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暗黒なる闇の戦士に休息などない
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「此処か……。見つけたぞリン……」
教室のドアが破られて、ミズキが顔を出す。
教室の隅で昼寝を貪ろうとしていた僕は、ゆっくりと顔を上げる。
「ミズキか……」
「リン……貴様、何故此処にいるのだ!」
ミズキが右腕を掲げる。
此処ではまずい。
クラスの人間どもに厨ニ病がバレるのは避けなければならないし、何より人間に迷惑はかけられない。
「ミズキ……貴様正気か?」
「ふん……馬鹿なことを」
「屋上にて貴様を待つ……」
「待て!!」
僕は走り出す。
これならダッシュを使うまでもない。
僕は階段を駆け上がる。
後ろからミズキが息切れしながら追いかけてくる。
屋上のドアを開ける。
光が零れる。
眩しさに目が眩む。
「はぁ……はぁ……」
「小癪な……」
ミズキが屋上に来る。
「来たか……」
「リン……貴様、今まで何をしていた!」
ミズキが吠える。
真上にある太陽が、僕たちを照らしている。
「何を、とは愚問だな……」
ククッ、と嗤う。
「答えろ!」
「授業に決まっているだろう……?」
「修行だと?!」
「……そうだ」
フハハ、と今度はミズキが嗤う。
「何が可笑しい!!」
「あんなものが修行だと……? 嗤わせるな……」
フハハハハ、と高笑い。
「では訊こうではないか……。ミズキは何をしていたのだ……?」
「何を、とは愚かな……」
「……答えろ」
「ゲームやアニメ……或いは昼寝だ……」
「貴様、もしや……」
「ふっ……どうした……?」
もしや、ミズキは……。
「貴様、ニートなのか?!」
「何を今更驚いている……? それくらいは見た目で感じられるだろう」
ニート……。
くっ……僕なんかの厨ニ病では太刀打ちできぬ……!!
「どうした……。怖気付いたか……?」
「ふん……この僕が怖気付くなど……」
ミズキは余裕ぶっこいた笑みを浮かべる。
その笑みがいつまで続くのだろうか……。
「では始めるか……」
「そうだな……」
「リン……覚悟はいいな……?」
「……こっちの台詞だ」
ミズキは右腕を掲げる。
ちょうど太陽に被り、紅く燃える。
僕も右腕を掲げる。
青空に拳を突き刺すかのように。
「誓おう……この決闘に異議を唱えないことを……」
「誓おう……この決闘で全力を出すことを……」
「「いざ!!!」」
「血の盟約に従い……我、汝を召喚せん……」
ミズキが詠唱する。
「出でよ! 我が下僕、全てを包む天界の光……パー!!」
「くっ……これが光の戦士の本気か……」
「ふっ……貴様、屈するなら今だぞ……?」
「屈するのは貴様ではないか……?」
僕は息を吸い、詠唱する。
「魔界の盟約に従い……我、汝を召喚せん……」
ミズキに負けるなど、魔界の恥……!
「出でよ、我が従者……無を斬る双頭の龍! チョキ!!」
「ふん……それで詠唱のつもりか……?」
「余裕を持てるのはいつまでだろうね……もう貴様の敗北は決まっている……」
パーとチョキがぶつかる。
激しい衝撃波が生まれ、眼を開けていられない。
光が、闇が。
全てが飲み込まれるようにして衝撃波が収まり、僕は眼を開く。
我が龍が、……生きていた。
「僕の勝利のようだな……」
「なんで……なんで負けたんだ……!」
「僕の修行の成果だろうな……」
「くっ……これからは鍛錬を極めなければな……」
ミズキが屋上を降りようとする。
「貴様……何処へ行く気だ……?」
「勝ったくせに初歩的なことを訊くものだな……」
「……何処だ」
「家以外に帰る場所など存在はしない……」
「待て……」
ミズキを呼び止める。
緩慢な動作で振り向く。
「如何した……?」
「貴様忘れたのか……? 決闘の敗者に課された罰を……」
「……ふん。忘れるわけないだろう」
「ならばもう一度訊く……。何処へ行くのだ……?」
「……売店だ。何が望みだ……?」
ミズキが屈辱的な表情で言う。
嗚呼、これが勝者の優越というものか……。
「そうだな……。今日はふわとろクリームパンの気分だ……」
「ふわとろクリームパンか……。また高価な物を……」
ミズキは露骨に嫌悪感を示す。
「ほう……。嫌だと申すか……?」
「……敗者に権利などない」
