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【3‐7】乗り越える者たち
己が欲望と世界の天秤
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一瞬だけ浮いた感覚。こんな便利な魔法がそうぽんぽんと使えるのは限られた人だ。ローズにトランスポーターを借りてもよかったのだが、あちらはお金が掛かるし、もちろん持ち合わせはない。
何も難しいことはない移動のはずだった。静かな船着き場に積んであった木箱が弾け飛んだ。
ジェフリーだけが着地に失敗した。
「……ってぇ!!」
極め付けは、石床に尻もちまで着いた。だが、着地失敗かと思いきや、隣ではサキとコーディがちゃんと立っている。見下すようなサキの視線。ジェフリーはこれに気が付いた。これは意図的な行為だとすぐに察知した。当然食らい付く。
「わざとか……」
「そうですが、何か?」
「言いたいことがあるなら言ってくれ!!」
サキはそっぽを向いてしまった。
ジェフリーは理由がわからず、納得していない。立ち上がって埃も払わないままサキの胸倉をつかんだ。コーディが止めに入ろうとするが、彼女は利き手だけしか使えない。どうしても非力だった。
「いい加減にしてくれ!!」
「それはこっちの台詞です!!」
怪我をしているせいもあって痛がっている。すぐに開放し、ジェフリーは首を垂れた。
この頃合いでコーディが説教をしている。
「やめなよ。そんなことしてる場合なの? ジェフリーお兄ちゃん、大人げないね」
やけに手厳しい。ジェフリーは眉間にしわを寄せた。
口を挟むのはコーディだけかと思っていたが、しっかり圭馬も便乗した。
「あーあ、みっともない。今、世界が大変だっていうのに、ジェフリーお兄ちゃん自覚あるの!? 作戦も何も聞いていないけどね?」
こうなるとジェフリーが完全に悪者だ。だが実際、悪者である自覚はある。
「のぉん、どこなのぉ!?」
ショコラは便乗しないが、目を凝らして海を見ている。霧のようなものが掛かって視界がよくない。邪神龍を探していたのはすぐにわかった。
現在は夜だ。見えなくても仕方がない。だが、街の明かりがあるのだから、多少は見通しがいいはずだ。
一同揃って海を見ていると、歯切れのいい女性の声がした。
「騒がしいね、どうしたんだい?」
揃って声の方へ向き直った。
小さいランタンを持った人影が見える。栗色の髪がポニーテールになっているが、軽くウエーブの掛かった特徴と声、それから釣り竿を持っている。
サキは驚きの声を上げた。
「お、お師匠様!?」
驚いたのは二人もそうだ。時間はもうすぐ夜明け。かすかに空が藍色に染まる。なぜアイラがこんな所にいたのかは、釣り竿と、腰の箱が語っている。
「おばさんこそ、こんな時間に何を!?」
ジェフリーはわかり切った質問をした。そのせいで、コーディとサキはジェフリーに白い目を向けた。
そんな中でもアイラはちゃんと答えてくれる。
「何って、夜釣りさ。あんたたちこそ。二人は怪我をしているし、天空都市に行ったんじゃないのかい?」
アイラは質問までした。聞いていた話と違うとアイラは驚く。それもそうだろう。正義だのなんだの振り回しておいて、危険を冒してまで行ったはいいが、何かをした、何かを得たといういい報告が一切ない。それどころか、サキやコーディは怪我をしているし、皆がここにいるわけではない。
すぐに答えが帰って来ないのをいいことに、アイラはさらに質問をした。
「それで、天空都市で財宝でも見付かったかい?」
やっと答えたのはサキだ。
「財宝どころか、僕たちは大切なものを失ってしまったかもしれません」
「んー? ひょっとして、ミティアちゃん?」
アイラは多くを詮索せず、顔色だけで推測したようだ。当然ジェフリーもサキも驚いた。反応が正直でアイラも呆れている。読心術でも学んだのかと疑いを持ちたくもなったが、今は伏せておかねば話が脱線する。
アイラは呆れつつ、海を見て言う。
「今日は変な魚ばっかり釣れたのさ。深海魚とか、この辺りに存在しないような魚とかね。あと、波も高いし満潮でもないのに潮位は高かった」
この霧の中で釣りをして、変化に気付けるなどよほどだ。伊達に長生きをしていないアリューン神族の王族だが、これも指摘まず、話の脱線を未然に防いだ。
アイラは腕を組み、主にジェフリーとサキに向けて言う。
「で、助けに行かないのかい?」
サキは、その気持ちはあると主張した。
「行きたいです。少なくとも僕は!」
ジェフリーへの当て付けにも思える主張だ。サキは一体どうしたのだろう。ずいぶんと当たりがきつめだ。ジェフリーの表情は渋い。
アイラはサキの態度を見て、次に呆れて何も言えなくなっているコーディも見た。そして判断した。
「ははーん、こんなときに喧嘩だね。あんたたち?」
コーディは翼を伸ばし、びくりと驚いた。
「わっ、アイラさんって、そういうのも鋭いね」
観察力は大したものだが、師として、母親としてサキの表情を汲み取る。
「ハッキリと言っておやり。ジェフリーが悪いって」
アイラは多くを語らない。怪我の理由も追及しない。だが、アイラにはわかることがある。独自の情報網と自らの生い立ち、持っている情報、それから一行の目的。つなぎ合わせると、良し悪しはジェフリー次第なのではないかと辿り着いた。
サキは言いづらそうだ。アイラに対しても、ジェフリーに対しても、だ。
「で、でも……」
「ね、彼女に守ってもらった実感がないもんね。それに、送り出してくれた仲間に感謝もしていないだろう? そりゃあこの子が怒っても仕方がないだろうさ?」
アイラはついにジェフリーへ当て付けた。
ジェフリーはその理由を理解して唇を噛み締めた。その指摘が悔しそうだ。大切な人のことだけで頭がいっぱいだった。仲間のことなど気を遣えなかった。
アイラはジェフリーの反応をうかがい、もう一度海を見た。海に変化があらわれる。
「さぁて、どうしたもんかね。あたしゃ、首を突っ込まない方がいいかもしれないね」
先ほどまで霧の向こうは何も見えなかったはずだ。だが、大きな影が見える。静かな船着き場のはずが、波が高くなり、何かを引き摺る音までする。
警戒をしていると、一同は声を掛けられた。
「そこで何をしている!! ここは釣り禁止だぞ!?」
フィラノスの街の人だ。釣り竿を持ったアイラに向けてなのだろうが、この状況で街の人の目に入ったのはまずかったかもしれない。
ランタンやライトを持った複数人の役人だ。誰かに見付かることは想定していたが、誤解を招いてしまったようだ。
「お前たち、ギルドで有名な一行だな? まさか、黒い龍の仲間なのか!!』
「人を呼んで来い!!」
「騎士団を読んで来た方がいいかもしれないぞ!!」
「隊長、あの女の子は保護するべきなのでは!?」
ざわざわと騒ぎ立て、何人か街の方へ走って行った。気になる発言もしていたが、『あの女の子とは』てっきりコーディを指すのだと思っていた。いや待て、場が混乱して来た。
サキとジェフリーがお互いどうするか相談を始めようというときだ。この中で比較的目のいいコーディが声を上げた。
「ミティアお姉ちゃん!!」
相談どころではない。注目した先には、黒い瘴気を身に纏ったミティアが立っている。この状況は沙蘭で見た魔女に酷似している。
役人の一人が声を上げた。
「黒い龍だ!! お前たち、仲間なのか!?」
混乱したこの状況で誰が何を説明できるだろうか。瘴気を纏ったミティアの背後から大きな影が近付いて来る。邪神龍だ。サキですら考えすぎて固まっている。
見兼ねたアイラが行動に出た。
「あんたたち、自分のことをしっかりとおやり。もしかしたら、今回ばかりはあたしゃ力になれないかもしれないよ」
アイラが動いたことによってサキが我に返った。一瞬だけ目が合ったのに、頷きもできないままだ。
アイラは詰めかけた役人の相手をする。
「この子たちは関係ないよ!! それより何をぼさっとしてるんだい!? 街の人たちを避難させな!! ギルドからも人を集めて……早くするんだよッ!!」
釣り具を持ったまま、詰めかけた者たちに指示を出した。アイラが言うと威勢もいい上、よく声が通るので迫力がある。
おろおろと若干の乱れはあったが、隊長らしき人が街を優先したようだ。明かりが乱れ、アイラも牽引して街中へ消えて行った。これでよかったのかもしれない。
静けさが訪れ、人目がないのを確認して圭馬が喋った
「キミのお師匠さん、多くを話さなくてもわかったことをしてくれるよね」
圭馬は切り替えができていないサキに声を掛けた。
サキは頷いて返す。本当にアイラには世話になってばかりだ。ただ、少し意味深なことを言われた。「力になれないかもしれない」と言っていた。それが引っ掛かっていた。だが、今は目の前に集中した方がいい。
サキは怪我とは別に、全身から血の気が引くような感覚に襲われた。直感が体に危機を知らせている。
「ミティアさん、あれでは魔女、です」
戦って勝てる相手ではない。いや、戦ってはいけない。なぜなら、相手はミティアだからだ。ジェフリーも危機を感じていた。
「俺がしっかりしていれば、こんなことには……」
「そうですよ! ジェフリーさんにお任せして、初めて後悔しました」
悲痛な表情を浮かべるジェフリーにもサキは当たりが厳しいままだ。
アイラのおかげで、街の人の安全と、部外者が出しゃばるのは回避できた。だが、本番はここからだ。
邪神龍と魔女化してしまったミティア。敵として対峙したくはなかった。
ショコラは背中を丸める。
「ミティアさぁん……こんなむごいことがあっては悲しいのぉん」
ミティアは明らかにこちらを認識していた。緑色の澄んだ瞳は悲しみに染まっている。輝きはなく、悲壮感を帯びてジェフリーをじっと見ている。
圭馬はささやかな助言を申す。
「完全に、ではなさそうだね。『こちら側』に引き戻せるチャンスはありそうな気配だよ。ただ……」
圭馬はジェフリーを見上げ、次にサキを見上げた。
「暴れちゃうだろうね。お姉ちゃんのことだから、自分ではない意識に支配されまいと抵抗はすると思うけど」
サキははっとした。自分の役目はこれしかない。
「それじゃあ、沙蘭で襲って来た邪神龍と同じ状況です。僕は、これ以上邪神龍をフィラノスに入り込まないようにしないといけない、のかな?」
ショコラも焦っているようだ。
「街を壊せば人も殺してしまうのぉ!!」
それは避けたい。まだミティアを助けられるのなら。きっと彼女は、それこそ後悔し、嘆き、苦しむであろう。誰よりも人の痛みをわかっているからこそ、そんなことは望まない。
コーディはこのまま臨戦になるのかと覚悟をしていた。
「早くお姉ちゃんを助けないと!!」
「待って、コーディ!!」
「うぇっ!? サキ、どうしたの!?」
一刻も早くミティアを助けようと意気込むコーディだったが、サキは冷静に止めた。サキはジェフリーに視線を向ける。
「きっと、僕たちの声も言葉も、ミティアさんに届きません」
「うわー、そっか。でも、そうだよね。あれ、絶対にジェフリーお兄ちゃんを待ってるんだもん。助けてって言われたんじゃない?」
ジェフリーはコテンパンにされた気分に陥った。だが、あとには引けないところまで来てしまった。もう本当に最後かもしれない。ジェフリーは一歩前に出て背を向けたまま言う。
「サキ、コーディもありがとう……」
「やっとお礼言ってくれた」
「……!?」
答えたのはサキだ。ジェフリーはサキがへそを曲げていた理由がやっと把握できた。
サキは僅かに機嫌を持ち直している。この様子にジェフリーはやっと笑うことができた。
「悪かった」
「僕は……僕たちは使い捨ての駒じゃないんですよ?」
サキの口調は柔らかい。声質も、ずっと親しみのあるものだ。このやり取りは懐かしい。ジェフリーは素直になれた。
「大切な仲間だ。サキもコーディも、使い魔のお前たちだって……」
もちろん圭馬もショコラも大切な仲間だ。助けたい思いばかりが先走って、何も見えなくなってしまっていた。頼れる人はここにもいるというのに。
ジェフリーの言葉を聞き、サキは続きを遮るように忠告した。
「おっと、ジェフリーさん、別れの言葉みたいな湿っぽいのはだめですよ」
サキはジェフリーから離れるように足を引いた。
「どこまで守れるかわかりませんが、ジェフリーさんはミティアさんを連れ戻してください。しかるべき頃合いで僕は浄化に移ります。コーディ、サポートをお願い」
「おっけー。あんたの足になる以外は期待しないでね」
心の準備はいいらしい。サキは左手に杖を持っていた。右手はほとんど動かない。果たして体が持つのだろうか。
ジェフリーはサキへ振り返る。
「今度はしくじったりしない! 信じてる……」
「信じてくれなきゃ。僕だってジェフリーさんを信じられませんからね!!」
じっと向かい合って不敵に笑みを交わす。漢の友情……とでも言えば、聞こえはいいかもしれない。
感傷に浸る間もなく、冷たい風が抜けた。瘴気をまとったミティアは前屈みになり、体を震わせている。
「痛い、苦しい、哀しくて、悲しい。この世界は寒い……」
ミティアの声に共鳴するように、海の波が凍り付く。信じられない光景に一瞬は怯みそうになった。だが、引くわけにはいかない。
ジェフリーはミティアに向かって叫んだ。
「ミティア!! やめるんだ……こんなこと、したくないはず!!」
凍てつく空気が広がる。ミティアがいかに苦しんでいるのかがこれだけでうかがえる。
サキは障壁を展開した。邪神龍がおとなしいことが幸いだが、いつ暴走するかわからない。
「ジェフリーさん、行ってください!! 何があっても、ミティアを止めないと!!」
サキはコーディに抱えられ、後退した。まずはこの場を守る手段を取る。
ジェフリーは地を蹴った。ひたすらにミティアを想って叫び続ける。
「悲しまなくていいんだ!! 一人で抱え込まないでくれっ!!」
声が届いてくれることを信じていた。だが、ジェフリーの声はミティアに届いていないようだ。
「世界のために死ぬなんていやだ。いや、イヤ、嫌!!」
「ミティ……」
突風が起こった。これでは近付くこともできない。
ただの突風ではなく、街路樹も街灯も薙ぎ倒す勢いだ。船の積み荷らしき木箱もまるでクッキーが砕けるようにぼろぼろと崩れ散った。
これを見た圭馬はサキに違う導きをする。
「まずいよ。この場所だけ守っているようじゃダメかもしれない。障壁を広範囲にしないと街が壊れちゃうかもしれないよ! ただでさえ、フィラノスは国王不在なんだし、復興中なんだから」
圭馬の懸念は街の安全が確保できていないことだ。サキの障壁の範囲は自分たちの周りだけだ。ミティアが放った氷の風を防いでいた程度だが、障壁の外は氷の世界にでもなったような光景だ。一瞬で別世界へ変貌した。
サキも気持ちでは焦っていた。この場所だけ、この街だけで納まるとは思えないからだ。本当に世界を滅ぼしてしまうかもしれない。だが、体力面で今のサキにできることは限られる。
「そんなこと言っても、ミティアさんはかなり強力な魔力を持っているはずですよ!? 僕が持たない。魔石もないのに」
サキは障壁の効力を優先し、範囲を狭めていた。だが、片手で支えられるのもやっとの状態。ましてやミティアもそれなりの魔法を手に掛ける程度には強いのだ。ここにいる『誰かさん』が手ほどきをしていた気がする。
サキは恨めしそうに圭馬を見た。
手負いのまま、これ以上無理をしろというのは酷だ。だからといって街を放置するのもあとあとまずいことになりそうだ。コーディの助力も期待できない。
サキは決断を迫られていた。
サキの障壁のおかげでダメージはない。だが、強風で足元はふらついた。ジェフリーはミティアを止めるならチャンスだと見た。
「ミティア、俺の話を聞いてくれ!!」
「は、なし……?」
風が止んで受け応えた。ミティアは目を瞑ったまま腕を抱え、凍えるような仕草をする。まだ理性が残っているようだ。希望が見えた。瘴気のせいか、あるいは強力な魔力の結界でもあるのか。これ以上前に進めない。
伸ばした手がミティアに触れようとした途端、今度は指先が焼けるような熱を感じた。瘴気が悪さをしているようだ。触れるなという意味なのだろうか。この手を引っ込めたら、一生後悔する。いや、後悔ならとうの昔にした。今は助けたいと手にも体にも力が入った。
ミティアは目を瞑った状態なのに、まるでジェフリーが見えているような反応を示した。首を振って絶叫する。
「今のわたしに、触れないで! ジェフリーが、死んじゃう!!」
「……っ!?」
ジェフリーは痛みを堪え、額に汗が滲んだ。こんなもの、ミティア本人が抱えた苦しみや悲しみに比べたらずっと軽いはずだ。伸ばした右手の平がジリジリと焼ける。もう少しで触れることができるというところ、ミティアは叫んだ。
「いや……いやああああああ!!」
再び突風が襲った。ミティアの叫びに反応するように邪神龍は巨体をうねらせ、凍っていた波を弾き飛ばした。大きな波を立てている。
気の利いた助言ができるわけでもなく、圭馬とショコラはサキの足元にしがみ付いていた。飛ばされまいと必死だ。
「まずいよ、弾かれる!!」
「こんなっ……」
ただでさえミティアが放つ攻撃を防ぐので手一杯だというのに、邪神龍が高波を起こした。このままでは自分たちだけではなく、フィラノスまで波に呑まれてしまう。
諦めかけたそのとき、サキの杖にコーディの手が添えられた。手には複数の魔石を握っている。コーディも自己流で魔法を使うと言っていた。まだ魔石の残りがあるとは驚きだ。これはサキの助けになる。
「ちょっとならいけるでしょ!?」
「コーディ、ありがと」
「タイミング、よく見てよね!!」
高波が襲い掛かろうとしている。サキはやってやるが半分、残りの半分は諦めだった。障壁の範囲を町全体に広げ、波が襲う頃合いで威力を強める。難しくはない。目は見えているのだから。難しいのは体力の配分。サキは浄化の前に体が負けないかを懸念していた。
「だめ!! サキ、そんな無茶をしないで!!」
またミティアが叫んだ。凍てつく空気が、海も波も、高波も凍らせる。邪神龍も凍らせる勢いだ。だが、驚いたのは、そこにサキがいると認識していたことだ。目を瞑り、明らかにこちらを見ていない。
サキは驚き、ミティアを見る。
「ミティアさん!? どうして……」
自分のことなど眼中にないと思っていた。サキは複雑な思いを抱いた。しまい込んでいた淡い気持ち。報われない想いだと思っていたのに。こんな危機迫る状況で自分を気遣ってくれるなんて
心を乱すサキ。そんなサキの心をコーディは理解していながら言った。
「ねぇ、これじゃあまるで、ミティアお姉ちゃんは、邪神龍を抱えながら耐えてコントロールしようとしてるみたいじゃない? サキは持久戦がしたいの?」
添えた手は下ろさず、障壁に助力しているが、コーディの言っている線は正しいかもしれない。答えが見えそうになった。
ジェフリーは突風に耐え切れず、弾き飛ばされた。障壁地帯から大幅に後退し、凍てつく地面に伏せられている。しかもすぐに起き上がれなかった。足を挫いたように体が起こしにくい。
サキはいったん障壁を解いた。
「コーディ、ジェフリーさんのところへ!」
「おっけーだよ」
コーディはサキを抱え、ジェフリーのもとへ飛び寄った。サキが自力で歩くには厳しい。そのためこの手段を取っている。
辺りは凍っているが、ミティアの攻撃は止んでいた。少しの間なら、作戦会議ができそうだ。
