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2章 父と娘と一触触発
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「お、王子さま……!」
「え」
「やだー! かっこいー! 王子さまみたーい‼」
ビュンっ‼ と猛風の如く勢いで、きらりちゃんがたかのっぽくんの方へ詰め寄った。
いや、如くじゃねぇな。完全に猛風だったな、今の。
残り香ならぬ残り風が、ビュウンッて、こっちの足元にぶつかってきたもん。
は、早業過ぎる……。
「わーっ! すごい、おはな高い! がいこくの人みたい! かみの毛もきれい! まつげも金いろだわ! 背もパパよりずーっとずっと高くてすごいわ! アイドルの宮くんみたーいっ!」
「あ、アイド、み……?」
「チャート常連の人気男アイドルグループのメンバーだな」
ぐるぐると己の周りを回りながらはしゃぐ子どもに気圧され、オロオロと立ち往生しているたかのっぽくんに、優作がさらりと返した。「確か、近年デビューした『プリンス』がモチーフの王道派アイドルグループだったはずだぜ」と腕を組みながら、さらに説明を補足する。
優作の奴、アイドルソングも聴いてんのか。意外過ぎる。
それとも、優作の事だから一応チャートの常連は全部チェックしてるって感じなのか? どういう曲が流行ってるのか、ウケるのか知っておこうみたいな。
普段つべこべ言うタイプのくせに、こういうところはちゃっかり真面目にやってんだから、意外と努力家なんだよな、コイツ。
でも、努力家なゴリラさんには悪いけど、今返すべき言葉はそれじゃないです。
たぶんきっと、いや、絶対に。
「王子さま、何さい⁉ すきな食べものはなんですか⁉ どこの国の人ですかーっ⁉」
「あ、え、えと、歳はその、今年で21になりま、す……?」
キラキラ……、というには、あまりにもギラつきすぎている目と共に、きらりちゃんが背伸びをしながらたかのっぽくんに迫っていく。
たとえるなら、美味しそうな獲物を見つけた肉食獣みたいな興奮具合だ。迫られたたかのっぽくんの目が、混乱からぐるぐるお目々になりかけている。
なんか、こころなしか、たかのっぽくんが小動物か何かに見えてきたぞ。
蛇に睨まれた蛙ならぬ、肉食獣に狙われた小動物。たかのっぽくんの方が幾分も背があるはずなのに、完全に圧で負けちゃってるよ、これ。
「きらりっ!」と拓弥が悲鳴にも似た声音で、娘の名を呼んだ。
そうして顔を青ざめさせながら、たかのっぽくんからきらりちゃんを引き離した。
「こらっ、そんなに勢いよく行ったら相手を驚かせちゃうだろっ⁉ うちの娘がごめんね、たかのっぽくんっ。無理して答えなくていいからね⁉」
「は、はあ……」
「えー、つまんなーい!」
「せっかくイケメンと"おちかづき"になれるとこだったのにー」と、自分を捕まえる父親の腕の中で唇を突き出してブーたれる、きらりちゃん。
そんな娘の様子を前に、拓弥が疲れた表情で「そんな言葉、どこで覚えたてきたの……」とこぼす。
(な、なんか、ものすんごいパワフルな子だなぁ~)
どうやら、父親似なのは顔だけだったらしい。
そういえば、前に拓弥が、元奥さんの方は気が強めだって言ってたっけ。なるほど、外見は父親似で、性格は母親似ってか。なんて綺麗な遺伝子分割。見事すぎる。
(まぁ、通学用に使ってるICカードでここまで1人で来れちゃったって時点で、行動力のある子だなぁとは思いましたけどね)
そもそも、通学用のICカードを使うという発想に至った事が凄い。
きらりちゃんって、結構頭がいいのかもしれないな。小学生で電車通学してるって事は、お受験ありの私立に通ってる可能性が高そうだし。行動力と賢さの両方を兼ね備えた子とか、将来有望過ぎるだろ。
「まっ、なんにせよ、娘ちゃんが見つかってよかったじゃねぇの」
カオスと化す場をまとめるように、優作が口を開いた。
一見頼りがいがある発言。だがしかし、発言者の顔に浮かぶ笑みはニヤついている。どうやら、自分の娘に翻弄される幼なじみの姿が面白くて仕方ないらしい。
前言撤回。
このゴリラ、やっぱり悪いゴリラだわ。真面目だけど、根がクソガキすぎる。
優作と目があった途端、拓弥がなんともいえない微妙な表情を顔に浮かべた。優作の本音に気づいたのだろう。
が、心配をかけてしまった手前、強くは言えないらしい。
小さくため息をこぼすと、「まぁ、ね」と諦めたように言返した。
「にしてもきらりちゃん、パパに会いに来たとかって言ってたけどよ、よくパパがここにいるってわかったな。ふつうはさ、パパの家に行こうとかって思うんじゃねぇの」
