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名もなき陰陽師
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鬼が都を闊歩する時代。災いを占術にて事前に察知し、時に戦いし陰陽師が活躍していた時代。その時代の伝説と言えば、安倍晴明。彼より秀でた才を持つ者の名を、私は知らない。私は彼の式神として召喚され、長い年月を共に戦った。
彼が亡くなりし後も鬼の侵攻は止まることを知らず、その被害は民間にまで及ぶようになった。しかし安倍晴明の意思を継ぐ者はおらず、陰陽師の力は次第に弱まっていった。
鬼が世を制する時代もそう遠くはない。私はもう人間を信用しない。そう決めて、独り鬼を討伐する日々を過ごした。
年月を重ねても変わらない容貌。劣らない力。それは私自身の出自に関係する。
鬼の世を終わらせるため、私は戦った。幾年、戦い続けた。
しかし私は疲れていた。独り戦うことにも、独りで居ることにも。
だから、百歳ぶりに召喚を受けたそのときは、ただの気まぐれだった。
彼のためでも、世のためでもない。ただ、自身のためだった。
その出逢いが、私と、召喚者の運命を左右するとも知らずに。
僕はなぜ、生まれてきたのだろうか。
一体誰が、僕を産んだのだろうか。
僕はなぜ、こんなにも莫大な力を持って生まれたのだろうか。
生まれたときから独りだった。村人誰もが産んだ覚えのない僕。よって森に住まう狐女が気まぐれに産み落とした子、と噂された。食べずとも生き存える僕を、皆が気味悪がった。でも生きられるんだから、仕方がないじゃないか。
村人のひとりが、僕を殺そうとした。でも、僕に近づくことすらできなかった。呪を唱えた覚えなんてないのに、目を開けると、村人は数十歩先に倒れていた。
昔、安倍晴明という強大な呪力を持った陰陽師が居たという。その頃は、陰陽師が重宝された時代で、今のように時代遅れだの何だの言われず、存分に力を振るったとされる。その頃に生まれていたのなら、僕も少しは息がしやすかったのだろうか。
町には鬼が居るらしい。聞いた訳ではない。感じられるのだ。凶悪な存在が。でも、僕にとっては人間も鬼も変わらなかった。僕を忌み嫌うという意味では、人間も鬼も同じだった。でもどうやら、この世の中というのは人間が繁栄させてきたものであって、鬼が異端の扱いであることは明白。僕は町へ下り、鬼を倒す日々を過ごした。誰に教わるでもなく、術は使えた。頭の中に自然と湧く言葉と、身体の血の巡りに合わせて湧き出る呪力を合わせれば、鬼は目の前から消えて無くなる。とても疲れるけれど。
これで僕も、少しは人間に受け入れてもらえるかな。鬼を倒したって、すごいって、褒めてもらえるかな。でも、
「ひ、ひぃ! 近寄るな! 化け物ぉ!」
どうやら世の中はそんな甘いものではないらしい。僕は人間のはずなのに、鬼を倒したのに、同じ化け物扱いされた。中には、人間まで呪い殺すなんていう根も歯もない噂をする者さえ居た。
息ができなかった。僕はここに居るのに、生きているのに、誰も僕を見ようとしない。鬼を倒しても人殺しと言われる始末。僕は一体、何のために生まれてきたの?
