66 / 145
中学生と婚約解消
何気に一途…遥
しおりを挟む場所は変わって、披露宴会場。
一体、何人の招待客がいるんだ?
一番広い部屋だってのは、わかる。
入り口から、主役席まで結構な距離がある。
“鞠山財閥”ってだけで此処までとは……。
まあ、沢口もお嬢だから、仕方ないのか。
そう思いながら、自分の席に着く。
「よっ。久し振りだな、高橋。」
俺の右横に座る奴がいた。
俺は、視線だけを寄越して。
「あぁ。本当に久し振りだな、野中。」
そう答えた。
こいつは、高校からの付き合い。
生徒会も一緒にやった仲だ。
あの時は、会長が雅斗で俺が副会長、こいつが書記だったか?
何て、昔を思い出してる場合じゃない。
亜耶は、どこだ?
俺は、会場内を視線をさ迷わせるてる中。
「そういや、お前、まだフリーなのか?」
野中が、聞いてきた。
「今のところは、な。」
俺は、亜耶を探すのに必死で、それだけを口にした。
「じゃあ、俺の彼女の友達紹介するぜ。そいつ、お前の事どこかで見て、知り合いだって言ったら、紹介して欲しいって、ずっと言われててさぁ。一度会ってくれないか?」
何だ?
って言うか、そんなの知らん。
そういうの要らない。
「会う気無い。余計なお世話だ。俺は、彼女しか求めてないし……。」
俺は、野中を睨み付けた。
「ちょ……高橋、怖いからやめろ。」
と、タジログ奴ほっといて、亜耶探しを再開。
おっ、居た。
此処からだと後ろ姿だが……。
御大と父親に守られるように座ってる。
それも仕方ないのか……。
会社絡みの人達も居るから、二人の間で守る必要があるのか……。
もし、婚約解消されてなかったら、俺があそこに居れたのかも……。
したら、変な虫も寄り付かなかったんだろうなぁ……。
そんなことを想っていた。
「おい、高橋。話、聞いてるか?」
痛てーなと思ったら、野中が俺の耳を引っ張ってる。
悪いな。聞いてなかった。」
俺は、悪いとは思ってなかったが、そう口にしてた。
俺の中では、亜耶探しが優先だしな。
「だから、お前の想い人って、さぁ。」
訝しげに聞いてきた、野中に。
「ん?」
何が言いたい?
「ほら、お前、高校の時から言ってただろ? その後どうなったんだろうって……思ってな」
あぁ……。
そういやこいつには言った覚えあるなぁ……。
しかしよく覚えてたな。今、詮索されるとちょっと辛いが……。
「俺、想い人とは今距離を置かれてる。凄く可愛いから、変な奴にかっさわれないか、心配なんだよ(今現時点では奪われてるが……な)」
今日は、特に注目を集めるだろうが……。
この会場にいるってことは、言えないが……。
「ふ~ん。遊び相手の女でも紹介しようか?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
こいつ、下品になったな。
「それも要らない。俺、今忙しいから、相手してられない。」
そんなことが、御大に知れたら余計に亜耶に近づけないだろうが……。
「寂しい奴だな。」
「何とでも言え。」
俺は、心の中で亜耶がこっちを見てくれるように願っていた。
「招待客の中にはお前を狙ってる女どもが、こっちを見てるって言うのに……。」
野中の呟きが俺の耳に届く。
ん?
「イヤ、さっきから、お前の事をチラチラ見てるお嬢様方の視線が、あっちこっちから……な。」
野中が、苦笑を浮かべる。
ハハハ……。
笑えねぇ。
外見しか見てないお嬢様には、興味ないけど。
俺は、亜揶の事が気になって仕方ない。
他の奴なんて、目には入るはずもない。
俺の中じゃ、亜耶が一番なんだから……。
会社関係の人達も席に着きだした。
そして、御大の隣に座る亜耶の事で、話が持ちきりだった。
「あそこの少女が、会長のお気に入りの孫娘か?」
「可愛いだけだろ。」
「それが、違うらしいぞ。成績優秀な才女だそうだ。」
あぁ、確かに亜耶は頭も良い、それだけじゃない。
運動神経も良い、気配りのできる女の子だ。
「彼女を手に入れれば、鞠山財閥の恩恵に預かれるんじゃないか?」
何て声が、あちらこちらで上がっていた。
やめろ。
亜耶は、会社の道具じゃない!
そういう娘じゃないんだよ。
そう、大きい声で言いたい。
だが、今の俺にはそれができない。
なんと言うもどかしさ。
イライラとモヤモヤが入り交じる。
披露宴も滞りなく進んでいく。
俺のスピーチも無難に終わる。
両親への手紙を沢口が、朗読してる。
その間も俺は、亜耶から目を放さなかった。
今、この一瞬一瞬を目に焼き付けておきたかった。
大好きな亜耶の笑顔を片隅に焼き付けるために……。
「なぁ、高橋。お前の想い人って、あそこの少女なのか?」
唐突に野中が聞いてきた。
「まぁな」
俺は、短く答えた。
確信を突かれたからには、否定するつもりもない。
黙ってる方が、可笑しいと思い肯定した。
「確かに美少女だな。……で、何年越しの片想い?」
何年か……。
「8年……、9年目か……。」
「長いな」
野中の憐れんだ目が俺に向けられる。
そんな目で見なくても……。
これでも、一時期婚約してたんだとは、口が割けても言えない。
「敵が多いかもしれないが、まぁ頑張れ。」
他人事のように言う奴だが、応援してくれてることはわかった。
「……ありがとな。」
俺は、そう返していた。
披露宴も無事に終わり、最後にもう一度亜耶の姿を見ようとした。
……が、人並みが凄くてなかなか見つけられずにいた。
俺は、少し離れたスペースで、ゆっくりと辺りを見渡す。
居た。
距離はあったが、少しの間彼女の事を見つめていた。
亜耶。
絶対にもう一度お前の傍に行くから。
だから、誰のものにもならないでくれよ。
お前を迎えに行くから、それまで待っててくれ。
今の俺の内にある、切なる想い。
誰にも気付かれることない思いを抱え込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
俺様系和服社長の家庭教師になりました。
蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。
ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。
冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。
「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」
それから気づくと色の家庭教師になることに!?
期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、
俺様社長に翻弄される日々がスタートした。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します
縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。
大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。
だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。
そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。
☆最初の方は恋愛要素が少なめです。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる