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【6】思惑

白と黒と灰色

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 次の日、ギルド関係者のコーディ、フィリップスと友好的な関係である沙蘭の竜次と、そのボディガードのジェフリーは早めに出発をした。
 念のためギルドに立ち寄って記帳をする。来慣れてしまった、小綺麗なフィリップスのギルドだ。
「あら、コーディじゃないか、久しいねぇ」
 今日はおじいさんではなく、大柄で豪快なおばさんが対応してくれた。
 どこのギルドも、コーディを見ては、気さくに声をかけてもらえる。おそらく覚えられやすいのではないだろうか。幼い外見とドラグニーという点で。
「あと二回で昇格だねぇ」
「えっ? じゃあこれと、あと一回、何か請ければいいの?」
「そうだけど、昇格したら、変な奴から目をつけられちまわないかねぇ」
 カウンターのおばさんは、コーディの身を案じた。
 以前、邪神龍の件に首を突っ込んで命を落とした人がいると言っていた。だが、コーディは回避方法も知っていた。
「今は集団で仕事してるから、大丈夫だよ」
「まぁ、保留も出来るからねぇ。適当に言っておくれよ」
 コーディが手帳を受け取った。
 ジェフリーと竜次は壁の依頼書を見ていた。
 求人情報が気になるジェフリーは、異変に気がついた。
「仕事が激減してるな?」
「そうですねぇ、よかったです。この猫森の依頼に飛びつく人がいなくて」
 物探しや、用心棒、探検同行者、アルバイトといった小さい仕事まで請けた人がいる印がついており、減っている。
 昨日コーディが見せた依頼書の写しと照らし合わせるも、半分ほどになっていた。
「仕事、減ったね。いったいどうしたの?」
 コーディがカウンターのおばさんに質問をする。
 おばさんは化粧を直しながら答えた。
「この街だけだと思うけどねぇ。ノックスのゴールドラッシュに紛れて発掘された魔鉱石が暴走した騒ぎでみんな逃げて来たよ。今朝は忙しかったねぇ」
「魔鉱石? 暴走?」
「街の一部が浮いちまったらしいよ。超常現象みたいで、怖いわねぇ」
 おばさんがルージュを重ね塗りし、グロスでなぞりながら続ける。
「確か、その解決依頼がさっき……あらやだ、まだ張り出してなかったねぇ」
 おばさんは慌てながらコーディにも写しを出し、カウンターを飛び越えて壁に張り出していた。
 依頼主はフィリップス王代行、クレスト王子とある。ノックスは、フィリップスの領土だ。
 竜次とコーディがじっと写しを見る。
「これは温厚な話ではないですね」
「いったん保留かな。この報酬金だったら、誰か請けそうな気がするけど。ちょっと危険かもしれないね」
 ジェフリー個人としては、ミティアのためにも行きたい場所だ。だが、ここでがっついても変に思われるだろう。ここは感情を抑え、竜次とコーディの判断に従った。
「あとでもう一度、来てみてもいいでしょう。先にお城に出向きましょう。面倒なことは先に済ませてしまうべきです」
 謁見が面倒なのは同じ思いだ。竜次の意見には賛成した。
 ギルドを出て通りを抜け、城の門番に手紙を見せる。
 ヒマワリの箔押しと印を確認してもらったが、コーディのギルドカード提示も求められ、照合する。確認が取れたのか、軽くボディーチェックを受けた。
 当然だが、竜次の立派な刀やジェフリーの剣はいったん取り上げられた。
 むしろ、これを見過ごすのもどうかと思うくらいだ。
「私、ドラグニーなんだけど、大丈夫かな……」
 コーディが髪の毛を整えながら竜次を見上げる。
「そんなことを言ったら、私は死んだはずの王様候補です。私の方がびっくりされると思いますよ?」
 どうするんだっけかなぁ……などと思いながら、コーディに目の高さを合わせ、笑みかけた。彼女の不安は消えたようだ。何度か頷かれた。
 
 三人は待合室に通された。身分を確認されたのがコーディだけだったが、これはどういうことだろうか。
 ベロア素材のソファーに硝子のテーブル。壁には絵画と王様の肖像画、陶器の飾りに毛皮。縁がないものばかりで落ち着かない。
 落ち着かなかったが、意外にもすぐに呼び出された。
 側近だろうか、大臣だろうか、気品のある老人に案内され、大きな扉が開かれる。
 絵に書いたような赤い絨毯に派手な玉座、その前でマントを羽織ったなかなかの好青年が仁王立ちしていた。
 三人が揃って頭を下げる。
「あ、いいよ、頭なんて下げなくて!」
 聞き間違いかと思いながら、竜次だけは頭を上げない。