死のうと思った。でも、できなかった。怯んだのではない。自死できないのだ。自分に刃が向けば、自分の中の護る力が勝手に働く。僕は独りなのに、ひとりで死ぬことさえ許されないのか。
ならば。
殺してもらえばいいんだ。
人間では殺せない。鬼でさえ僕を殺せない。
ならば。
陰陽師が共に占い、共に戦った、“式神 ”という存在を。
できるだけ強い式神を。
僕を殺せるくらい強い式神を。
召喚して、殺してもらえばいいんだ。
僕は疲れていた。独り戦うことにも、独りで居ることにも。
僕には式神なんて必要なかったけど、殺してもらうために必要だった。
君のためでも、世のためでもない。ただ、僕のためだった。
その出逢いが、僕と式神の運命を大きく変えるとも知らずに。
彼が亡くなりし後も鬼の侵攻は止まることを知らず、その被害は民間にまで及ぶようになった。しかし安倍晴明の意思を継ぐ者はおらず、陰陽師の力は次第に弱まっていった。
鬼が世を制する時代もそう遠くはない。私はもう人間を信用しない。そう決めて、独り鬼を討伐する日々を過ごした。
年月を重ねても変わらない容貌。劣らない力。それは私自身の出自に関係する。
鬼の世を終わらせるため、私は戦った。幾年、戦い続けた。
しかし私は疲れていた。独り戦うことにも、独りで居ることにも。
だから、百歳ぶりに召喚を受けたそのときは、ただの気まぐれだった。
彼のためでも、世のためでもない。ただ、自身のためだった。
その出逢いが、私と、召喚者の運命を左右するとも知らずに。
僕はなぜ、生まれてきたのだろうか。
一体誰が、僕を産んだのだろうか。
僕はなぜ、こんなにも莫大な力を持って生まれたのだろうか。
生まれたときから独りだった。村人誰もが産んだ覚えのない僕。よって森に住まう狐女が気まぐれに産み落とした子、と噂された。食べずとも生き存える僕を、皆が気味悪がった。でも生きられるんだから、仕方がないじゃないか。
村人のひとりが、僕を殺そうとした。でも、僕に近づくことすらできなかった。呪を唱えた覚えなんてないのに、目を開けると、村人は数十歩先に倒れていた。
昔、安倍晴明という強大な呪力を持った陰陽師が居たという。その頃は、陰陽師が重宝された時代で、今のように時代遅れだの何だの言われず、存分に力を振るったとされる。その頃に生まれていたのなら、僕も少しは息がしやすかったのだろうか。
町には鬼が居るらしい。聞いた訳ではない。感じられるのだ。凶悪な存在が。でも、僕にとっては人間も鬼も変わらなかった。僕を忌み嫌うという意味では、人間も鬼も同じだった。でもどうやら、この世の中というのは人間が繁栄させてきたものであって、鬼が異端の扱いであることは明白。僕は町へ下り、鬼を倒す日々を過ごした。誰に教わるでもなく、術は使えた。頭の中に自然と湧く言葉と、身体の血の巡りに合わせて湧き出る呪力を合わせれば、鬼は目の前から消えて無くなる。とても疲れるけれど。
これで僕も、少しは人間に受け入れてもらえるかな。鬼を倒したって、すごいって、褒めてもらえるかな。でも、
「ひ、ひぃ! 近寄るな! 化け物ぉ!」
どうやら世の中はそんな甘いものではないらしい。僕は人間のはずなのに、鬼を倒したのに、同じ化け物扱いされた。中には、人間まで呪い殺すなんていう根も歯もない噂をする者さえ居た。
息ができなかった。僕はここに居るのに、生きているのに、誰も僕を見ようとしない。鬼を倒しても人殺しと言われる始末。僕は一体、何のために生まれてきたの?
死のうと思った。でも、できなかった。怯んだのではない。自死できないのだ。自分に刃が向けば、自分の中の護る力が勝手に働く。僕は独りなのに、ひとりで死ぬことさえ許されないのか。
ならば。
殺してもらえばいいんだ。
人間では殺せない。鬼でさえ僕を殺せない。
ならば。
陰陽師が共に占い、共に戦った、“式神 ”という存在を。
できるだけ強い式神を。
僕を殺せるくらい強い式神を。
召喚して、殺してもらえばいいんだ。
僕は疲れていた。独り戦うことにも、独りで居ることにも。
僕には式神なんて必要なかったけど、殺してもらうために必要だった。
君のためでも、世のためでもない。ただ、僕のためだった。
その出逢いが、僕と式神の運命を大きく変えるとも知らずに。
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