異世界ハプニング。蛇と鬼と猫とエルフと超人と~

金弓 矢

文字の大きさ
29 / 38

第二十九話  邂逅

しおりを挟む
 なんでここにチビッコ達が……迅が放心状態でいると驚くことが続く。

「ほらっ。どこ行ったのぉー……あっ。やっぱりいた! 迅さーん、イエイっ! 」

 どゆこと? チビッコ達に続きレンカも登場する。今度は後ろからダグリールの声が聞こえる。

「ほほう。こうゆうことね」
「ダグさん、ついて来てたんですか? 」
「うん。魔界じゃないことはわかってたから。ほら魔力感じないじゃんこの中。確かにあの門はヤバい魔力だけどねぇ」

 魔力を全く感じない迅に対し、飄々と話すダグリールに続いて、マーナらもあとについて来ていたようで、うろたえながら言葉が出る。

「えええっ!? なんなの? 」

『マーナ姉ちゃんだ! 』『わああ……』『おいも』

 先程のジンと同じ状況に

「どゆこと? 」

「レンカさん、これって? 」

「うん。なんかね。うちらの前にでっかい門出てきて、ソッコウ逃げようかと思ったんだけど、……キクリが大丈夫っていうから入ったの。軍隊と一緒にね。そしたらキクリが今度、迅さんいるって走り出したのよ! わけわかんないよねーっアハっ。とにかくみんなついてきてっ!」

 レンカも興奮隠しきれないように、矢継ぎ早に話すと迅らを手招きする。
 マーナの指示により、続々とエルフ旅団一行も連れられてくる。深い霧の中、見失わないようレンカについていくと神聖国の軍団と合流する。両軍ともに困惑の色を隠せない表情になっていた。


 一体どうゆうことなのだろう。迅はマーナとレンカに疑問をぶつける。

「さっぱり意味わかんないんですけど。やっぱり神様じゃないですか。……それか帝国がここまでおびき寄せて、一気に畳み掛けにくるとか。……うーん。でもキクリが大丈夫って言ったのなら大丈夫なのか? ……準備だけはしておいた方がいいかもしれないですね」