コーディはジェフリーに手を貸そうとした。
「だ、大丈夫? 手、すごい火傷だよ」
ジェフリーはコーディの手を払って拒否した。体液なのか、血なのかはわからないが、右手の平から滲んでいるものを膝で拭う。拭ったのに、感覚がほとんどない。手がなくなっているのかとも疑ったが、感覚は鈍っているもののしっかりとまだ付いている。
作戦会議の流れに圭馬が反応した。気になることを言う。
「お姉ちゃんの適合属性に氷なんて出なかったよ。自分と相性の悪い属性を使うと、魔力も体力の消耗も激しいはず」
圭馬がミティアの様子に異変を感じていた。それはサキも同じだった。ミティアが魔法を身に付ける際に、圭馬が適性検査をしているはずだ。直感とは言え、ミティアは火や光の属性と相性がよかったと出た。だとしたら、彼女は真逆の環境にいる。
「のぉん……ミティアさんも策士にでもなったのかのぉん」
ショコラの言葉が最大のヒントになった。
サキはあることに気が付いた。それをジェフリーに打ち明ける。
「そうか。ジェフリーさん、わかりましたよ」
「ミティアを助ける方法か?」
「いえ、多分このまま魔力暴走を続けると、ミティアさんは本当に死んでしまいます」
やっといい言葉が聞けるのかと思えば、一番聞きたくない言葉だった。これにはジェフリーも舌打ちをした。嫌悪感をむき出しにして、やっと立ち上がる。足元はふらついていた。
サキはジェフリーに提案を持ちかける。
「僕がミティアさんの立場だったら、好きな人に、殺してくれと願うでしょう。同じ立場だったら、ですが……」
「……っざけんな!! ここまで来て、そんな答えが聞きたかったわけじゃない!!」
「僕が地下の研究所でかけた魔法がまだ効いているのなら、これ以上は悲しい存在は生まれない。だから、ミティアさんが抱えたたくさんの苦しみや悲しみ、憎悪を浄化すれば連鎖して邪神龍も消えるんじゃないかと。自信はないです。ないですが……」
「……言ってくれ」
「その……死にかけというか、半殺しというか、弱らせるというか? 僕にはとてもできませんが……」
「なっ!? お前、正気かッ!?」
サキは視線を合わせない。言っていることは真面目なのだろうが、ふざけているようにしか思えない。ジェフリーは額に手を付き、この状況を嘆いた。何度も首を振って真剣に考え込む。
ありえない。信じられない。どうして、どうして。ジェフリーの頭の中で、本当にこれしか手段がないのかと思考がぐるぐるとした。気分も悪い。考えすぎなのだろうか。いや、これは瘴気のせいにしてしまおう。ジェフリーは苦痛に顔を歪ませた。
この案に頭を悩ませたのはジェフリーだけではない。
使い魔として、賢人として、圭馬もサキの意見に同調した。
「要は弱らせて浄化なんだろうけど、やり方が強引だよね。もちろん、それが有効なのはわかってはいるけどさぁ?」
コーディは弱らせて浄化させる戦略に疑いを持っていた。
「私にも無理だなぁ。でもさぁ、それが本当に正解なのか、怪しくない?」
やり方に納得がいかないのはジェフリーも思っていた。だが、ショコラが口出しをして来ない。この賢人が何も言わない。つまり、この判断は正しいのだろう。
触れることも許されなかったのに、攻撃など通じるのだろうか。それ以前に、傷付けることが可能かというと、良心面で許せない。こんなにむごたらしい選択肢など、今までなかった。できれば夢で終わらせてほしいくらいだ。念のため聞いてみよう。ジェフリーは鈍い頭痛を抑え込み、ショコラへ質問をした。
「ばあさんはどう思う」
「半殺しの達人がおった気がするがのぉん? 今から呼ぶのぉ? 待てるかのぉん?」
冗談かと疑ったが、本当にこれが正解らしい。半殺しの達人とは、おそらくクディフだ。彼には貸しがたくさんある。あまり世話になりたくないし、待つような時間もないだろう。
好きな人を傷付けるなんて、どんなドラマや映画だろうか。ジェフリーは汗と火傷の手でひどい顔をしている。その表情は苦痛を堪えるようだった。腰の剣を引き抜いて構える。
「……わかった。俺がやる」
他の誰かに任せて逃げるのは嫌だった。そう、逃げたくなかった。向き合って、ミティアの感情を受け止めようと思う。恨まれるかもしれない。嫌いになられてしまうかもしれないと思いが交差する。
サキはジェフリーの複雑な表情を読み取った。
「ミティアさんはもっと色んな思いが混在する中、一人で戦っています。悲しみや憎悪を聞きながら、死にたい思いや、死にたくない思い。世界を救いたい思い、仲間を助けたい思い。あとは……ジェフリーさんに迎えに来てほしい思いでしょうかね」
サキは読心術でも使ったかのような呆れ疲れた笑みだ。
今度聞いてみよう。機会があるのなら。
ジェフリーは剣の柄を握る手が震えているのがわかった。火傷のせいで感覚が鈍い。
「さっきは触れることもできなかったのに……」
ジェフリーに独り言にショコラが反応した。
「それは心に触れるの間違いじゃのぉん?」
「ばあさん?」
「ほむぅ、余計なことを言ってすまんのぉん」
心に触れるとは、意味深な発言だ。
ジェフリーは思い返してみる。
ミティアの心に触れる。単純なようで難しい。ミティアは一人で『声』を聞き、負の感情を抱え込んでいる。では、ミティア自身の負の感情はどこへ行くのだろうか。ミティアは何を抱えきれていないというのだろうか。神様が言った導きを思い出した。自分の力で『未来』へ導けるだろうか。期待と不安が交差する。
結局、すべての責任はジェフリー一人で背負う形になってしまった。
その謝罪も込められているのだろう。ショコラはわかりやすくも珍しく、サキに寄り添った。視線はそのまま足元から上がってサキと目が合った。サキも悲痛な表情だ。
「あまり時間は掛けないで終わらせたいよな」
「……嫌ですけど、ちゃんと見届けます。ジェフリーさんだけが悪者じゃないですよ」
すぐに目線は逸らされた。疲労もあるのかもしれないが、少なくともサキの目は光を失っていない。最後まで味方だと言ってくれたようなものだった。
これが、どんなに心強いものか。
「最高の友だちが味方なんだ。これほど信頼できる奴はいない」
サキがビクッと反応する。その理由は自分が褒められているからだ。彼は持ち上げられることや褒められること、認められることには過剰な反応を示す。
男の友情真っ最中だが、コーディが口を挟んだ。
「もっともっと褒めてやっていいよ」
魔石を持ったままニカリと歯を見せている。サキのキャッチフレーズを奪って何やら誇らしげだ。当然サキは口を尖らせ、不満そうにしている。遊ばれていることに早く気が付いてもらいたい。
