おもいでにかわるまで

名波美奈

文字の大きさ
204 / 267
第四章

第二百三話

しおりを挟む
「誰ですか?」

「同じ中学の女バレの、長谷川君より一つ上だった沢渡と浅井。久しぶりだね。」

誰ですか。と敬遠したけれど二人組の一人、浅井佐和子の名前を明人はうろ覚えながら思い出した。その一連の様子に、ドクンと水樹は嫌な音を鳴らし、女性達と明人を交互に見た。そして明人の顔から表情が消えていく様を察知し、まずいな、と無表情になった明人をこわごわ見守った。

「もしかして満席なんですか?良かったら一緒に座りますか?」

「いいの?ありがとう。長谷川君の彼女だよね。超かわいいんだけど。あ、私は由夏でこっちが佐和子。でも結局長谷川君てやっぱりちゃっかり面食いなんじゃん。ね佐和子。」

「さあ。彼女さん、座らせてもらってもいい?私達の事は気にしないでね。勝手に二人で食べてるから。長谷川君もごめんね。」

「まあ満席なら・・・。」

「長谷川君ほんとに座るよ?それからまた恐い顔になってる。ほんの少し垢抜けたけど、無愛想な所はあんまり変わらないね。」

二人共が明人の事をよく知っている事に併せて、今の学校では明人が女子と長時間話すのをあまり見た事がなかっただけに、急に現れた意味有りげな女性達に水樹は軽くショックを受けてしまった。でも、異性の友達なら自分にだっているし自分勝手にモヤモヤするなんて最低だ。と直ぐに自分をたしなめた。

「長谷川さんはあんまり変わってないんですか?」

「俺に触るもの皆傷付ける、みたいな?中二病満載!」

「怒られるよ。ごめんね長谷川君。由夏ちゃん昔からこんなでしょ?」

「知ってるよ。悪気も裏表もないけど強引で迷惑だったし。」

「なはは。はっきり言い過ぎ!いやー、長谷川君て中学の時は関係ない女の子と全然話さなくてさー、今はこんなかわいい彼女と普通のデートが出来てるんだから多分中身は相当変わったんだね。」

「もう行きます。この席広く使って下さい沢渡さん。それから俺の彼女人見知りなんで、道で会ってももう話しかけないで。水樹、いこ。」

「う、うん・・・。」

ただの先輩に、どうしてそんなに尖っているんだろうかと水樹は悲しくなった。そして明人が沢渡由夏には敬語なのに対して、浅井佐和子には友達口調だった事がひっかかる。それより何よりそんな細かい事に気付いてしまう自分が嫌だった。そこにはいつも何でも受け入れてくれた明人と違い、狭量で悲観的な水樹がいる。でも水樹はやっぱり気にせずにいたい。人には過去がある。そう教えてくれたのは他でもない最愛の明人だ。

手を引かれたままついていき、そして一度明人の手を強く握ってみたけれど、前を向いたまま歩き続ける明人の冷たい手からは何も伝わってはこなかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...