「行け……」
ミズキは屋上を降りる。
いつもと変わらない平和な世界が、そこにある。
完
教室のドアが破られて、ミズキが顔を出す。
教室の隅で昼寝を貪ろうとしていた僕は、ゆっくりと顔を上げる。
「ミズキか……」
「リン……貴様、何故此処にいるのだ!」
ミズキが右腕を掲げる。
此処ではまずい。
クラスの人間どもに厨ニ病がバレるのは避けなければならないし、何より人間に迷惑はかけられない。
「ミズキ……貴様正気か?」
「ふん……馬鹿なことを」
「屋上にて貴様を待つ……」
「待て!!」
僕は走り出す。
これならダッシュを使うまでもない。
僕は階段を駆け上がる。
後ろからミズキが息切れしながら追いかけてくる。
屋上のドアを開ける。
光が零れる。
眩しさに目が眩む。
「はぁ……はぁ……」
「小癪な……」
ミズキが屋上に来る。
「来たか……」
「リン……貴様、今まで何をしていた!」
ミズキが吠える。
真上にある太陽が、僕たちを照らしている。
「何を、とは愚問だな……」
ククッ、と嗤う。
「答えろ!」
「授業に決まっているだろう……?」
「修行だと?!」
「……そうだ」
フハハ、と今度はミズキが嗤う。
「何が可笑しい!!」
「あんなものが修行だと……? 嗤わせるな……」
フハハハハ、と高笑い。
「では訊こうではないか……。ミズキは何をしていたのだ……?」
「何を、とは愚かな……」
「……答えろ」
「ゲームやアニメ……或いは昼寝だ……」
「貴様、もしや……」
「ふっ……どうした……?」
もしや、ミズキは……。
「貴様、ニートなのか?!」
「何を今更驚いている……? それくらいは見た目で感じられるだろう」
ニート……。
くっ……僕なんかの厨ニ病では太刀打ちできぬ……!!
「どうした……。怖気付いたか……?」
「ふん……この僕が怖気付くなど……」
ミズキは余裕ぶっこいた笑みを浮かべる。
その笑みがいつまで続くのだろうか……。
「では始めるか……」
「そうだな……」
「リン……覚悟はいいな……?」
「……こっちの台詞だ」
ミズキは右腕を掲げる。
ちょうど太陽に被り、紅く燃える。
僕も右腕を掲げる。
青空に拳を突き刺すかのように。
「誓おう……この決闘に異議を唱えないことを……」
「誓おう……この決闘で全力を出すことを……」
「「いざ!!!」」
「血の盟約に従い……我、汝を召喚せん……」
ミズキが詠唱する。
「出でよ! 我が下僕、全てを包む天界の光……パー!!」
「くっ……これが光の戦士の本気か……」
「ふっ……貴様、屈するなら今だぞ……?」
「屈するのは貴様ではないか……?」
僕は息を吸い、詠唱する。
「魔界の盟約に従い……我、汝を召喚せん……」
ミズキに負けるなど、魔界の恥……!
「出でよ、我が従者……無を斬る双頭の龍! チョキ!!」
「ふん……それで詠唱のつもりか……?」
「余裕を持てるのはいつまでだろうね……もう貴様の敗北は決まっている……」
パーとチョキがぶつかる。
激しい衝撃波が生まれ、眼を開けていられない。
光が、闇が。
全てが飲み込まれるようにして衝撃波が収まり、僕は眼を開く。
我が龍が、……生きていた。
「僕の勝利のようだな……」
「なんで……なんで負けたんだ……!」
「僕の修行の成果だろうな……」
「くっ……これからは鍛錬を極めなければな……」
ミズキが屋上を降りようとする。
「貴様……何処へ行く気だ……?」
「勝ったくせに初歩的なことを訊くものだな……」
「……何処だ」
「家以外に帰る場所など存在はしない……」
「待て……」
ミズキを呼び止める。
緩慢な動作で振り向く。
「如何した……?」
「貴様忘れたのか……? 決闘の敗者に課された罰を……」
「……ふん。忘れるわけないだろう」
「ならばもう一度訊く……。何処へ行くのだ……?」
「……売店だ。何が望みだ……?」
ミズキが屈辱的な表情で言う。
嗚呼、これが勝者の優越というものか……。
「そうだな……。今日はふわとろクリームパンの気分だ……」
「ふわとろクリームパンか……。また高価な物を……」
ミズキは露骨に嫌悪感を示す。
「ほう……。嫌だと申すか……?」
「……敗者に権利などない」
「行け……」
ミズキは屋上を降りる。
いつもと変わらない平和な世界が、そこにある。
完
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