 その場の者が各々最悪の事態を想定し始める中、またしても霧の中から気配を感じ、それは両軍の方へと向かってくる。

 唐突にダグリールが叫ぶ。

「ヤベーっ。この魔力は危険ぜよ。一旦下がれっ! 」
「マー姉。この禍々しい魔力って」
「ええ。とんでもないものがくるわ」

 この言葉に全員が罠だったのかと前を見据え、魔獣がくることを想定する。

 迅も緊張するとともに視線の先には、思いも寄らぬ懐かしい顔を見る。

「あれっ! センパイじゃーん」

「おおっ、おうジンか!! 元気だったか! 」

 思わず走り出し向かう迅に、想像もしていなかったものが目に入る

「ええっ!? なんで……」

 虎獣人ランドルの隣に向けて迅が言葉を続けようとすると、マーナが遮るように声をだす。

「迅さんっ! ちょっと待って! ……」

 つられて追いかけてきていたレンカとダグリールが、迅を抑えながら二人それぞれ言葉が出る。

「ってこっちからもハンパないのが来るよ」
「マジか。こりゃ無理だぜよ」


 もう一つの方角の霧が晴れるとともに、そこから一組の男女が現れ、それを見るなりレンカが叫ぶ。

「?? ソラリスっ! その男は!!? 」

 続けてマーナとダグリールがほぼ同時に驚愕の声を上げる。

「そんなっ。まさかっ! 」
「うわっ。ここに来るかよ! 」





   ◆ ◆ ◆




 遡ること二、三週間前。


 ザルバール龍王国玉座の間。




 部屋内の一角の空間が突然歪む。

「何奴じゃっ! 」

「フフ。しばらくぶりだね」

「!!! お前は」

「突然すまないね。不躾を承知で失礼するよ。警戒しないでくれたまえ。……いやなにね。本来なら詫びの一つも言わなければならなかっのだがね」

「詫び……じゃと……」

「うちの悪漢がね。お宅の国に放ったんだよ」

「ザクローマの件じゃな」

「そう、聞いていたかい。全く由々しき事態になるところだったね。お互いに。詳細はまだなんだろう。今あなたのお嬢さんが調べてるようだから、すぐ話は伝わるだろうがね」

「それで。なにしに来た? 」

「だから警戒しないでくれよ。旧知の仲じゃないか。……私はね。争い事が嫌いなんですよ。……避けられない立場ですがね。…………それで気になる話を聞いたのでね……」

「いったい何が言いたいのじゃ……」

「王よ。どう判断するかはあなたの自由だ。ただ一言いいたくてね。彼は気持ちの良い男だよ。…………また後でお邪魔するよ」

「会ったのか? 」
「フフっ。友達だよ」

 そう言うと男は歪んだ空間と共に消え、王は額に浮かぶあぶら汗を拭いながら呟く


「大魔王マグナ……」





  ◆ ◆ ◆





 その男は柔和な目で微笑みながらしゃべりだす。

「ほほう。皆さんそろい踏みですかな。ハハハっ。あっ、いましたね。約束より早まりましたかな? 」

 迅がレンカとダグリールに抑えられながらも、聞き覚えのある声に反射的に振り向き、たまげるように声が出る。

「えっ!! 社長ーっ!!!どしたんすか!? 」

「「「えーーーっ」」」

 その場のもの全員が、馴れ馴れしく男に声掛ける迅に仰天の声を上げ、レンカが迅の服を引っ張り寄せながら諭す様に言う。

「何言ってんの迅さんあの人……魔王マグナ……」

「違いますよ。クロフォード社長っス」

「そう魔王マグナクロフォードよ。そしてあの女が一番の側近エリザ……」

「だからセンパイの隣の女性は同僚のべスさん」

「そう、終焉の魔女エリザベスよ」


「………………」


「ハハハっ。彼女は私のように魔力を抑えられなくてね。あのマスターには悪いことしたね」
「フフっ。あの時は驚かしちゃっみたいね」



「………………はいっ?! 」

 …………なんですと? あんときのマスターの顔はそゆ意味? ……んー。……確かに初日、社長に何か最後に言われたなぁー。んー。そうだ。うちのあつかんをとめてくれてありがとう。熱燗て飲んでなかったけどなぁって思って適当に返事しちゃったけど。あつかん。あっかん。悪漢? 魔人のこと?

 迅が、ことの経緯を整理している間にも、ぞろぞろとエリザベスとマグナクロフォードに引き連れられ、亜人国軍と龍国軍は集まってきていた。


「ジン君、私が出来る事はここまでです。あとは任せてもいいですかな。霧が晴れると帝国は目の前です。すぐにでも散開してください。狙われたら逆に一網打尽にされてしまいますからな」

「社長。でもどうして? 」

「……冒涜ですよ。彼らがしていることはね。私たちが魔力を持っているように、彼らが身を守るために工夫して火薬を持つのはいい。ですがね……彼らは境界を越えた。世界の。理の、ね。」

 亜人への事件を指しているのか、エボーへの様々なことを指すのか……全てひっくるめてか……魔王は迅の表情を見て取り、考えがわかるかのように続ける。

「そうです。……ですがこれ以上は干渉にあたるのでね。ここまでは導きということで。……女神風にいうとね……フフ」

 と全てお見通しのように、にやけつつ、それでいて最後は包容のある笑みを持って話した。

「では失礼するよ。あっそうそう。べスは残していくね。干渉にならない程度に手伝いたいそうだ。……あとこれ渡しておくね。全て終わったらこれを。……その日の夜、あのバーで逢いましょう」

 と迅にあるものを手渡すと、空間が歪むと共に魔王は消え、迅たちら各国の軍を包んでいた霧も同時に晴れていく。



 目の前に広がる広大な土地と遠くに見える城を確認する。迅のそばで魔王の話を聞いていたものたちから、次々と波打つように歓声が拡がる。

 迅は魔王の消えていったあたりの空間に深く深く頭を下げ、時間と距離の問題を一気に解決できたことを感謝した。つい先ほどまで焦り、敗戦の予感さえみせていた気持ちを払拭させ、拳を握り締め言葉を上げる。


「マーナさん、レンカさん、皆さん。いけますよ! 帝国倒せますよ! 」


 その言葉と共に、その場にいたもの全員が拳を強く振り上げた。


「「「おおおーーっ!! 」」」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...