 竜次が頭を下げたまま、ちらりと横を見る。自分以外は既に頭が高く、身の毛がよだった。言われてすぐに従うなど、血の気が引きそうだ。旅どころか、人生が終わったかもしれないと思った。だが、足音が近づき、王子に抱きつかれた。
「りゅーくぅん! やっぱり君だった!」
「えっ? えっ? クレスト様?」
 青い髪、青い瞳、少し惚けた顔をしているクレスト王子。
「他人行儀はよしてくれ、君たち一行の調べなんて、とっくについている!」
 クレストはふんぞり返って威張った。
 こんな人だったかなぁ……などと記憶を掘り起こしながら、竜次は苦笑した。
「無礼を失礼いたします。確認なのですが、本当にクレスト・ロージア・フィリップス様でお間違いありませんか?」
「だから、丁寧語はやめろと言うに」
 状況を確認するが、この部屋に警備もない。側近か衛兵くらい置くものだろうが、見当たらない。
 クレスト王子は不満を残しながら、コーディに向き直った。
「噂は聞いているよ、コーデリアさん! 種族の壁をもろともせず、ひたすら真実に向かって突き進む信念は素晴らしい」
「き、ききき、恐縮です? えっと、光栄のいたり……?」
 コーディは難しい言葉を使おうとして、何度も詰まらせる。
 このぎこちなさにクレスト王子は笑った。
「やめてくれ、純粋にお会いしてみたかったのだ!」
 笑い転げてしまいそうな勢いだ。コーディはほどほどにし、クレストはジェフリーの前に歩み出た。
「多分幼少期に一度お会いしているはずなんだが、覚えてなくて申し訳ない」
「いや、俺も知らないと言うか、覚えてない……」
 ジェフリーはこういうタイプの人間に苦手意識を持っている。目すら合わせない。理由は、誰にでも気さくに振る舞おうと無理をしている人間を知っているからだ。
「こぉら、ジェフ! ちゃんとご挨拶なさい!」
「いや、やめてくれ。これくらい肝が据わった人がいるべきだよ」
 竜次が頭を下げて謝るも、クレスト王子はこれも拒否した。
「時間がもったいないから、ざっくばらんに話そうか」
 クレスト王子が腕を組みながら、三人の面構えを見て頷く。
「自分は……いや、王都フィリップスは君たちの味方なんだ。そうかまえなくていいし、飾らないでほしい。正姫様から手紙を預かってはいないかい?」
 親書は確かに預かっている。だが、渡していいものか。竜次はジェフリーを見るが、渋い顔をしていない。つまり、この人は白だ。
 ここはジェフリーを信じようと、カバンから未開封の親書を出し、王子に渡した。
「多分あってると思うけど、この場で確認するね」
 クレストは封を切って中の紙を開く。内容を確認すると深く頷いた。
「実は、父上が体調を崩しているのは、フィラノスの刺客に毒を盛られた可能性が浮上していてね。自分は代行をしているが、何も知らないバカを演じている」
 言ってからクレストの眼光が鋭くなった。
「どうか、他言無用で頼む」
 急に声が低くなり、少し不敵に笑って見せる。
「フィラノスの王の周りには悪い噂が絶えないのは、ギルドに所属するコーデリアさんなら知っているよね?」
「は、はいいぃ、な、何となくではありますが、お耳に入っております」
 コーディはまだ慣れない言葉遣いを頑張っていた。それらしく振る舞おうとして、どんどん悪化しているようにも思える。
「魔導士狩りも、フィラノス王が仕組んだのではないかと見ている。ご同行されている魔法無効能力者の方を狙ってだと思っています。もちろんですが、これも広めるつもりはありません。フィラノスは現状では真っ黒だと思います」
 竜次と真逆だ。クレスト王子はしっかりしていないを演じている。油断させるため、外部の目を欺くためのものだ。これには三人とも驚いた。
「フィラノスが持っているものを挙げます。不足があれば、申してもらいたい。こちらでも調べます。種の研究所、意のままに操れる邪神龍は一般的には黒い龍ですね。暗殺組織ローレンシア、神。そして天空都市も手中に収めようとしている」
 この時点でまずいものが勢揃いだ。いつからこんなにスケールの大きな話になってしまったのか、頭が痛くなりそうだ。
 ジェフリーは真剣に話を聞き、理解して頷いた。
「把握している。多分そんなもんだ……」
 クレストも頷き、話を続けた。
「逆にフィラノスがほしいものを挙げます。こちらも他に心当たりがあれば教えてもらいたい。フィラノスがほしいものは魔法無効能力者、強力な魔法を使える兵器にも成りうる魔導士、旧国ヒアノスの王女、それからこの世界そのもの……」
