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31.返却~閑話~

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放課後になった直後、まだクラスメートも教室にまばらに残っている中、掃除でも始めようかと思っていたらロン毛先輩が私のクラスにやってきた。
え、嫌な予感しかしなーい。
でも、森川さんに会いに来たのかな?などと思って、完全にその他大勢に混じって気づかないふりをしていたら、大きな声で
「影山さーん」とにこにこ笑っている城之内先輩が教室のドアから大きな声を出すもんだから困った。教室がざわつく。ついでに森川さんもびっくりしている様子だ。いや、違うから!私のことなんか呼んでなんかいないから!と無視を続けた。

「下着忘れてたよー」
なんて言い出すもんだから思わず振り返って凝視してしまった。
しっかりと、はい、見覚えのあるブラジャーを持っている。おそらく洗濯してくれたのだろう。透明な袋にピシッと折りたたまれて収納されている。

いや、透明の袋じゃなくて、見えない袋にして・・・。

教室の喧騒が大きくなる。それは絶対誤解されるじゃん!

「私のじゃ、アリマセン」
と答える。
「え、じゃあ、もらうね」とにっこりしながら言う。この男、腹立つな~
「どーぞ・・・」としか言えない。

鞄にしまおうとした城之内先輩の背後から急ににゅっと手が伸びて、ブラジャーが浮いた。
不二君がブラジャーを手にしていた。さらにその後ろには九頭谷先輩が不二君に親指を立ててグッドマークを作っている。

城之内先輩はあっけにとられていたが、不二君と九頭谷先輩はひったくりごとく走り去ってしまった。

・・・いや、それ、安物なんです・・・。しかも、そこそこ着古したやつ・・。
そんなに公衆の面前にさらされるならいいやつ着とけばよかった・・・。だって、普段下着なんか誰にも見られないじゃん・・・。

って、そんなこと言ってる場合じゃないよねっ???!!!



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