優作がきらりちゃんを見ながら尋ねる。「あ、それは俺も思った」と、思わず俺も優作の疑問に同意する。
「え」
「やだー! かっこいー! 王子さまみたーい‼」
ビュンっ‼ と猛風の如く勢いで、きらりちゃんがたかのっぽくんの方へ詰め寄った。
いや、如くじゃねぇな。完全に猛風だったな、今の。
残り香ならぬ残り風が、ビュウンッて、こっちの足元にぶつかってきたもん。
は、早業過ぎる……。
「わーっ! すごい、おはな高い! がいこくの人みたい! かみの毛もきれい! まつげも金いろだわ! 背もパパよりずーっとずっと高くてすごいわ! アイドルの宮くんみたーいっ!」
「あ、アイド、み……?」
「チャート常連の人気男アイドルグループのメンバーだな」
ぐるぐると己の周りを回りながらはしゃぐ子どもに気圧され、オロオロと立ち往生しているたかのっぽくんに、優作がさらりと返した。「確か、近年デビューした『プリンス』がモチーフの王道派アイドルグループだったはずだぜ」と腕を組みながら、さらに説明を補足する。
優作の奴、アイドルソングも聴いてんのか。意外過ぎる。
それとも、優作の事だから一応チャートの常連は全部チェックしてるって感じなのか? どういう曲が流行ってるのか、ウケるのか知っておこうみたいな。
普段つべこべ言うタイプのくせに、こういうところはちゃっかり真面目にやってんだから、意外と努力家なんだよな、コイツ。
でも、努力家なゴリラさんには悪いけど、今返すべき言葉はそれじゃないです。
たぶんきっと、いや、絶対に。
「王子さま、何さい⁉ すきな食べものはなんですか⁉ どこの国の人ですかーっ⁉」
「あ、え、えと、歳はその、今年で21になりま、す……?」
キラキラ……、というには、あまりにもギラつきすぎている目と共に、きらりちゃんが背伸びをしながらたかのっぽくんに迫っていく。
たとえるなら、美味しそうな獲物を見つけた肉食獣みたいな興奮具合だ。迫られたたかのっぽくんの目が、混乱からぐるぐるお目々になりかけている。
なんか、こころなしか、たかのっぽくんが小動物か何かに見えてきたぞ。
蛇に睨まれた蛙ならぬ、肉食獣に狙われた小動物。たかのっぽくんの方が幾分も背があるはずなのに、完全に圧で負けちゃってるよ、これ。
「きらりっ!」と拓弥が悲鳴にも似た声音で、娘の名を呼んだ。
そうして顔を青ざめさせながら、たかのっぽくんからきらりちゃんを引き離した。
「こらっ、そんなに勢いよく行ったら相手を驚かせちゃうだろっ⁉ うちの娘がごめんね、たかのっぽくんっ。無理して答えなくていいからね⁉」
「は、はあ……」
「えー、つまんなーい!」
「せっかくイケメンと"おちかづき"になれるとこだったのにー」と、自分を捕まえる父親の腕の中で唇を突き出してブーたれる、きらりちゃん。
そんな娘の様子を前に、拓弥が疲れた表情で「そんな言葉、どこで覚えたてきたの……」とこぼす。
(な、なんか、ものすんごいパワフルな子だなぁ~)
どうやら、父親似なのは顔だけだったらしい。
そういえば、前に拓弥が、元奥さんの方は気が強めだって言ってたっけ。なるほど、外見は父親似で、性格は母親似ってか。なんて綺麗な遺伝子分割。見事すぎる。
(まぁ、通学用に使ってるICカードでここまで1人で来れちゃったって時点で、行動力のある子だなぁとは思いましたけどね)
そもそも、通学用のICカードを使うという発想に至った事が凄い。
きらりちゃんって、結構頭がいいのかもしれないな。小学生で電車通学してるって事は、お受験ありの私立に通ってる可能性が高そうだし。行動力と賢さの両方を兼ね備えた子とか、将来有望過ぎるだろ。
「まっ、なんにせよ、娘ちゃんが見つかってよかったじゃねぇの」
カオスと化す場をまとめるように、優作が口を開いた。
一見頼りがいがある発言。だがしかし、発言者の顔に浮かぶ笑みはニヤついている。どうやら、自分の娘に翻弄される幼なじみの姿が面白くて仕方ないらしい。
前言撤回。
このゴリラ、やっぱり悪いゴリラだわ。真面目だけど、根がクソガキすぎる。
優作と目があった途端、拓弥がなんともいえない微妙な表情を顔に浮かべた。優作の本音に気づいたのだろう。
が、心配をかけてしまった手前、強くは言えないらしい。
小さくため息をこぼすと、「まぁ、ね」と諦めたように言返した。
「にしてもきらりちゃん、パパに会いに来たとかって言ってたけどよ、よくパパがここにいるってわかったな。ふつうはさ、パパの家に行こうとかって思うんじゃねぇの」
優作がきらりちゃんを見ながら尋ねる。「あ、それは俺も思った」と、思わず俺も優作の疑問に同意する。
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