 ジェフリーはクレスト王子の顔色を窺う。つまり敵はフィラノス、もしくはフィラノスにいる誰かであり、こちらがやっと得た情報や明かした真実のその先をほしがっている。憶測かもしれないが、これだけの機密情報の出所を知りたい。
「だいたいあっていると思うが、どこで調べたか知りたい」
「やはり、冴えている。いい顔をしているから、もしやと思ったよ」
 ジェフリーの警戒心と鋭さ、これを見てクレストはこの場にジェフリーがいることを納得した。一行の調べはしてあるが、招いてコーディと竜次が来るのは想像していた。まさかジェフリーが来るとは思わなかった。案外、王に向いているのではなかろうかと思った。
 実質この二人だけで話が進められている。
「からくりを話すと、全国のギルドには少しずつ、フィリップスの関係者を混ぜてある。ギルドの者は口が堅い。稼業にしている人の中にはそうではない者もいるようだが、邪神龍や種の研究所の情報は見せないようにしてあるのだよ。それ以外にも、情報を探るべく、宿の経営者にも協力を要請している。それで、必然的に君たちが集まった」
 竜次が固唾を飲む。ここまでの積み重ねが完璧すぎて驚いているのだ。
 さぞ、犠牲も出ただろう。
 ジェフリーは鋭い眼光でクレストを睨む。
「フィリップスの狙いは何だ?」
「フィラノスからの解放か、要するにみんな仲良くしようってところです。フィリップスなんて、弱小国です。黙っていればフィラノスに潰されます。自国は守りますが、それだけでは手が足りない。だから手を組みたい。ここへ招いた理由もそうだ」
「嘘ならどうする?」
「正姫様とご婚約して条約でも結びます? それよりは、嘘だった場合、この醜態をコーデリアさんの本にでも記せばいいでしょう。一生、いえ、死んでも汚点です」
 竜次はジェフリーを連れてきて正解だと思っていた。ただ気迫があるだけではない。理由もなく質問はしない。指摘は鋭く、クレストが頷くほどだ。
「名前を利用している限りは、フィラノスも手を出しては来ないと思います。英雄とか勇者と呼ばれているならばそれを利用し、一般の方の支持を得れば尚いいです。ケーシス氏も悪名を利用しているのは裏でわかってはいます。これだけ裏から手を回しているのです。敵ならとっくにあなた方を仕留めています」
 クレスト王子が両手を広げ、敵意がないと示した。
 コーディも竜次も信じていいと踏んでいた。
 だが、ジェフリーは一つ気になっていた。
「下品な笑いをする、ターバンみたいなものを巻いた殺し屋を知らないか?」
「殺し屋?」
 クレストは眉をひそめた。この反応はこの反応は本当に知らないようだ。ジェフリーは詫びた。
「知らないならいい。悪かった」
「いや……気になるな」
 クレスト王子は先ほど皆の案内をさせた老人を呼び出した。
 柱の陰から出て来るとは、なかなかの使いだ。
 クレスト王子は老人に手を添える。
「じいやに特徴を詳しく教えてもらえるかい?」
 呼びつけた老人が会釈をし、ジェフリーを手招きした。

 手が空いたクレストは、竜次とコーディに向けた質問をする。
「これからどこへ向かうんだい?」
「今のところ、これという予定というか、目的地はありません……で、ございます?」
 コーディがまだ慣れない言葉遣いをするも、どんどん語尾がおかしくなっている。
 竜次も悩ましげに首を傾げた。
「そうですね。連れが東の猫森に行っていますが、それ以降は……」
 猫森に行ったと聞いて、王子が身震いを起こした。
「ひっ……猫森に行くなんて信じられない。ただでさえ猫アレルギーなのに、聞いただけでさぶいぼが出てしまうよ……」
 両腕を抱え、擦っている。ふざけている様子はない。
「あぁいけない、その話ではなかった」
 脱線しかけたが、クレストは話題を戻した。
「昨日の夜から北のノックスが騒がれていてね。少し報酬を奮発したが、今日お会いできるならお願いしてもよかった……」
 ギルドの仕組みを知っているクレストは残念がった。
「我々も向かうべきですか?」
 竜次たちが話すのを、ジェフリーは聞き耳を立てた。老人は話を参考に、その場で似顔絵まで制作している。仕事が早く、デキるタイプの人だ。
「応じてもらえるとは思わなかったから、完全に失敗した。じいや、今からギルドの依頼を取り下げて、この人たちにお願いをできないか?」
 カリカリとペンを走らせながら、老人が一礼する。
「あと、金属ピアスしてた。それくらいだ。行ってくれてかまわない」
 ジェフリーが行くように促すと、老人は急ぎ足で部屋を後にした。
 ノックスへ行きたい気持ちがあったせいもある。ジェフリーにとっては、好機と言っていい。
「帰りにギルドへ寄ってみます。ほかの予定も立てたいので……」
