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本編
22話 やきもち
しおりを挟むその後、私は裏方に撤していた。
飲み物が足らなくなり、私は近くのコンビニに出ようとしてた。
他のメンバーは、サンタの格好のままなので外に行きにくいだろうと思い、自分からすすんで行く。
「詩織。その格好で外に行くと寒いよ。」
そう言って、里沙がコートを差し出してきた。
「ありがとう。」
私は、それを受け取って着ると、体育館を出て買い出しに行く。
ジュースにお茶、お水をかごに入れる。
ニリツトルのペットボトルを十二本分。
領収書を書いてもらい、戻ろうと歩き出す。
流石に重いなぁ。
と思っていたら、いきなり軽くなる。
あれ?
私は、顔をあげると護が軽々と荷物を持っていた。
「女の子が、こんな重い物持って……。買い出しに行くなら、声を掛けてくれれば良いのに……。」
「だって、楽しんでもらいたかったから……。」
「あのなぁ。お前が居なかったら、楽しめないだろうが……。」
護が、呆れた顔をして言う。
「だって、今日の私は、ホスト役だよ。一緒に居るわけにはいかないじゃん」
本日はおもてなしをする方だから、ね。
「わかった。でも、帰りは一緒に帰るからな」
「うん」
学校まで、護と手を繋いで戻った。
時計の針が、八時を指そうとしていた。
私は、再びマイクを持って、ステージに上がった。
「皆さん。今宵のパーティーは、楽しんでもらえましたか? 三年生の皆さんは、息抜き出来たでしょうか? また、一・二年生の皆さんも楽しめたでしょうか? クリスマスは、まだ終わってはいませんが、本日のパーティーは、これにてお開きにさせて頂きます。皆様、お気を付けてお帰りください。」
私はそう告げて、お辞儀をしステージを下りて、出口に向かう。
出口の所で、役員は並んで見送る。
それぞれの役員が、お礼の言葉を掛けていく。
「ありがとうございました。お気を付けてお帰りください。」
私は、笑顔で挨拶する。
「生徒会長。この後、一緒に何処か行かない?」
って声が掛かるけど。
「ごめんなさい。私達、まだやることがあるので、行けないです。」
やんわりと断ってる横を護とちひろさんの姿が、目に入ってきた。
ちひろさんが、これみよがしに護の腕に絡み付いている。
私と目が合うと、ちひろさんがニヤツいてる。
そして。
「玉城君は、返して貰うわよ。」
って、小声で私に告げる。
ハァ~。
今日は、仕方ないか……。
私は、肩を落とした。
本当は、今すぐ言い返したかった。
でも、こんな所で、大声を出すのは、お門違いだ。
私は、自分の気持ちを押し殺しながら、笑顔を絶やさなかった。
生徒が居なくなった体育館の後片付けを始めた。
黙々と片付けをこなしていく私達に優兄が。
「今日は、楽しかった。これからも頑張れよ。」
って、言葉に私達は、笑顔になる。
よかった。
付け焼き刃でやったから、不安だったんだよね。
「優兄、こちらこそありがとう。忙しいのに演奏してくれて。」
私も改めてお礼を言う。
「こんな楽しい事に参加させてもらえない方が、悲しい。」
「そう言ってもらえて、よかった」
「じゃあ、お先にって言いたいけど、里沙ちゃん、外で待ってるから。」
優兄は、里沙に手を振りながら言う。
「里沙にベタ惚れだね。」
私は、里沙に耳打ちする。
里沙の顔が赤くなる。
可愛いなぁ。
粗方片付いたところで。
「反省会しようか。」
私が言うと頷く。
「今日のイベントの感想、どう思った?」
「皆が楽しそうに踊ってるのを見て安心した。」
「意外と、皆食べるんだなと思った。」
「そうだね。追加で飲み物買いに行った分も無くなってたもんね。」
「初めてのイベントだったけど、何処か直した方がいいところとか、こういうところが良かったってこと、何かある?」
「そうだな。セッティングの細心部のチェックの甘さかな。」
「後、連携が取れていなかったよね。」
「そうだね。密に連絡取れなかったよね。」
「今後の連携の取り方を考えないとね。」
「後は、何かある?」
一同は、首を横に振る。
「何か思い付いた事があったら、随時言って。今日は、遅いので解散ね。」
私は、皆を見渡し。
「お疲れ様でした。」
最後に照明を落として、出口に向かう。
暗闇なので、目が慣れてなくて壁伝えで歩く。
ハァ~。
やっと、終わった。
体育館を出て、鍵を閉める。
他の入り口の鍵もかかってるか再度確認する。
職員室に行こうとして、自分の持ち物を体育館に置きっぱなしなのに気付いて、再び戻ることに。
鍵を開けて、中に入る。
暗闇にも馴れて、ステージまでで行き、袖に置いていた紙袋を見つけ、それを持って再び出口に……。
その時、目の端に人影見えた。
エッ。
誰?
