あなたの傍に……

麻沙綺

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本編

34話 第一条件クリア

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  あれから、月日が流れ、今日は護の大学合格発表の日。

  私は、学校に来て、授業を受けてはいるが、朝から落ち着かない。

  何時、護からメールが入ってもいいように携帯(隆兄から返してもらいました)は、マナーモードにしてある。

  その時だった。

  机の中に閉まっている携帯がメール着信のランプを点滅させた。
  私は、授業中にも関わらず、携帯を開く。


  “詩織へ
   無事に合格した。
   もう一度、告白したいから、
   授業が終わったら、校舎裏に来てくれ

   護“


  ヤッター!!
  思わずガッツポーズしてしまった。
  よかった、合格できて……。

  私は、喜びと安心感が入り交じっていた。


   “護へ
    合格おめでとう。
    授業が終わったら、直ぐに行くね

    詩織“


  と打ち返した。

  その後は、授業に専念した。


  放課後。
「里沙。悪いけど、生徒会に行くの少し遅くなるから。」
  そう言って、自分の鞄を持って、里沙に告げてから、校舎裏へ向かった。



  校舎裏では、護が壁に凭れ待っていた。
「護ー!」
  私は、護に駆け寄る。
「詩織。」
  護が、笑顔を向けてくれる。
「護。合格おめでとう。」
  私が言うと。
「ありがとう。」
  その後の沈黙が、長く感じた。

  一杯、話したい事がある筈なのに、何から話したらいいのかわからない。
「詩織……。」
「うん…。」
「もう一度、告白させてくれるか?」
「う、うん…。」
  本の一瞬の沈黙。

「約一年前に君に一目惚れして、告白して五ヶ月が過ぎたけど、詩織と居るだけでオレは、幸せだ。これからも、オレに傍に居てください」
  護が真剣な顔付きで、言葉を選びながら言ってくれる。
「うん。こんな私だけど、傍に居させてくださ
い。」
  私が答えると、護が抱き締めてきた。
「もう、絶対に離さないから……。」
  護が、断言する様に私の耳元で囁く。
「私も……。」
  二人の唇が次第に近付き、キスを交わす。

  私は、護の背中に自然と腕を回していた。
  大好きな護。
  一杯、回り道してきた気がする。
「護。そろそろ、私、行かないと行けないから。」
「そうか。じゃあ、オレ待ってるから、終わったら、メールして。」
「うん。」
  私は、名残惜しいけど、護の腕から離れて、生徒会室に向かった。



「遅くなってごめんね」
  私は、生徒会室のドアを開けて中に入ると、注目を浴びた。
「何? どうかしたの?」
  私が聞くと。
「それがさぁ……。」
  言いづらそうな里沙。
「他校との交流試合が入ってて、生徒会での応援をお願いしたいって言ってきたの……。」
  柚樹ちゃんが、里沙の言葉をついだ。
「それで、その試合は何時?」
「明日の土曜日の九時から」
  明日なの?
「出れるのは?」
  全員の手が上がる。
「じゃあ、全員参加で。友達で時間がある人を誘って、来てくれるかな。」
「OK。」
「……で、その試合は、何部なの?」
「サッカー部だよ。」
  よりにもよって、サッカー部か……。
「どうしたの、詩織?」
「ううん。何でもないよ。さてと、仕事しようかな。」
  私は、自分に与えられてる仕事を始めた。



「ちょっと、見回り行って来るね」
  そう言って、私はメモ帳とペンを持って、席を立つ。
「俺も、一緒に行くよ。」
  佐久間君が言い出す。
「大丈夫だよ。一人でやれるから。」
「二人で手分けしてやった方が早いだろ。」
  佐久間君は、一歩も引かない。
「じゃあ、お願いします。」
  って、言うしかなくなってしまった。

  私達は、生徒会室を出た。
「俺、三階から回ってくるから。」
  そう言って、足早に行ってしまう。

  私は、一階から見回ることにした。


  各教室を見回って行く。
  教室に生徒が残っていないか?
  窓の戸締まりがきちんとしてあるか?
  確認作業を繰り返していく。

  毎日はやらないんだけど、金曜日には、確実に行うことにしてる。
  今日も、何事もなく一日過ぎて行く。
  私は、見回りを終えて、生徒会室に戻る。
「詩織。そろそろ帰るね。」
  里沙が、他のメンバーと共に出て行った。
「あれ、佐久間君は?」
「まだ戻ってきてないよ。」
  私の問いかけに柚樹ちゃんが答える。
「そっか……。明日、九時にお願いね。」
  私は、再度お願いした。

  佐久間君が戻るまでに私は、他の雑用を済ませることにした。



  そうだ。
  明日は、バレンタインだった。
  護にどんなチョコ、渡そうかな。
  何て、考えていた。
「水沢、悪いな。」
  佐久間君が、生徒会室に入ってくる。
「いいよ。帰ろう。」
  私が言うと。
「一緒に帰ってもいいのか?」
  真顔で聞いて来る佐久間君。
「ごめん。待ってる人が居るから……。」
  私は、言葉を濁す。
「ほら、出て……。」
  私が、生徒会室の鍵を持って立ち上がると、背後から抱き締められた。
「ちょっと、何するの!」
  私は、声を荒げる。
「水沢。お前は、アイツのものなのか?」
  佐久間君が、切な気に聞いてくる。
  それに対しての言葉はでなかった。
「その無言は、否定してると見なしていいのか?」
  耳元で、囁くように言う。
  何て、答えたらいいのだろう?
  護が、第一条件をクリアした時点で、私は彼のものになりつつあるのは、確かだ。
  でも、婚約の事は、今言う事じゃない。
  考えてるうちに、腕の力が強くなってるのを感じて。
「ごめんね。私は、彼しか、考えられないから……。」
  今の正直な気持ちを告げる。
「何でだよ。俺、ずーっとお前の事を見てきたのに……。アイツに横から奪われるなんて……。」
  項垂れる声。
「それって、違うよ……ね。私が、ただ彼の事を好きになっただけだよ。」
「……俺が、入る隙は…無いのか……。」
  辛そうな声に対して。
「そうだね。私は、彼しか見てないから…。って言うか、彼しか居ないから……。」
「……。それでも、俺は諦めないから……。」
  そう言って、佐久間君は離れていった。

  私は、気が抜けて、その場に座り込んでしまった。











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