 竜次がコーディと顔を合わせて頷いた。買い物もあるし、街中には出る予定だ。
「王子は忙しいでしょう? 我々はこれにて失礼しますよ」
「んー、そうだね。せっかく久しぶりに会えたのに申し訳ない。昼から会議もあって予定が詰まっているんだ。また何かあればギルドになり……おっと、そうだ、コーデリアさんにこれを渡さないと!」
 クレストはごそごそと体を探った。王子らしくない品のない仕草だ。ポケットからカードを取り出し、コーディに手渡した。
「んん? これは?」
「ギルドから、フィリップス王室に向けて手紙が出せる特殊なカードです。調べてほしいものがあったら、こちらも動きます。このカードを見せれば、ギルドの者もわかるはずです。ただ、送る場合は二重に封をするなり、ある程度、厳重にしてもらえると助かります」
 カードには、クレスト王子のサイン、フィリップスのヒマワリの印もあった。水に濡れて崩れないか心配だ。後でケースでも用意しよう。
 最後の方はバタバタしてしまったが、三人は謁見を終えて城を出た。
 城門を出ると三人は揃って脱力した。
「あぁーっ、緊張した……」
 コーディは膝に手をつき、震えながら大きく息を吐いた。
「ギルドでそれなりの人に会う機会はあるけど、国の偉い人は初めてだったよ」
 緊張のし過ぎで、コーディの声も震えていた。
 コーディの言葉に、竜次は疑問を抱く。
「おや、コーディちゃん、私もジェフも一応国の人ですよ?」
「あー……そんな気はしないかな。だって、もう友だちに近いし」
 気を遣わないのは信頼をしている証拠だ。仲間という関係で済ませるには、あまりにも親しくなりすぎた。
 大きな要件はこれで済んだ。
 時刻は昼前、いい時間だ。竜次も肩を解している。
「ギルドに寄って、それからご飯食べましょうか。私は街中で買い物もしたいので」
 まさか知り合いがあんな振る舞いをするなんて、思いもしなかったのだ。予想外と言えば予想外。いい意味で裏切られた。知っている王子は外交では不真面目なタイプだ。
 実は、あんなに真面目で策士な人とは思わなかった。敵に回したら恐ろしい。友好関係を継続させている妹を心から誇らしく思っていた。
 移動する流れだが、どうもジェフリーは考え事をしている。竜次が声をかけた。
「ジェフ、行きますよ?」
 呼ばれてジェフリーは顔を上げる。少しぼうっとしているのが増えた。
 疲れか、病み上がりで本調子ではないのだろうか。
 ジェフリーは、ノックスに行ける確率が上がり、ミティアへの思いを馳せていた。ずっとアイラの手紙のことを考えている。キッドが観光案内を兼ねた、いい地図帳を持っていたはずだ。あとで見せてもらおうと思った。


 フィリップスから東へ行った場所にある猫森。鬱蒼として、自然豊かだ。
 道中、鼻をくすぐるような妙な匂いがする。花の香りにも似た甘っぽい匂い、加えてなぜか視界が悪い。霧ではないが、粉っぽいものが飛散している。
「へくしっ!」 
 先頭を歩くサキが豪快なくしゃみをし、鼻をズルズルとさせている。風邪をひいたのかが心配だが、彼は森に来てからくしゃみを頻発している。
「今のところ、猫っぽくないデスネ……」
 薄暗い森だ。ローズがランタンを持ちながら、ため息をついている。ついでに歩くコンディションが悪い。地面も湿気があり、底の高い靴では沈む感覚もある。
 鼻をくすぐるこの匂いは気になる。
「これ、何だろうね、わたしも目が痒い」
 後ろを警戒しながら、ミティアが目を擦っている。彼女の腕の中には圭馬がいた。彼も鼻の不調を訴えている。
「花粉? マタタビじゃないよねぇ?」
 花粉は正しいかもしれない。薄暗いのに、草花の豊富さが気になる。
 咲いているものは、華やかな色をしていない。濃い色の植物が目立った。大きくてラフレシアに近いものもある。不気味な森だ。
 今のところ、どこが猫森なのかはわからない。
「ひゃっ!」
 ミティアが右を見て小さい悲鳴を上げた。
 キッドがすぐにミティアの手を引いた。特に何の気配もないが、ローズがランタンを前に向ける。木の根元に大小二つ、白い招き猫が置いてある。
「おぉぅ、不気味……デスネ」
 薄暗い森の中で招き猫を見つけたら誰でも驚く。
 周囲を確認すると、木の上にいくつか並んでいる。意図的な飾りだろうが、少なくとも自然の中にあるものではない。
 圭馬が目を擦りながらげんなりしている。
「こりゃ確かに猫だけどさぁ……」
 不気味な光景だ。何か仕掛けでもあるのだろうかと警戒してしまう。
 先に進むとY字に別れた。できればここで別行動は控えたい。
 主導権はサキに委ねられていた。キッドが意見を求めた。