相談も終わったが、ミティアはおとなしいままだ。作戦会議中に攻撃を仕掛けることもできたはず。だが、その様子はなかった。黒い瘴気に身を包みながら蹲って息を乱している。
この冷気の中でミティアの吐く白い息が、まだそこに存在していることを示していた。
「うぅぅう……ぁあぁぁぁ……」
苦しそうだ。こんな声は今まで耳にした記憶がない。
ミティアの声はもっと可愛らしい。だが、どこか芯を持っていて、力強さがあるのも特徴だった。それが、まるで怨霊でも憑依したような、おぞましい声をしている。
混在する意識が、己の意識と戦って苦しんでいることがこれだけで理解できた。
ジェフリーは周辺を確認する。サキはコーディと再び後退した。ミティアは苦しんでいる様子だ。それは邪神龍を抑え込もうとしているのかもしれない。邪神龍は動きを止めている。
「ミティア、どうしたらいい? どうしたらお前は楽になれるんだ? また、心から笑ってくれるんだ?」
ここでも確認を取った。ミティアに意志が残っているのなら、傷付けたくないのが本音だ。いっそのこと、彼女でなければこんなに苦悩はしなかった。
ミティアは目を開き、ジェフリーに目を向けている。ジェフリーが握っている剣を見て、立ち上がった。
「わら、う……?」
悲しみに満ちた瞳がこちらを向いている。よく知っている澄んだ綺麗な瞳なのに、潤んでいた。ミティアの本性が見え隠れしている。その顔を瘴気が覆った。ミティアはうっすらと笑みを浮かべていた。
「滅びよ!! 愚かな人間……」
意識は一瞬にして別の者に乗っ取られていた。剣を見たせいか、殺気立っている。今度は氷を砕くほどの激しい雷が走った。少し距離を置いた場所からサキが再び障壁を張っている。だが、残された力ですべてを防ぐことはできない。ミティアが放った雷は残っていた船着き場の街灯をショートさせた。小規模であったがいくつかの爆発が起こる。
雷を扱うなど、ミティアの適合属性ではない。身を削る行為に等しい。ミティアではない誰かが、ミティアの体を乗っ取ろうとしている。それは目に見えて明らかだった。
ミティアは信じられない速さでジェフリーに接近戦を仕掛けた。しかも細身の剣を抜いている。
ジェフリーはミティアによる素早い剣戟で攻め込まれた。ジェフリーは手を焼かれ、その手で剣を握り、受けている。今まで鈍っていた神経の奥まで響く一撃だった。並々ならない痛覚に思わず顔が歪んだ。軋む剣の向こうで中身のない笑みを浮かべるミティアの目は、知っている目をしていない。
この笑みはどこかで見覚えがある。上辺だけで、中身がない『誰か』のような錯覚を覚えた。竜次に似ているがもっと違う『誰か』だ。鈍い頭痛が走る。
受け止めて気が付いたことがもう一つある。ジェフリーは子どもに言い聞かせるように優しい口調で言う。
「ミティアの剣は早いよな……」
「ふふふっ……」
「でも、どうして左なんだ?」
ミティアは利き手ではない方で刃こぼれした細身の剣を持っている。どうして左で剣を持つのか。
これも何かの抵抗を試みているのだろうか。ジェフリーはミティアと目を合わせ、訴えかけた。
「お前は誰だ?! 俺の……大切な、ミティアを返せ!!」
ジェフリーは剣を弾き返し、ミティアを押し退けた。ミティアは剣を握ったまま後退し、足元を崩しながらまだ立っている。本来のミティアなら、ジェフリーの力強い剣戟を食らって立っていることはできないはずだ。剣を手放し、倒れてしまうはず。
ミティアではない『誰か』は態勢を直し、じっとジェフリーを見ていた。そして空を仰ぎ、肩を震わせて笑う。
「ははははは……あなたの? 大切な?」
ジェフリーは背筋に悪寒が走った。直感がこの状況はまずいと訴える。『誰か』は、ミティアを支配したがっているわけではない。だが、次の言葉で目的が見えた。
ミティアではない『誰か』はジェフリーに向かって、まるで呪うように、ねっとりとまとわりつくような声で言う。
「何を言うのですか? この世界で、ミティアを一番愛しているのはわたしですよ。ジェフリー・アーノルド・セーノルズ」
ジェフリーは確信した。ミティアではない『誰か』の正体、それはルッシェナだ。ミティアが受け入れられないのも無理はない。抱え込めるはずがない。ミティアにとっては最大のトラウマだ。ルッシェナの蹂躙がここまで及んでいたとは想像もしなかった。
どうすればいいのか、答えがわからない。ジェフリーはルッシェナとはもう関わりたくないと思っていた。いったいルッシェナの何がここまで執着させるのか。それを知らない。
ジェフリーはミティアを救う前に立ちふさがる強敵に絶望した。答えが見えない。答えが見えない。
ここに神様がいたら、何を助言してくれるだろうか。いや、神様は世界を救うことに助言をくれるだろう。人間のいざこざには首を突っ込んではくれなさそうだ。こうやって誰かの助言を頼りにしていた。それはサキやローズ、仲間の誰かだ。自分で答えを導いたことは圧倒的に少ない。
ルッシェナは剣を持ち直し、再びジェフリーへ斬り掛かった。
迫る剣戟をジェフリーは受け止める。だが、受け止めただけではなく、『変化』に気が付いた。
向かい合っていたのは他ならぬミティアだった。
刃が軋む向こうではミティアは泣いていた。意識だけはミティア。ジェフリーは苦しんでいるミティアを見るのがつらかった。
「ミティア……ごめんな」
「ジェフ、リー……」
ミティアの力が弱まった。その好機でジェフリーはミティアを押し退ける。弾いた勢いでミティアの脇をかすめた。避けた服から見える白い肌、遅れて血が滲んだ。これだけで心が痛い。
弾かれた勢いのまま、ミティアが持っていた細身の剣は凍った地面をカラカラと滑った。剣につられるように、ミティアも膝を着いた。今なら彼女を仕留められる。
卒業した剣術学校の誰もがこれを好機に思うだろう。敵を仕留められるのだ。自分は生き残れるのだ。国の兵士に志願したら即入れてもらえるくらい喜ばしいこと。そのはずなのに、振り上げた剣は愛しい人に下ろせなかった。
こんな甘さを捨てきれないのがジェフリーだ。彼の手からも剣が零れ落ちた。膝を着き、ミティアの背中に手を回す。
「やっと、触れられた。もう、一人で抱えないでくれ」
己が運命を知りながら、ジェフリーはミティアに唇を重ねた。やっと自分からキスをすることができた。それも長くはない。喉から上がって来る熱いものを抑え込もうと必死だった。身を引くつもりはない。胸にミティアの冷たい手を感じながら、深く、また深く抱き寄せた。
