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2章 父と娘と一触触発
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「みなさーん、というか、井尻さーん、ちょっといいですかー」
「え、高瀬さん?」
開けられた扉の向こうから現れたのは、驚きびっくり、なんとまさかの高瀬さんだった。
ここにきて、今度は高瀬さんが拓弥に用あるの……⁉ ちょっとこの数分の間にいろいろ起きすぎじゃね⁉
びっくりして思わず名前を呼んだ俺にむかって、「はい、高瀬です」と高瀬さんがにっこりと笑い返してくる。
そうして、ふわふわと茶髪のセミロング揺らしながら部屋の中に入ってきた。
「おれ、ですか?」
呼ばれた拓弥が、戸惑いがちに返事をした。
「えっと、どうしましたか。おれ、ちょっと今急いでて、あんまり時間が……」
「井尻さんに、可愛いお客さんがお越しですよ」
「へ、可愛いお客さんって、」
「はい、入ってどうぞ」
おいでおいで、というように高瀬さんが開けっ放しにしていた扉の方へ振り返り、手招きをした。
扉の先、そこには見慣れたRe:creationの廊下が広がっている。黒と白の2色で彩られた、クールでお洒落なデザインの廊下だ。
そんな廊下にひょっこりと、1人の少女が現れた。
どうやら今まで壁に隠れていたらしい。舞台の袖から飛び出してくるように、開けっ放しのドアの向こうに現れた見知らぬ少女に、また場があっけに取られる。
年頃は6、7歳ぐらいといったところだろうか。高瀬さんの腰に届くか届かないか辺りの、まだまだ伸びしろたっぷりの小さな身長。長い焦げ茶色の髪は後ろで一括りにされており、綺麗にまとめられたサイドからは小さな耳が堂々と姿を現している。全体的にキリッとした、凛々しい雰囲気がある子だ。
白のシャツにくすんだピンク色のジャンパースカートという、可愛いけどどこか大人っぽくも感じられるカラーの服装も、彼女の凛々しさを強調している要因かもしれない。
しかし、そんな凛々しさに反してどこか柔らかな印象があるのも事実だった。理由はたぶんきっと、その顔立ちのせいだろう。
ほんのり緩やかにたれた目が特徴的な丸顔。
キリッとしながらも、どこか優しい雰囲気を携えているその顔立ちは、なんだかすぐ傍にいる友人の顔に似ている気がした。
(いや、『気がする』なんてレベルじゃない)
そっくりだ。どこをどう見ても。そこにいる拓弥に――。
まさか、と思った次の瞬間、少女が嬉しそうにその顔を破顔させた。
そうして、スタジオ内に駆け込んできたかと思うと、まるでそれ以外の物など目に入っていないと言わんばかりの猪突猛進っぷりで、拓弥の方へ向かっていった。
「パパッ!」
「「「パパッ⁉」」」
子どもの言葉に驚いた俺・優作・たかのっぽくんの3人の口から、一斉に驚愕の声が飛び出す。
同時に、3人の顔がこれまた一斉に、拓弥と少女の方へ向けられる。
パパって事は、この子はやっぱり……⁉
「き、きらり、どうしてここに⁉」
拓弥が自分のもとに飛び込んできた少女を抱きしめる。
勢いを受け止めきれなかったのか、その身体がぐらりと揺れ、慌てて重心を支えるように、片足が1步後ろにさがる。
戸惑い、驚愕、困惑。
予想外の事態の連続に、混乱を極めた空気が俺達4人の間を支配する。
だが、そんな周囲の者達の動揺もなんのその。事の原因である少女は無邪気に笑いながら、自分に突き刺さる視線を気にする様子もなく、満足げに父親の腰に抱きついたのだった。
「え、高瀬さん?」
開けられた扉の向こうから現れたのは、驚きびっくり、なんとまさかの高瀬さんだった。
ここにきて、今度は高瀬さんが拓弥に用あるの……⁉ ちょっとこの数分の間にいろいろ起きすぎじゃね⁉
びっくりして思わず名前を呼んだ俺にむかって、「はい、高瀬です」と高瀬さんがにっこりと笑い返してくる。
そうして、ふわふわと茶髪のセミロング揺らしながら部屋の中に入ってきた。
「おれ、ですか?」
呼ばれた拓弥が、戸惑いがちに返事をした。
「えっと、どうしましたか。おれ、ちょっと今急いでて、あんまり時間が……」
「井尻さんに、可愛いお客さんがお越しですよ」
「へ、可愛いお客さんって、」
「はい、入ってどうぞ」
おいでおいで、というように高瀬さんが開けっ放しにしていた扉の方へ振り返り、手招きをした。
扉の先、そこには見慣れたRe:creationの廊下が広がっている。黒と白の2色で彩られた、クールでお洒落なデザインの廊下だ。
そんな廊下にひょっこりと、1人の少女が現れた。
どうやら今まで壁に隠れていたらしい。舞台の袖から飛び出してくるように、開けっ放しのドアの向こうに現れた見知らぬ少女に、また場があっけに取られる。
年頃は6、7歳ぐらいといったところだろうか。高瀬さんの腰に届くか届かないか辺りの、まだまだ伸びしろたっぷりの小さな身長。長い焦げ茶色の髪は後ろで一括りにされており、綺麗にまとめられたサイドからは小さな耳が堂々と姿を現している。全体的にキリッとした、凛々しい雰囲気がある子だ。
白のシャツにくすんだピンク色のジャンパースカートという、可愛いけどどこか大人っぽくも感じられるカラーの服装も、彼女の凛々しさを強調している要因かもしれない。
しかし、そんな凛々しさに反してどこか柔らかな印象があるのも事実だった。理由はたぶんきっと、その顔立ちのせいだろう。
ほんのり緩やかにたれた目が特徴的な丸顔。
キリッとしながらも、どこか優しい雰囲気を携えているその顔立ちは、なんだかすぐ傍にいる友人の顔に似ている気がした。
(いや、『気がする』なんてレベルじゃない)
そっくりだ。どこをどう見ても。そこにいる拓弥に――。
まさか、と思った次の瞬間、少女が嬉しそうにその顔を破顔させた。
そうして、スタジオ内に駆け込んできたかと思うと、まるでそれ以外の物など目に入っていないと言わんばかりの猪突猛進っぷりで、拓弥の方へ向かっていった。
「パパッ!」
「「「パパッ⁉」」」
子どもの言葉に驚いた俺・優作・たかのっぽくんの3人の口から、一斉に驚愕の声が飛び出す。
同時に、3人の顔がこれまた一斉に、拓弥と少女の方へ向けられる。
パパって事は、この子はやっぱり……⁉
「き、きらり、どうしてここに⁉」
拓弥が自分のもとに飛び込んできた少女を抱きしめる。
勢いを受け止めきれなかったのか、その身体がぐらりと揺れ、慌てて重心を支えるように、片足が1步後ろにさがる。
戸惑い、驚愕、困惑。
予想外の事態の連続に、混乱を極めた空気が俺達4人の間を支配する。
だが、そんな周囲の者達の動揺もなんのその。事の原因である少女は無邪気に笑いながら、自分に突き刺さる視線を気にする様子もなく、満足げに父親の腰に抱きついたのだった。
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