【辺境のグルメ商人、異世界をたがやす】異世界が野菜嫌いのようなので、おいしい料理でわからせます。

猫手 まねき

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第一章 辺境の村~6歳~

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 こっちがフィーネの心配をしているのに、逆に将来を心配されるとか。
 この件はキリカを探った方がよさそうだ。
 今は木材を集めよう。

 西の森はふかふかの地面に適度に光が落ちて綺麗だ。植樹はしていないようだけど、うまく間伐してあるように見える。

「ねぇフィーネ、今まで村で苗木を育てたことってないかな?」
「私が知る限りではないと思います」

 その辺は提案してみようかな。
 さてさて、ハヤスギは常緑針葉樹だね。
 切り株の年輪をみる限り、成長速度は二十年で直径二百ミリといったところか。

「フィーネ、魔の森で育つ植物は成長が早かったりするの?」
「はい、その通りです。ハルト様はどうしてわかったのですか?」
「同じハヤスギでも、森の東側より西側にある切り株の方が年輪幅が広いからだよ」

 魔力の濃さとか関係してるのかなあ。
 腐葉土を取るなら西側の方がいいかも。  
 あと、どうやらミミズはいないようだ。

「フィーネ、ミミズやモグラって知ってる?」
「はい。でもこの辺りにはいませんね」
「やっぱりそうなんだね」

 畑でミミズやモグラ塚を見たことがないし、森がこれだけふかふかしてるってことは、落ち葉を分解する速度がゆっくりなんだ。
 完熟堆肥作りは微生物に頑張ってもらおう。

「あの、ハルト様?」
「はい? (顔が近いな……)」
「今のご質問などは、本当に夢でソフィア様から教えていただいているんですか?」
「もちろんだよ。でも正確には、母上じゃないかなーって思う女の人だからね。えへへ」

 あぶな、作業に逃げよう。

「ボスー、運ぶの手伝ってー」
「うぉん、うぉん!」

 使えそうなハヤスギの太い枝と、まだ葉っぱの形が残っている未熟な腐葉土を荷馬車に積む。微生物にお越しいただかないとね。
 暗くなる前に作業を終えて村へ戻る。
 御者台では話の主導権を握ることにした。

「そういえばちゃんと聞いたことなかったけど、フィーネは村の外から来たんだよね」
「はい……私が四歳の時です……」

 あれ、少し顔を曇らせた?

「ごめん。聞いちゃいけなかったかな」
「いいえ、大丈夫ですよ。ハルト様にはいつかお話しようと思っていましたから」

 僕が生まれる二、三年前の話だね。

「私と母は各地を転々と旅していました。やがて母は重い病を患い、この地でソフィア様の噂を耳にしたので、なんとか助けていただけないかとシュガー村を訪れたんです」

「え? 治癒魔法で病気は治せないんじゃ」

「違います。母がソフィア様に助けていただきたかったのは、幼い私です」

 ああ……じゃあ、フィーネのお母さんはもう自分の死を悟っていたのか。

「ハルト様はご存知かもしれませんが、森に住むエルフの多くは白い肌なんです。
 だから私のような褐色肌のエルフは、厄災を呼ぶ存在として森を追われるんです。
 母は幼い私を連れて森を出ました。
 しかし、それは森の外でも同じことでした」

 光天至上主義だったか。
 六柱の女神様には順位があって、それは色などにも関わってくる。光の女神様を表す黄金や白が最上で、闇の女神様を表す黒が最下。
 上から順に、光、火、水、風、土、闇。
 色だと、白、赤、青、緑、黄、黒。

 ミテラス教会や各国王侯貴族の都合と思惑によって作られた偏見と差別。教会教皇が代わって近年明確に否定されたと聞くけど、兄上の言うように世界はそう簡単には変わらない。

「母上は快く迎えてくれたんだよね?」
「はい。おかげで母は安心して旅立ちました」

 僕はフィーネのことなんにも知らなかった。
 戻ったらお母さんに会わせてもらおう。

「ソフィア様は動物や草花がお好きな方で、私も母から色々と教わっていたので、すぐに話が合ってとても楽しかったことを覚えています」

 そっか。お母さんを亡くしてからそう思えたのは、母上が優しい人だったからだろう。

「それと初めてのお友達ができたんです。サブさんの娘のキリカなんですけど、ハルト様は今日彼女に会われませんでしたか?」
「えっ!? あーうん、会ったよ……」
「あれ? キリカと何かありました?」
「ううん、べつになんにもないよ」

 キリカが初めてのお友達?
 なぜか酷い伝言を頼まれましたが。
 今は彼女から話を変えよう。

「ぼ、僕が生まれた頃はどうだったの?」

「もちろんソフィア様はとても喜ばれました。ハルト様は、私の指を掴んだら離してくれなくて。可愛らしかったんですよ。それにおしめの交換では、よく外したとたんに、ふふふ」

「あのー、その辺は詳しく教えていただかなくてもいいです。お手数お掛けしました」

 僕にとってフィーネは姉に等しい。
 母上がいなくて寂しい幼少期で一番甘えてきた人物だから、とても頭が上がらないよ。

「よちよち歩けるようになって、フィーネ、フィーネと追いかけてくるハルト様は、それはそれは愛らしくて。お風呂の時は反対に、お屋敷の中を裸で逃げられて追いかけ回しましたが」
「も、もう……ヤメテ、ヤメテ……」

 フィーネの意地悪スイッチに触れてしまったようで、僕はしばらく辱しめられた。
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