「どっちに行くつもり?」
 サキはあまり仕切るのに向いていないのか、オロオロとしている。
「そ、そんなの僕にわからないし、決められないです」
「はぁ? あんたがこの森に来たいって言ってたじゃない!」
 言い争いになった。キッドが両手を腰に、ずいずいと迫る。
「あんたにしかできないことがあるじゃない。もう少し頭を使ったらどうなの?」
 ジェフリーに容赦ない物言いをするのは知っていたが、今回はサキに厳しい。
 だが、キッドだって何も考えないで文句を言っているわけではない。彼女なりの諭し方が光った。すぐに気づくのも、サキの長所だ。
「僕にしかできないことって、魔法!!」
 切り替えも早かった。やはり根本的に人間性が違う。
「よし、試してみよう……」
 サキは考えながら、分かれ道の真ん中に立った。
「圭馬さん、そのショコラさんは魔力をお持ちですよね?」
「当然だよ。幻獣だもの」
 確認すると、サキはポーチからガラス玉を取り出し、杖に変えてかまえた。見慣れてしまったが、便利な道具である。
「サキはこれから何をするの?」
 ミティアが興味を持っている。隣に立って、覗き込んだ。
「物を探す魔法と敵の位置を確かめる魔法があるなら、魔力を探すこともおそらく可能なはず……」
 つまりサキは新しい魔法にチャレンジしようとしている。その行動に圭馬は驚いた。
「えっ、魔法を作るの!? キミ、そんな高度な技術あるのぉっ!?」
 サキはトントンと杖で地面を叩き、感覚を研ぎ澄ませている。
 圭馬は魔法を『作る』と言ったが、要するにサキは今まで得た魔法をヒントに独自のアレンジを加えたオリジナルの魔法を試行しようとしている。
「この森の魔力を導いてください!! サーチ・マジック!!」
 杖を前に振りかざした。すると、杖の先から光の玉が零れ落ち、ぴょんぴょんと跳ねた。その光が意志を持つように飛び跳ね、左右の道のうち左に跳ね停止する。
「やった!! こっちみたいです!」
 試し打ちが成功したらしく、サキは笑顔で振り返った。
「ウッソぉ……キミ、天才なんじゃない?」
「まだ成功したのかわからないので、素直に喜べませんが」
 圭馬のべた褒めに対し、サキは遠慮がちに受け答えする。もしこれが成功だとしたら応用を利かせる才能がある。
 サキのこの行動に、ローズも唸った。
「サキ君、そういうのもできるデス? 魔法を作るのは、高位な魔導士サンになりますケド?」
「残念ですけれど、僕は年齢制限で、大魔導士の試験が受けられないので、まだ高位ではないです……」
「ムムム……」
 ローズも圭馬に同じく疑問に思った。才能と本人の頑張り補正だろうが、独学になりつつある。魔法学校や本で極めた域を越えていた。
「今は、あんたを信じてみようじゃない」
 キッドが光の玉を追い駆けた。触れると先にまた跳ねた。
 物探しの魔法は光を放っても、勝手に進んでしまい、術主を待ってはくれなかったが、これは運動ができなくても優しい魔法だ。
 特に変形した場所では役に立つかもしれない。
「これ、凄いね、勝手に先に行ったりしないんだ……」
 キッドの後ろを走りながら、ミティアも驚きの声を上げる。
 自分のペースで追跡可能なものなのに、キッドやミティアが先に行くものだから、結局いつもと変わらずサキだけが息を切らせている。
「わぁん、待ってください……」
 サキは本当に体力がない。これさえ克服できればと思うと、惜しいものだ。天は万物を与えてはくれない。
 先に進んで思うのが、招き猫の置物が増えて不気味さがどんどん増した。
 規則性はない。大きさや色や形、招いている手も違う。さまざまな種類があった。猫が好き嫌い以前に、不気味で近寄り難い場所であることは間違いない。
 見慣れない変な色をした植物もそうだ。それにこの薄暗さと、奥地に進む度に強くなる甘っぽい匂いも気になって普通の人間ならとっくに諦めて帰る。
 先頭を走っていたキッドが足を止める。
「あら、行き止まり?」
 光は止まったまま動かない。だが、開けた広場には出た。
 圭馬を抱えたミティアが震えていた。
「キッド、怖いよ……ここ」
 ローズがランタンで辺りを照らすと、招き猫に囲まれているのが確認できた。
「はぁ、はぁっ……もぉっ、待ってくださいよぉ……」
 情けない声を上げながらサキがようやく最後尾を走り抜いた。
「えぇっ、何ですかこれ。ハズレ……?」
 サキも深呼吸をしながら見渡し、異常を察知した。鼻がグズグズして、呼吸が整うのに時間を消費する。
「失敗だったのかなぁ……」
 そんな疑いをかけたときだった。

 なーー!
 みゃーー!
