僕は空「気」になりました

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9章 永遠の別れ

僕は空「気」になりました

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君の変わらぬ愛を確信した僕は、そよ風となって君のそばを漂った。月光が君の顔を照らし、夏の海のように静かに揺れる。君は太陽だ。燃える光で僕を照らし、僕の無を有に変えた存在。だが、その愛はあまりにも重く、胸を締めつける。君の愛を確信したからこそ、僕はこの無であることに耐えられない。自由なはずの空気なのに、君の光に縛られ、辛く思えた。

別の空気がそばに漂ってきた。戦場で殺気に染まった僕を諫めたあの空気だ。「まだここにいるのか、空」と彼は言う。「君はもう、過去の鎖を解いたんじゃないのか?」

「解いたさ」と僕は答える。「だが、君の愛は僕を照らし、縛る。自由なはずの空気なのに、君の光から逃れられないんだ。」

彼は静かに笑う。「空気は自由だ、そら。愛も、憎しみも、全部風に預けてしまえばいい。君はもう、十分学んだだろう?」

「人間に戻りたい」と、風の中で泣いた。君の温もり、吐息、汗さえ愛おしい。あの夏、君の首筋を流れる汗が陽光に輝き、僕の肌に染み込んだ瞬間。君の「好きだよ」という囁きが、潮騒のように耳元で響いた。あの時、僕は君を抱きしめ、君の熱を感じ、君と一つになることができた。だが、今の僕はただの空気。君に触れたい、君の光をこの手で掴みたい。無であることに、初めて絶望した。

その時だった。道路を挟んだ向かいの建物から、爆音とともに炎が上がった。火事だ。真っ赤な炎が夜空を染め、君の部屋へと迫る。僕は君を起こそうと、風の力を借りて部屋の中を暴れ回った。「太陽、起きて! 逃げるんだ!」 飾られていた僕たちの写真を何枚も床に落とし、君を起こそうとした。

君は目を覚まし、床に散らばった写真に手を伸ばした。僕たちの思い出を拾おうとする君。このままでは君が危ない。僕は歪んだ窓から勢いよく飛び出し、炎が君を飲み込むのを阻むように、燃え盛る炎へと突き進んだ。炎は夜空を真っ赤に染め、上へ上へと舞い上がる。僕は空気としてその流れを押し、君の部屋への延焼を防いだ。

窓に君の姿が見えた。君は真っ赤に染まった夜空を見上げ、手には僕たちの思い出の写真を握りしめていた。君の目には涙が光り、まるで僕を感じているようだった。「さよなら、太陽。お別れだ。」 僕の空気は炎と共に燃焼し、君が霞んでいく。僕を照らし、焼き尽くした光。さよなら、君。



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