あなたの傍に……

麻沙綺

文字の大きさ
30 / 47
本編

29話 元彼

しおりを挟む


  バイトを終えて、外に出ると真っ暗だった。
「水沢?」
  不意に声を掛けられて、振り向くと浅井君が居た。

「やっぱり、水沢だー!」
  って、大声で言う。
「久し振りだな。」
「そうだね! 中学卒業してから、会ってないもんね」
「そうそう。こんな時間に何やってるんだ?」
「私? バイト帰りだよ。そういう、浅井君は?」
「俺? 俺は、塾の帰り。しかし、お前二年会わないうちに綺麗になったなぁ。」
  目を細めて言う浅井君に。
「浅井君こそ、カッコ良くなったんじゃない。」
  真顔で返す。
「そんな、真顔で言われたら、照れるだろうが……。」
  苦笑する浅井君。
「あのさ……。」
「何?」
「俺たち、元に戻らないか?」
  エッ……。
  何で、今更。
「俺さぁ。お前と別れてから、ずーっとお前の事しか考えられなくてさ。いつも、頭の片隅にあるんだ。だから……。」
  言いづらそうに言う浅井君に。
「ごめん。私、彼氏居るから……。」
「マジかよ。あの兄ちゃんズも認めてるんかよ……。」
「そうだね」
  嘘は、付いてないよね。
  半分は、認めてくれてるんだもんね。
「やっぱり、あの時、別れるんじゃなかった。」
  小声で呟く彼。
  エッ………。

「高校も別々だから、不安に押し潰されて、別れる選択したけど、あのまま付き合っておけばよかった。」
「ちょっと。私達、別々の道を歩む事に決めたから、別れたんでしょ? 浅井君も納得してたんじゃないの?」
「違う。本当は、別れたくなかった。水沢の事、好きだった。でも、高校も違うし、会う時間を作れないんじゃないかって思って、渋々別れたんだよ」
「エーーーーッ」
  私は、驚くしかない。
「そんなに驚く事かよ。」
  渋い顔付きで、私を見てくる彼に。
「驚くよ。だって、私、自分に納得いくように落ち着かせてたんだからね。」
  あの時、急に別れを切り出されて納得できなかったけどそれでも、何とか折り合いを着けたんだよね。
「じゃあ、元の鞘に戻らねぇか?」
  真顔で、浅井君は言ってくるが……。
「ごめん。私にとっては、浅井君は過去の人になってるから。今の彼氏が、私にとって、大切な人なの。だからごめんなさい。」
  私は、浅井君に向かって頭を下げる。
「じゃあ、その彼氏に会わせてくれ。そしたら、俺も諦める。」
  エッ。
「それも、ちょっと無理、かな……。」
「嘘をついてるんじゃないのか?」
  疑いの目を向けられる。
「嘘なんて、ついていない! ただ、彼、忙しいから……。」
  これ以上彼に迷惑掛けれないよ。
「そんな事言って、俺と付き合いたくないから言ってるんだろ」
「違う! 私、嘘言ってるんじゃない。事情があって、今会えないだけなの!」
  私が、語尾を強めに言った時だった。
「詩織? お前、店の前で待ってろって言っただろうが……。」
  優兄の声が聞こえた。
「あれ? 今日は、勝兄が迎えに来てくれるんじゃなかったの?」
  私が言うと。
「勝兄、急用が出来て、俺が来た。それより、何大声だしてんだ?」
  優兄が、呑気に聞いてきた。
「エッと、その……。」
  私が言い淀んでると。
「お久し振りです、優基さん」
  浅井君が、優兄に頭を下げる。
「浅井か? 本当に久し振りだな。で、何の話をしてたんだ?」
「率直に聞きます。水沢に彼氏、居るんですか?」
  浅井君が、優兄に聞く。
  私は、優兄を見る。
「ああ、居るよ。俺の大親友だ。ただ、今はちょっと、事情があって、な。そうだ、お前が信じられないなら、俺が会わせてやろうか?」
  優兄が、提案する。
「本当ですか?」
「あいつに会えば、お前も納得するんだろ。ちょっと待ってな。」
  優兄が、携帯を取り出して、電話を掛ける。
「もしもし、護。お前にたのみたい事があるんだが、明日、時間あるか?」
  優兄が、浅井君を見る。
「じゃあ、明日の午後三時に詩織のバイト先な。」
  それだけ言って、電話を切った。
「……ということで、浅井はここで俺と午後二時五十分に待ち合わせな」
  優兄が、浅井君に言い放つ。
「はい!」
  浅井君が、元気の良い返事をする。
「じゃあ、明日な。」
  そう言って、優兄が私の手首を掴んで歩き出した。


「詩織。明日は、バイト休みだったよな」
  突然優兄が言う。
「そうだよ」
  不思議に思いながら答える。
「お前も来る?」
  エッ……。
「会いたいんだろ?」
「会いたいけど、隆兄との約束を破るわけにはいかないよ。それに私は、護を信じてるから、大丈夫。」
  私は、笑顔で優兄に言う。
「そっか……。わかった。男三人で、会ってくるわ」
  優兄が、優しい口調で言う。
「しかし、詩織も強くなったな。」
  突然優兄が言い出した。
「強くないよ。信じれる人が居るから、強くなるんだよ。それに、今は、護も頑張ってるんだから、私も何かをしなくちゃって、逆に焦ってるんだと思う。」
  好きな人が居るから頑張れるんだよ。
「そうだな。俺も、里沙ちゃんの為に頑張るか。」
  優兄が呟いた。
  里沙の為に、か……。
  優兄も、大分変わったな。
「ほら、さっさと帰るぞ。」
  私達は、家路へと急いだ。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...