おもいでにかわるまで

名波美奈

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第二章

第九十二話

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勇利と水樹が二人きりで部室で休んでいた頃、聖也は今日の最後のミニゲーム中に水樹がボールから勇利をかばったシーンを思い出していた。

‘勇利さん危ないっ。’

頭の中を、あの時の水樹の言葉がいつまでもグルグルと回転している。

勇利さん?

聖也は水樹の‘勇利さん’呼びが腑に落ちない。水樹の体の一部として、普段から言い慣れているように自然に聞こえたのだ。

何故だ?そんな風に呼んでいる所を一度だって聞いた事があったか?それにああいう時って、頭で考えるよりも早く反射的に体が動くもんだろ?よくあんなに一瞬で勇利に飛び付けるな。普通守るか?逆だろ?

聖也は寒気がしてブルッと身震いた。そして自分の知らない所で二人は何かあるのだろうかと疑心を抱きかけ、でもそれはないと直ぐに否定した。

聖也は勇利が入部の頃からずっとかわいがってきた。その間に勇利が自分の水樹と過度に接しているとは感じた事がないし、それは水樹にだって言える事だ。

ハーフタイムになったので聖也は仲間に了解を得て勇利と水樹の様子を見に行った。水樹と付き合って4ケ月、ようやく水樹が聖也の前でお人形さんの様でなくなりかけている所で、だから尚更聖也は自分の信じるものを信じたかった。そしてガチャッとバレー部の部室のドアを開けると、そこには着替えを終えて独り椅子に腰掛ける勇利の姿があった。

「おい、独りか?あいつは?」

「今さ、飲み物買いに食堂に行ってる。」

「あいつ頭にボール直撃してたろ?お前が行けよ。」

「そうだね・・・。ごめんね聖也君。それにしてもあの娘、凄い反射神経だね。」

「お前そんな感謝じゃ足りないからな。そんで大丈夫か?」

「うん・・・。今日は腹も減ってきたよ。時間の流れって凄いね。それに結局最後は自分で処理して生きていかないといけないからね。まあでもほんとさ、思い出ってやっかいなオプションだよ。」

「新しい女作れよ・・・。」

「はは、どうかな。仁美より好きな女が出来るとは思えないよ。俺一生独身かもね。」

「馬鹿言え。そんな狭い所だけで生きてどうすんだ。」

「自分だって超狭い所で彼女作ってんじゃん。ロリコンだし。それにしても水樹ちゃん良い娘だね。俺が水樹ちゃんの頭のタンコブ触ったらさ、超恥ずかしがって出ていったんだ。」

「は!?」

聖也は頭がカッとなって勇利の椅子を蹴った。
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