 なぁーーおんっ!

 急に猫の鳴き声がした。一匹二匹ではない。しかし、猫の姿は見当たらない。
 圭馬が長い耳を上下にパタパタさせながら警戒した。
「これって招き猫が鳴いてるんじゃないのぉ?」
 招き猫が鳴くなど、聞いたことがない。明らかに異常だ。鳴き止まない猫の鳴き声。
 サキは招き猫が鳴くこと自体が魔法と気がつき、詠唱を始めた。
「サイレンス!」
 放たれたのは沈黙の魔法。うるさいくらいに響いていた猫の鳴き声が、止んで静かになった。
 それによって、森の中の招き猫だらけの不気味な光景が際立った。
 この場の誰のものでもない声がした。
「ほぉむ、猫は嫌いかのぉん?」
 気だるそうな女性の声だ。
 耳がいい圭馬が目の前の木の上を見上げる。
「上だね!!」
 一同の視線は木の上に行った。
 木の幹に近い枝に腰をかける人影を見つけた。招き猫と鳴き声、そして甘っぽい匂いで注意力が削られている点にも気がついた。
「ボクだよ。魔界の特命を受けている圭馬・ノーヴァス・ティアマラント。降りてきて話をしようよ!」
 圭馬からの呼びかけに応じ、木の上からストンと降り立った。猫が高い所から降りるとこんな感じだろうが、体重を感じさせない軽快な動きだ。
 そもそも幻獣という時点で、実態があるのかは怪しい。
 ランタンの光で照らされたのは、ムラのある灰色で軽く外はねをしている髪。猫のような耳もした女性の外見をしている人だ。
 神官が着るローブのような、独特の衣装を身にまとっている。
「圭馬チャン? 何でぇ?」
「いや、何でって、依頼を出してなかった?」
 黄色のような、緑色のような独特の色をした瞳が一同を見渡す。興味をそそるのか、背後ではしましまの尻尾がゆらゆらと揺れている。
「依頼……あぁ、出していたかもしれないのぉん」
 かなりおっとりとした口調だ。長話をしていると、ストレスが溜まりそうなタイプかもしれない。
「なぁんで人間と一緒にいるのかのぉん?」
「難しい質問しないでよ。まぁ、興味があったからかな?」
 圭馬と会話してばかりだが、ほかの人にも興味を持っている。
「別にいいんだけどぉ、この中でさっきの魔法を使ったのはどちらさんかのぉん?」
 さっきの魔法とは、おそらく魔力を探す魔法を指すのだろう。サキが警戒しながら前に出た。
「僕です。魔導士のサキと申します」
 サキは怯えながらも名乗り、じっとかまえた。
「ほほぉ、賢そうな子だぁ。わしゃ、ショコラ。圭馬チャンと同じく幻獣なのぉん」
 また尻尾が揺れている。機嫌がいいようだ。
 サキは仲間の紹介もした。
「こ、こっちはキッドさん、ミティアさん、ローズさんです。ギルドで依頼を受けた件もありますが、個人的に文献の話もお聞きしたくてこちらに来ました」
 失礼がない程度に振る舞いながら紹介し、再び向き直った。
「ふぅむ、あれだけの腕前で魔導士とは解せないのぉん」
 ショコラはローズや圭馬と同じように、サキの実力と肩書きが一致しないと指摘した。現状でその点に触れられても困る。
「依頼の魔法実験はもう済んでおるぞぉ?」
 ショコラは尻尾を振りながらにっこりと笑う。猫口になって可愛らしい。
「この森は迷うように細工が施されておる。わしのところに来られるか、実験をしていたのよぉ」
 迷うような細工。大量の招き猫、鼻をくすぐる匂い。心当たりはこんなところだろうか。
「迷いもしなかったし、どっちに行く、あっちに行くとモメもしなかったなぁん。もっと人間らしさも見たかったのぉん」
 ショコラの思考は圭馬に似ている。人間が好きだが、どこか子馬鹿にもしている部分があるようだ。
 キッドは脇の招き猫を見流しながら言う。
「招き猫は怖かったですよ。普通は森にあるものじゃないし」
 何を普通と線引きするのかは人によるが、少なくともこの森は皆が想像するような緑も動物も豊かな場所ではなかった。招き猫も自然界にあるものではない。
 圭馬は不満をぶつけた。
「この花と目がやられるのは何だい? さっきから痒くて仕方ないんだけど?」
 ショコラは手短にあった招き猫を拾い上げ、上下に振った。
 招き猫から細かい粒子の粉が出ている。甘っぽい匂いが増した。
「人間の花粉症に似てるかのぉ。鼻と目がやられると、注意力が散漫になって、判断力も鈍くなるからこれは細工なのよぉ」
 何とも楽しそうだ。人間で実験とは、なかなかいい性格をしている。
「それで、魔導士チャン、魔界を追放されたわしに何の用だってぇ?」
 一行に安心したのか、ショコラは猫背になった。立ち振る舞いが一気に猫らしくなって、とても可愛らしい。