「ミティアの苦しみや悲しみはこんなものじゃないだろう?」
「ジェフリー、わ、たし……」
ミティアの声が震える。それもそのはずだ、ミティアは左手に円舞剣を持っていた。その剣は目の前の愛しい人の胸を突いている。
「あ……あぁ……」
「しくじったのかもしれないな、俺には……ミティアを傷付けるなんてできない」
「や……やめ……ジェフリー!!」
ミティアは抵抗を試みる。だが、ジェフリーは手を放そうとしない。
ミティアは強く抱き締められた。そのせいで、剣はジェフリーの中へみるみる入り込む。肘からは生暖かく、赤黒い鮮血が伝い、滴る。混在する意識で一瞬の入れ替わりがジェフリーを傷付けてしまった。いや、このままでは彼は死んでしまう。刃は肺に達しているだろう。
ミティアの中で、負の感情が溢れた。覆い尽くしたのは絶望だ。もう、抑えきれない。
ジェフリーはしばらく堪えていたが、血を吐き、脱力してしまった。凍り付いた地に伏せた。赤黒い血が広がる。
「……」
ミティアは握ったままの円舞剣を同じように自分の胸に突き刺した。右手には別の物を握ったまま。
離れて見ていたサキは我が目を疑った。コーディも息を飲んでいる。
サキはふらふらと一歩、また一歩とジェフリーに歩み寄った。
「ジェフリーさん、ミティアさん……?」
その足は、糸が切れてしまった操り人形のように力がなく、今にも膝を折って倒れ込みそうだ。
その状態のサキをコーディが支えに駆けつけた。
「ちょっとサキ!! ダメだよ、まだ邪神龍がいるでしょ!?」
コーディは今にも動き出しそうな邪神龍を警戒していた。主を失った邪神龍は本当に暴走しかねない。それこそ、やり場のない苦しみや悲しみがミティアという器によって制御されていたのなら、あとは想像できる。
状況は一転する。コーディがサキを支えたのち、ショコラがサキとコーディに向かって叫んだ。
「主ぃ!! 今なのぉ!! 浄化をするのぉっ!!」
弱らせて浄化する条件は整っている。だから浄化を優先しろとショコラは訴えていた。もちろんそれは理に適っている。
サキは頭では理解していたが、すぐに反応できない。切り替えられずにいた。それはコーディも同じだった。
コーディは倒れている二人を抱えて逃げることも考えていた。現実的ではないことはわかっている。それでも手当てはできるはずだと考えていた。少なくともサキよりは状況を理解している。コーディはショコラの様子を見て、間違いないことを察した。
圭馬は何も言わない。もちろん足元にはいるのだが、耳も尻尾も下げてしまい、諦めているようにも見えた。
コーディはこれも確認し、サキに向かって言う。
「サキ、今はこれ以上被害が広がらないようにしなきゃ!」
「信じ、られ、ない……」
ショコラだけは現実を見据えている。それが何を意味するのか。何か望みがあるのだろうか。
サキは浄化の呪文を詠唱する。血に染った惨状に我が目を疑いながら、ブローチを撫でた。
何も難しいことはない移動のはずだった。静かな船着き場に積んであった木箱が弾け飛んだ。
ジェフリーだけが着地に失敗した。
「……ってぇ!!」
極め付けは、石床に尻もちまで着いた。だが、着地失敗かと思いきや、隣ではサキとコーディがちゃんと立っている。見下すようなサキの視線。ジェフリーはこれに気が付いた。これは意図的な行為だとすぐに察知した。当然食らい付く。
「わざとか……」
「そうですが、何か?」
「言いたいことがあるなら言ってくれ!!」
サキはそっぽを向いてしまった。
ジェフリーは理由がわからず、納得していない。立ち上がって埃も払わないままサキの胸倉をつかんだ。コーディが止めに入ろうとするが、彼女は利き手だけしか使えない。どうしても非力だった。
「いい加減にしてくれ!!」
「それはこっちの台詞です!!」
怪我をしているせいもあって痛がっている。すぐに開放し、ジェフリーは首を垂れた。
この頃合いでコーディが説教をしている。
「やめなよ。そんなことしてる場合なの? ジェフリーお兄ちゃん、大人げないね」
やけに手厳しい。ジェフリーは眉間にしわを寄せた。
口を挟むのはコーディだけかと思っていたが、しっかり圭馬も便乗した。
「あーあ、みっともない。今、世界が大変だっていうのに、ジェフリーお兄ちゃん自覚あるの!? 作戦も何も聞いていないけどね?」
こうなるとジェフリーが完全に悪者だ。だが実際、悪者である自覚はある。
「のぉん、どこなのぉ!?」
ショコラは便乗しないが、目を凝らして海を見ている。霧のようなものが掛かって視界がよくない。邪神龍を探していたのはすぐにわかった。
現在は夜だ。見えなくても仕方がない。だが、街の明かりがあるのだから、多少は見通しがいいはずだ。
一同揃って海を見ていると、歯切れのいい女性の声がした。
「騒がしいね、どうしたんだい?」
揃って声の方へ向き直った。
小さいランタンを持った人影が見える。栗色の髪がポニーテールになっているが、軽くウエーブの掛かった特徴と声、それから釣り竿を持っている。
サキは驚きの声を上げた。
「お、お師匠様!?」
驚いたのは二人もそうだ。時間はもうすぐ夜明け。かすかに空が藍色に染まる。なぜアイラがこんな所にいたのかは、釣り竿と、腰の箱が語っている。
「おばさんこそ、こんな時間に何を!?」
ジェフリーはわかり切った質問をした。そのせいで、コーディとサキはジェフリーに白い目を向けた。
そんな中でもアイラはちゃんと答えてくれる。
「何って、夜釣りさ。あんたたちこそ。二人は怪我をしているし、天空都市に行ったんじゃないのかい?」
アイラは質問までした。聞いていた話と違うとアイラは驚く。それもそうだろう。正義だのなんだの振り回しておいて、危険を冒してまで行ったはいいが、何かをした、何かを得たといういい報告が一切ない。それどころか、サキやコーディは怪我をしているし、皆がここにいるわけではない。
すぐに答えが帰って来ないのをいいことに、アイラはさらに質問をした。
「それで、天空都市で財宝でも見付かったかい?」
やっと答えたのはサキだ。
「財宝どころか、僕たちは大切なものを失ってしまったかもしれません」
「んー? ひょっとして、ミティアちゃん?」
アイラは多くを詮索せず、顔色だけで推測したようだ。当然ジェフリーもサキも驚いた。反応が正直でアイラも呆れている。読心術でも学んだのかと疑いを持ちたくもなったが、今は伏せておかねば話が脱線する。
