ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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高校生編と再婚約の条件

始めての練習…亜耶

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  放課後。

「皆、帰るのちょっと待って。」
  龍哉君が、帰ろうとしてるクラスの人達の足を止めた。
「何だよ、龍哉。」
  クラスの皆が嫌そうな顔をするが。
「ん? 二週間後に球技大会があって、メンバーを決めてしまいたいんだよ。」
  の一言で、席に着く皆。

「亜耶ちゃん」
  龍哉君の声で、私も前に行き黒板に書き出した。

  球技大会、四種目と人数を書いて、バスケの欄には龍哉君の名前をテニスには自分の名前をバレーには梨花ちゃんの名前をそれからサッカーには、林元君の名前を書いた。
「で、今黒板に名前が書かれてるのは、俺たち二人が独断で決めたキャプテンな。」
  龍哉くんが淡々と話す。
「ちょっと、待って。鞠山さんや龍哉、相沢さんがキャプテンを務めるのは良いけど、何で俺なの?」
  って、声をあげた林元君。
「ん? あぁ。お前、中学の時サッカー部のキャプテンだたんだろ。それに人望も厚いし。このクラスの事把握してるお前なら出来るよ。」
  よく見てるなぁ、龍哉くん。
  林元君、サッカー部だったんだ。
「わかったよ。引き受ける」
  渋々ではあったが、誉められたのが嬉しかったみたい。
「で、この中で出たい種目に手を挙げろよ。順番に言うからな」
  龍哉くん、本当に仕切るの上手いな。
  私は、手が挙がる度に黒板に名前を書いていった。

「よし、決まったな。手間取らせて悪かった。解散な。」
  龍哉くんの言葉にゾロゾロと教室を出て行く。
「亜耶ちゃんも部活有るんだろ? 後はやっておくから行っていいよ。」
  どこまでも優しい龍哉くん。
「悪いから、最後までやるよ。それに部活はお互い様だと思うけど。」
  私がそう伝えると。
「そっ……。じゃあ、お願い。」
  それから、黒板に書いたメンバーを用紙に書き写した。


「書き終わった?」
  龍哉くんが、手元を覗き込んでくる。
「後、少し。」
  私は、淡々と書き進めた。
「よし、書けた。」
「用紙を出すのは明日でも良いだろうから、黒板を消したら部活行こう。」
「うん。」
  二人で黒板を消して、それぞれの部活に向かった。



  今日からマネージャーの仕事じゃなくて、リレーの選手としての参加となる。
  他の選手の足を引っ張らなきゃ良いけど……。
  走るのが嫌いって訳じゃないけど……ね。

「鞠山さん、遅いよ。」
  グランドに出ると先輩にそう言われて。
「すみません。」
  頭を下げた。
「アップ、終わったら声を掛けて。タイム録るから。」
「はい。」
  田代先輩がそう言い残し、他の選手に声を掛けにいく。
  私は、柔軟をして身体を徐々に解していく。
  怪我したくないしね。
  身体が程よく解れたところに。
「田代先輩。準備できました。」
  と声を掛けた。


  一人で走るってもタイムも上がらないだろうからって、先輩が同学年の子を付けてくれた。
「宜しくお願いします。岡本さん。」
  一緒に走ってくれる子に、そう声をかけた。
「エッ……。あっ、こちらこそお願いします。鞠山さん。」
  にっこり微笑む彼女に私も笑顔で返した。

  二人でスタートラインに並んで、準備する。
「位置について。」
  この緊張感が好き。
「よーい。」
  ピッー。
  笛の音と同時に走り出した。

  風になれる瞬間。
  ほんの数秒間だけど、風を感じが妙にワクワクさせる。
  大好きな時間。
  自分との戦い。
  他の事なんて気にならない。
  ただ、無心に走り抜けた。

  ハァ、気持ちよかった。
  久し振りに何も考えず走れた気がするよ。
  何て思ってたんだけど……。
「えっ、えーーー!」
  突然、先輩の雄叫び。
  ん?
  何?
「鞠山さん。マネージャー辞めて、選手にならない?」
  田代先輩が、私の前に来たと思ったら、両肩を持ってユサユサと揺する。
  ガクガクと頭が揺れ、目が回る。
「先輩。……気持ち……悪い……です。」
  私の言葉に。
「えっ、あっごめん。」
  って、慌てて手を放してくれた。
  あー、頭がクラクラする。
「まぁ、取り合えず。大会まで選手として宜しくね。」
  先輩が、笑顔で言うから。
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
  って、答えていた。




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