 サキは要件を話す。
「世界が三つに分かれている仮説や論文を拝見しました。根拠を知りたいです」
 ショコラは背筋を伸ばした。サキの言葉に耳がピンと立たせる。
「本にサインしてくれかと思ったのよぉ。その話かなぁん?」
 自分が書き記した本に自信があるのだろうか。抵抗なく答えた。
「人間界に降りてから、一部の人だけで世界の争いが起きているのを知ってねぇ。この世界を支配したがるのは、この世界が狭すぎるんじゃあないかなぁと。仮定として組んだものを発表というか、書いてはみたんだけどお偉い様には都合が悪いのか、ほとんど燃やされてしまったんじゃよぉ」
 ショコラの説明にはいくつか疑問もあるが、心当たりもある。 
 この世界には貴重な情報ほど、わざと人に知らせないようにする傾向がある。大図書館のような一部の場所に、貴重な情報を隠しているのは前々から感じてはいた。
 今のショコラの話が本当なら、ローズの家の地下書庫で読んだ本は貴重な書物だ。
「仮定、ではないです。この世界とは別にアリューン界も天空都市もあるはずです。天空都市には、人の運命を左右する神のような支配者が存在すると聞きました」
「そいつは神モドキじゃなかろうかなぁん? 別の世界の人が干渉しておるのじゃなかろうか」
 話していて、ショコラが何か思い出したのか、尻尾をピンと立てた。
「おぉ、魔界も一応あるから世界は四つだったにゃっ!」
 猫っぽい語尾が放たれた。おっとり口調と相まって可愛い。
 圭馬が説明を加えた。
「魔界は人が死んだら行き着く場所だよ。魂の選定を受けて、英雄の魂を持っていたらボクたちみたいになる可能性があるのさ。まぁ機会があったら行ってみてもいいけどね。ボク一応だけど、邪神龍を倒す特命を受けてるし?」
 圭馬の言葉もそうだが、言っていることがどうしても難しい。キッドとミティアは、完全についていけない。
 ローズは多少理解できるみたいだが、口は挟まない。自宅にあんな本があれば、目を通すだろうが、不在の兄の本が占めていた。帰ったら読み返そうと、意識をあらためる。
「ほれでぇ、残りの邪神龍の討伐と、その天空の支配者を潰しに行きたいとぉ?」
 ショコラはおっとり口調のままで物騒なことを口にした。だが、最終的な目的はそこに行き着く。
 サキは仲間の顔を見て頷いた。
「多分、そうなると思います」
「ほぉんそうなると、大変だねぇ」
「何かいい手はないかお聞きしたいのですが」
「ほぉむ……」
 ショコラは耳も尻尾を下げ、顎に手を添えながら考え込む。どうしようかと迷っている様子だ。
「まず、空が飛べる技術を得る。それからぁ、着実に潰すために、ちゃーんと予習してぇ、相手が逃げられないだけの戦力や武装を整えるぅ?」
 ローズが反応した。彼女は空を飛ぶ船が作りたいと、世間話の中で言っていた。だが、その技術は手に入っていない。
 小さく唸るローズ。その世間話を聞いていたミティアも反応した。
「そっか、ローズさんの夢って!!」
「んんー……そデス。でも、その技術ってこの世界で得るのは難しいのでしょうネ」
 せっかく盛り上がったが、話が詰まってしまい、ローズは落胆している。
「純血のアリューン神族ってほとんどいませんからネ……」
「まだ……」
 しんみりした空気だが、サキはまだ諦めていない。
「まだ、フィリップスの大図書館にも行っていませんし。純血のアリューン神族も、これから探せばいいと思います。この情報、持ち帰ってジェフリーさんたちにも話しましょう。ちゃんと相談して、これからどうするのがいいか、よく考えましょう」
 せっかくサキがまとめたのに、キッドが指摘を入れる。
「締めくくり方だけ、リーダーっぽいわね」
「あ、あうっ……」
 指摘を受け、サキは縮こまった。
 ショコラもそれなりの知識人だ。ただ話すだけではなく、知っている限りのことは参考までに話す。
「まぁのぉ、人間ではなく、小さいものを浮かせる程度なら、魔鉱石でもできるかもしれんがなぁん」
 聞き覚えのある単語にサキが反応した。
「魔鉱石……」
 どこかで聞いた単語だ。文字でも見た記憶がある。ローズが軽く手を叩いた。
「サキ君、ワタシの家の地下書庫にそんな本があったような気がするデス」
「あっ!!」
 ローズの助け舟に明るい表情になった。調べものが増えそうだ。
「ほむぅ、何かヒントになったようじゃのぉん。方針は決まったかのぉん?」
「そうですね。貴重なお話を聞けて良かったです。ショコラさん、ありがとうございました!」
 サキは深々と頭を下げ、お礼をした。
