛は自由にしたいと思ってるんだもん。
 束縛されるの好きじゃないし……。


 そんな思考の渦に揉まれながら、待ち合わせ場所の駅に辿り着く。

「おーい、亜耶。遅いよ。」
 クラスの子に言われて。
「ごめんごめん。出る直前で、アクシデントがあって遅れた。」
 と返してると。
「亜耶。後ろの人誰?」
 と姫依ちゃんに言われ、振り返ればそこには遥さんとお兄ちゃんの姿があった。お兄ちゃんは胸の前で手を合わせて私に頭を下げてる。
 多少の時間差があったのに追い付かれ、息一つ乱してないって……。
 絶句しながらも。
「えっと、お兄ちゃんの友達の……。」
「高橋遥。亜耶のフィアンセだ!」
 私が紹介しようとしたら、遮るように遥さんが誇らしげに自己紹介し出す。
 ちょ…ちょっと何を言い出すのよ!
 動揺し出す私の心の内。
 きっと笑みが固まってるだろうと思う。
「遥! 何を言い出すんだ!」
 お兄ちゃんも焦ってて、遥さんの腕を引くが、びくともしない。
 周りを見れば固まってる。
 もう、ダメだこれ。
 私は、最後の切り札を口にする事にする。
「何を言う出すんですか。私の友達なんですよ。遥さんとはもう口聞きません!」
 私の絶口宣言に項垂れる遥さん。
 そんな遥さんを無視して。
「時間がもったいないから、移動しよ。」
 と皆に声を掛ければ、我に反ったようで各々頷き、歩き出した。


「それにしても、驚いた。亜耶ちゃんにフィアンセが居るとは……。結構年上に見えたが……。」
 そう聞いてきたのは、的場くんだった。
「フィアンセは、冗談だよ。年はね、お兄ちゃんと十離れてるからね。」
 苦笑混じりで答える私。
「十って……、結構いい大人じゃん。」
「でも、カッコよかったよ。」
 女の子の見る視点は、違うみたいだ。
 男子からしたら、嫉妬まみれだろうが……。
「なぁ、亜耶。本当に高橋遥あのひととは婚約関係じゃないのか?」
 いつの間にか、隣に来ていた彼渡辺悠磨くんが声をかけてきた。
 私は、戸惑いながら。
「うん、違うよ。こんなお子さま相手にしないって。よく、揶揄われるから。」
 そう答えてた。
 悠磨くんは、遥さんのこと気になるのかな?
 それは、それで嬉しいかも……。
「それより、私悠磨くんに聞きたい箇所があるから、早く行こ。」
 と自分から悠磨くんの袖を引っ張る。
「わかったから、そんなに引っ張らないで……。」
 焦る悠磨くんをよそに、足を動かす。

 私は、悠磨くんが好き。
 優しくて、落ち着きがあり頼りがいのある人。
 そんな彼が、私の好きな人。


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