アイラは呆れつつ、海を見て言う。
「今日は変な魚ばっかり釣れたのさ。深海魚とか、この辺りに存在しないような魚とかね。あと、波も高いし満潮でもないのに潮位は高かった」
この霧の中で釣りをして、変化に気付けるなどよほどだ。伊達に長生きをしていないアリューン神族の王族だが、これも指摘まず、話の脱線を未然に防いだ。
アイラは腕を組み、主にジェフリーとサキに向けて言う。
「で、助けに行かないのかい?」
サキは、その気持ちはあると主張した。
「行きたいです。少なくとも僕は!」
ジェフリーへの当て付けにも思える主張だ。サキは一体どうしたのだろう。ずいぶんと当たりがきつめだ。ジェフリーの表情は渋い。
アイラはサキの態度を見て、次に呆れて何も言えなくなっているコーディも見た。そして判断した。
「ははーん、こんなときに喧嘩だね。あんたたち?」
コーディは翼を伸ばし、びくりと驚いた。
「わっ、アイラさんって、そういうのも鋭いね」
観察力は大したものだが、師として、母親としてサキの表情を汲み取る。
「ハッキリと言っておやり。ジェフリーが悪いって」
アイラは多くを語らない。怪我の理由も追及しない。だが、アイラにはわかることがある。独自の情報網と自らの生い立ち、持っている情報、それから一行の目的。つなぎ合わせると、良し悪しはジェフリー次第なのではないかと辿り着いた。
サキは言いづらそうだ。アイラに対しても、ジェフリーに対しても、だ。
「で、でも……」
「ね、彼女に守ってもらった実感がないもんね。それに、送り出してくれた仲間に感謝もしていないだろう? そりゃあこの子が怒っても仕方がないだろうさ?」
アイラはついにジェフリーへ当て付けた。
ジェフリーはその理由を理解して唇を噛み締めた。その指摘が悔しそうだ。大切な人のことだけで頭がいっぱいだった。仲間のことなど気を遣えなかった。
アイラはジェフリーの反応をうかがい、もう一度海を見た。海に変化があらわれる。
「さぁて、どうしたもんかね。あたしゃ、首を突っ込まない方がいいかもしれないね」
先ほどまで霧の向こうは何も見えなかったはずだ。だが、大きな影が見える。静かな船着き場のはずが、波が高くなり、何かを引き摺る音までする。
警戒をしていると、一同は声を掛けられた。
「そこで何をしている!! ここは釣り禁止だぞ!?」
フィラノスの街の人だ。釣り竿を持ったアイラに向けてなのだろうが、この状況で街の人の目に入ったのはまずかったかもしれない。
ランタンやライトを持った複数人の役人だ。誰かに見付かることは想定していたが、誤解を招いてしまったようだ。
「お前たち、ギルドで有名な一行だな? まさか、黒い龍の仲間なのか!!』
「人を呼んで来い!!」
「騎士団を読んで来た方がいいかもしれないぞ!!」
「隊長、あの女の子は保護するべきなのでは!?」
ざわざわと騒ぎ立て、何人か街の方へ走って行った。気になる発言もしていたが、『あの女の子とは』てっきりコーディを指すのだと思っていた。いや待て、場が混乱して来た。
サキとジェフリーがお互いどうするか相談を始めようというときだ。この中で比較的目のいいコーディが声を上げた。
「ミティアお姉ちゃん!!」
相談どころではない。注目した先には、黒い瘴気を身に纏ったミティアが立っている。この状況は沙蘭で見た魔女に酷似している。
役人の一人が声を上げた。
「黒い龍だ!! お前たち、仲間なのか!?」
混乱したこの状況で誰が何を説明できるだろうか。瘴気を纏ったミティアの背後から大きな影が近付いて来る。邪神龍だ。サキですら考えすぎて固まっている。
見兼ねたアイラが行動に出た。
「あんたたち、自分のことをしっかりとおやり。もしかしたら、今回ばかりはあたしゃ力になれないかもしれないよ」
アイラが動いたことによってサキが我に返った。一瞬だけ目が合ったのに、頷きもできないままだ。
アイラは詰めかけた役人の相手をする。
「この子たちは関係ないよ!! それより何をぼさっとしてるんだい!? 街の人たちを避難させな!! ギルドからも人を集めて……早くするんだよッ!!」
釣り具を持ったまま、詰めかけた者たちに指示を出した。アイラが言うと威勢もいい上、よく声が通るので迫力がある。
おろおろと若干の乱れはあったが、隊長らしき人が街を優先したようだ。明かりが乱れ、アイラも牽引して街中へ消えて行った。これでよかったのかもしれない。
静けさが訪れ、人目がないのを確認して圭馬が喋った
「キミのお師匠さん、多くを話さなくてもわかったことをしてくれるよね」
圭馬は切り替えができていないサキに声を掛けた。
サキは頷いて返す。本当にアイラには世話になってばかりだ。ただ、少し意味深なことを言われた。「力になれないかもしれない」と言っていた。それが引っ掛かっていた。だが、今は目の前に集中した方がいい。
サキは怪我とは別に、全身から血の気が引くような感覚に襲われた。直感が体に危機を知らせている。
「ミティアさん、あれでは魔女、です」
戦って勝てる相手ではない。いや、戦ってはいけない。なぜなら、相手はミティアだからだ。ジェフリーも危機を感じていた。
「俺がしっかりしていれば、こんなことには……」
「そうですよ! ジェフリーさんにお任せして、初めて後悔しました」
悲痛な表情を浮かべるジェフリーにもサキは当たりが厳しいままだ。
アイラのおかげで、街の人の安全と、部外者が出しゃばるのは回避できた。だが、本番はここからだ。
邪神龍と魔女化してしまったミティア。敵として対峙したくはなかった。
ショコラは背中を丸める。
「ミティアさぁん……こんなむごいことがあっては悲しいのぉん」
ミティアは明らかにこちらを認識していた。緑色の澄んだ瞳は悲しみに染まっている。輝きはなく、悲壮感を帯びてジェフリーをじっと見ている。
圭馬はささやかな助言を申す。
「完全に、ではなさそうだね。『こちら側』に引き戻せるチャンスはありそうな気配だよ。ただ……」
圭馬はジェフリーを見上げ、次にサキを見上げた。
「暴れちゃうだろうね。お姉ちゃんのことだから、自分ではない意識に支配されまいと抵抗はすると思うけど」
サキははっとした。自分の役目はこれしかない。
「それじゃあ、沙蘭で襲って来た邪神龍と同じ状況です。僕は、これ以上邪神龍をフィラノスに入り込まないようにしないといけない、のかな?」
ショコラも焦っているようだ。
「街を壊せば人も殺してしまうのぉ!!」