「長居をしていると鼻がおかしくなりそうなので、失礼しましょう」
 鼻をグズらせながら、サキは一歩下がった。
 明らかに帰る空気になり、ショコラは呼び止めた。
「報酬は、いらんのかなぁん?」
 一応依頼を受けて来た。だが、サキの魔法でスムーズに来てしまったので、満足のいく結果ではなかったかもしれない。
 一同は足を止め、再びショコラに向き直る。
 圭馬が大して期待していない声を上げた。
「報酬……魔法をくれるって書いてあったね。また日常生活に役に立つ魔法? それとも、サイン入りの本でもくれるの?」
 本を書いているくらいなのだ。本でもくれるのだろうかとは思った。だが、どうも様子が違う。
 ショコラはサキに右手を差し出した。丸みを帯びた猫の手をしている。
「魔導士サキや、わしと契約してくれんかぁ?」
「どぶぇぇぇぇぇっ!?」
 なぜかサキではなく、圭馬が声をひっくり返して驚倒する。
「ババァもついて来るのぉ。マジでぇ!?」
「圭馬チャン、ババァはひどいのぉ……確かに年上だけどなぁん」
 圭馬は驚きのあまり、ショコラを『ババァ』と呼んでいた。見知った仲ならある程度は許されるだろうが、かなり失礼な呼び方だ。幻獣同士、仲のいい子どもの言い争いのように思える。種族は違うが、交流ややり取りは変わらないのかもしれない。
「わし、フリーなのよぉ。もう追放されているなら、いくらでも人間に干渉していいじゃにゃい?」
「えぇっと……」
 サキが判断に困っていた。女性三人は歓迎の反応だが、問題は圭馬だ。
「はぁーあ、これから毎晩のように寝床の争奪戦かぁ」
「わしは寝相がいい人にところで寝るので気を遣わんでいいぞぉ? それに、わしは圭馬ちゃんと違って人から認識されずに過ごすことも可能じゃよ。姿を消すこともたやすいのぉん」
 ショコラは圭馬と上手く過ごすつもりでいる。こういう関係性は人間に限らず、大切だ。圭馬は喧嘩をするつもりがないのならいいと了承した。
 問題がないのなら、サキも拒む理由がない。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「我が名はショコラ・マーリュージュ。これより、魔導士サキと魔力共有契約を結ぶにゃ!」
 サキも左の手を差し出して重ねた。
 ショコラは人間の姿から鯖トラの猫に変化した。
 あまりの可愛さに、ミティアが黄色い声を上げる。
「きゃあ、かわいい……」
「初対面で抱っこは好かんのぉ。自分で歩けるから世話だけお願いしようかのぉん」
 ミティアが両手を伸ばし、抱き上げようとする。だが、ショコラはこれを拒否してすり抜けた。ミティアのうしろではローズが猫じゃらしを持っている。
「そういうのもオトナなので乗らないのぉん」
 ショコラはつんとそっぽを向いた。
 同じ幻獣でも、目立ちたがりでかまって気質の圭馬とは違うようだ。
 ババァと呼ばれてはいるが、歩き方や猫背っぷりが確かに老猫に近い。必要以上にかまうと疲れてしまうのかもしれない。
「さて、街に戻りましょ。向こうも無事かわからないしね」
 キッドが戻ろうと提案するが、そんな彼女の足もとでショコラがすりすりしている。
「えっ、ちょっと、何であたし?」
「おなごさん、飾らないし、野生的ないい匂いがするのぅ」
 ショコラはゴロゴロと喉を鳴らしている。
 匂いといえば、ミティアはポプリを持っている。ローズはかまい症が濃く出ている。
 キッドは、飾りっ気もないし適度にそっとしておいてくれる意味で猫が懐きやすいのかもしれない。野性的な匂いの意味はよくわからなかった。
「お連れもおるのかぁ、楽しみで仕方ないのぉん」
 ショコラは尻尾を振ってご機嫌のようだ。
 森を去るのはいいとして、城へ向かった三人が気がかりだ。
 万が一も考えられる。ローズは心配をしていた。
「お城で捕まっていないといいデスネ」
「先生が上手くやってくれていると思いますが」
 サキは竜次が上手くやっていると考えているようだ。キッドはその考えには疑問を持っている。
「先生、ちょっと抜けてるところがあるから、肝心なところで、ヘマしてないといいわね……」
 キッドの足もとで、ミティアがかろうじてナデナデに漕ぎつけられたらしい。
「キッドって、意外と先生をよく見てるよねー……」
 まるでショコラに話しかけているようだ。
 一行は森を後にした。森を出る頃には、鼻も目も落ち着きを取り戻していた。
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