怖い……。
動けずにいた私を誰かが、抱き締めてきた。
「詩織、心配したよ。何時までたっても出てこないから……。」
その声を聞き、安心して体を委ねる。
振り返らなくても、わかる。
大好きな人だもの。
「ごめんね。片付けと反省会してたんだ。今日しておかないと忘れてしまいそうだったから……。」
「本当に? 誰かに誘われてたとかじゃないのか?」
護の心配そうな声。
「誘われたけど、断ったよ。って言うか、怖い兄達が居るし、ね。ただ、私ったら体育館を閉めてから、自分の持ち物を忘れて取りに戻ったて来たから、時間喰っただけだよ。」
「そっか……。」
護の安心した声。
「ほら、早く閉めて帰るぞ。」
私は護に促されて、体育館を出る。
鍵を閉めると職員室に鍵を返す、先生にお礼を言って出る。
「お前、本当に徹底してるな。」
護が、苦笑する。
そうかな?
「さぁ、帰るか。明日の待ち合わせの時間も決めないとな。」
護が、さりげなく手を繋いできた。
「そうだね。」
明日は、護と久し振りのデート。
って、さっきの聞かないと……。
「護、さっきちひろさんと出てきたよね。」
「あぁ。それがどうかしたか?」
詫び入る事もなく "どうかしたか" って、それはないでしょ。
私が、黙り込むと。
「何? 気になるのか?」
私は、黙って頷く。
「帰り際に掴まっただけだ。」
淡々と答える護。
「本当にそれだけ?」
「疑ってるのか?」
「だって、ちひろさん帰り際に私に“玉城君は返して貰うわよ“って…」
私が、不安げに言うと。
「確かにちひろに誘われたが、断ったよ。オレが今ここに居ることで立証されるだろ。」
真顔で返される。
「嬉しそうにしてたよね。」
私の言葉に。
「それって、妬きもちか?」
って、嬉しそうに聞いてくる。
「……」
私は、何も言えなくなる。
「ハァ、全く……。ちひろとは、門の所で別れた。詩織が居るのに誘いに乗るわけ無いだろ。」
呆れながら私の頭を撫でる。
「クラスの奴等にも誘われた。でも、先約があるからって、断った。」
護が、耳元で言う。
「ありがとう。」
嬉しくて、お礼を言ってしまった。
「当たり前だろ。こんな可愛い彼女を一人で帰すわけないじゃん。それに、オレ自身も詩織と一緒に居たかったしな。」
照れ笑いする護。
私は、護に抱きつく。
「何?」
護の驚いた顔。
「嬉しいな。こんなに想われているんだなって、改めて思った。」
「ハハハ。それより、その格好寒くないか?」
「大丈夫だよ。護に包まれてるから、暖かいよ。」
「それならいいんだが……。」
私は、護の顔を覗き込む。
「護は、心配性なんだから……。」
「仕方ないだろ。オレは、お前が一番大切なんだから。」
真顔で答える護に、私の方が照れる。
「顔、赤いぞ。」
「誰がさせたんですか、誰が。」
私は、膨れながらそっぽを向く。
「そんな顔するなよ。可愛すぎて、食べたくなるだろうが……。」
護が、耳元で囁く。
その言葉で、更に熱くなる頬。
「あれ、さっきよりも顔が赤いぞ。」
護が、頬に触れてくる。
護の手が、冷たくて気持ちいい。
私は、その手に自分の手を重ねた。
「詩織。」
ゆっくりと護の顔が近付いてきて、唇に軽いキスが落とされる。
「詩織、愛してる。」
甘い囁きと共に、唇を塞がれた。
「明日、九時半に駅で待ち合わせな。」
そう言って、護は帰って行く。
私は、その背中を見送った。
「ただいま」
家に入ると、何時もなら怒濤のようにやって来る兄達が来ない。
何で?
私は、リビングに顔を出すが、兄達の姿は、どこにもなかった。
「お母さん、兄達は?」
リビングで寛いでいた、お母さんに聞いてみる。
「隆弥はバイト、勝弥は彼女とデート。優基は、部屋で勉強してるよ。」
と返ってきた。
そっか。
出掛けてるなら、煩く無いはずだ。
私は、自室に行く。
机の上に置いておいた作りかけのマフラーを仕上げる為に、編み出した。
護、喜んでくれるかな?
そう思いながら、一生懸命編み上げた。
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