それは避けたい。まだミティアを助けられるのなら。きっと彼女は、それこそ後悔し、嘆き、苦しむであろう。誰よりも人の痛みをわかっているからこそ、そんなことは望まない。
コーディはこのまま臨戦になるのかと覚悟をしていた。
「早くお姉ちゃんを助けないと!!」
「待って、コーディ!!」
「うぇっ!? サキ、どうしたの!?」
一刻も早くミティアを助けようと意気込むコーディだったが、サキは冷静に止めた。サキはジェフリーに視線を向ける。
「きっと、僕たちの声も言葉も、ミティアさんに届きません」
「うわー、そっか。でも、そうだよね。あれ、絶対にジェフリーお兄ちゃんを待ってるんだもん。助けてって言われたんじゃない?」
ジェフリーはコテンパンにされた気分に陥った。だが、あとには引けないところまで来てしまった。もう本当に最後かもしれない。ジェフリーは一歩前に出て背を向けたまま言う。
「サキ、コーディもありがとう……」
「やっとお礼言ってくれた」
「……!?」
答えたのはサキだ。ジェフリーはサキがへそを曲げていた理由がやっと把握できた。
サキは僅かに機嫌を持ち直している。この様子にジェフリーはやっと笑うことができた。
「悪かった」
「僕は……僕たちは使い捨ての駒じゃないんですよ?」
サキの口調は柔らかい。声質も、ずっと親しみのあるものだ。このやり取りは懐かしい。ジェフリーは素直になれた。
「大切な仲間だ。サキもコーディも、使い魔のお前たちだって……」
もちろん圭馬もショコラも大切な仲間だ。助けたい思いばかりが先走って、何も見えなくなってしまっていた。頼れる人はここにもいるというのに。
ジェフリーの言葉を聞き、サキは続きを遮るように忠告した。
「おっと、ジェフリーさん、別れの言葉みたいな湿っぽいのはだめですよ」
サキはジェフリーから離れるように足を引いた。
「どこまで守れるかわかりませんが、ジェフリーさんはミティアさんを連れ戻してください。しかるべき頃合いで僕は浄化に移ります。コーディ、サポートをお願い」
「おっけー。あんたの足になる以外は期待しないでね」
心の準備はいいらしい。サキは左手に杖を持っていた。右手はほとんど動かない。果たして体が持つのだろうか。
ジェフリーはサキへ振り返る。
「今度はしくじったりしない! 信じてる……」
「信じてくれなきゃ。僕だってジェフリーさんを信じられませんからね!!」
じっと向かい合って不敵に笑みを交わす。漢の友情……とでも言えば、聞こえはいいかもしれない。
感傷に浸る間もなく、冷たい風が抜けた。瘴気をまとったミティアは前屈みになり、体を震わせている。
「痛い、苦しい、哀しくて、悲しい。この世界は寒い……」
ミティアの声に共鳴するように、海の波が凍り付く。信じられない光景に一瞬は怯みそうになった。だが、引くわけにはいかない。
ジェフリーはミティアに向かって叫んだ。
「ミティア!! やめるんだ……こんなこと、したくないはず!!」
凍てつく空気が広がる。ミティアがいかに苦しんでいるのかがこれだけでうかがえる。
サキは障壁を展開した。邪神龍がおとなしいことが幸いだが、いつ暴走するかわからない。
「ジェフリーさん、行ってください!! 何があっても、ミティアを止めないと!!」
サキはコーディに抱えられ、後退した。まずはこの場を守る手段を取る。
ジェフリーは地を蹴った。ひたすらにミティアを想って叫び続ける。
「悲しまなくていいんだ!! 一人で抱え込まないでくれっ!!」
声が届いてくれることを信じていた。だが、ジェフリーの声はミティアに届いていないようだ。
「世界のために死ぬなんていやだ。いや、イヤ、嫌!!」
「ミティ……」
突風が起こった。これでは近付くこともできない。
ただの突風ではなく、街路樹も街灯も薙ぎ倒す勢いだ。船の積み荷らしき木箱もまるでクッキーが砕けるようにぼろぼろと崩れ散った。
これを見た圭馬はサキに違う導きをする。
「まずいよ。この場所だけ守っているようじゃダメかもしれない。障壁を広範囲にしないと街が壊れちゃうかもしれないよ! ただでさえ、フィラノスは国王不在なんだし、復興中なんだから」
圭馬の懸念は街の安全が確保できていないことだ。サキの障壁の範囲は自分たちの周りだけだ。ミティアが放った氷の風を防いでいた程度だが、障壁の外は氷の世界にでもなったような光景だ。一瞬で別世界へ変貌した。
サキも気持ちでは焦っていた。この場所だけ、この街だけで納まるとは思えないからだ。本当に世界を滅ぼしてしまうかもしれない。だが、体力面で今のサキにできることは限られる。
「そんなこと言っても、ミティアさんはかなり強力な魔力を持っているはずですよ!? 僕が持たない。魔石もないのに」
サキは障壁の効力を優先し、範囲を狭めていた。だが、片手で支えられるのもやっとの状態。ましてやミティアもそれなりの魔法を手に掛ける程度には強いのだ。ここにいる『誰かさん』が手ほどきをしていた気がする。
サキは恨めしそうに圭馬を見た。
手負いのまま、これ以上無理をしろというのは酷だ。だからといって街を放置するのもあとあとまずいことになりそうだ。コーディの助力も期待できない。
サキは決断を迫られていた。
サキの障壁のおかげでダメージはない。だが、強風で足元はふらついた。ジェフリーはミティアを止めるならチャンスだと見た。
「ミティア、俺の話を聞いてくれ!!」
「は、なし……?」
風が止んで受け応えた。ミティアは目を瞑ったまま腕を抱え、凍えるような仕草をする。まだ理性が残っているようだ。希望が見えた。瘴気のせいか、あるいは強力な魔力の結界でもあるのか。これ以上前に進めない。
伸ばした手がミティアに触れようとした途端、今度は指先が焼けるような熱を感じた。瘴気が悪さをしているようだ。触れるなという意味なのだろうか。この手を引っ込めたら、一生後悔する。いや、後悔ならとうの昔にした。今は助けたいと手にも体にも力が入った。
ミティアは目を瞑った状態なのに、まるでジェフリーが見えているような反応を示した。首を振って絶叫する。
「今のわたしに、触れないで! ジェフリーが、死んじゃう!!」
「……っ!?」
ジェフリーは痛みを堪え、額に汗が滲んだ。こんなもの、ミティア本人が抱えた苦しみや悲しみに比べたらずっと軽いはずだ。伸ばした右手の平がジリジリと焼ける。もう少しで触れることができるというところ、ミティアは叫んだ。
「いや……いやああああああ!!」
再び突風が襲った。ミティアの叫びに反応するように邪神龍は巨体をうねらせ、凍っていた波を弾き飛ばした。大きな波を立てている。
気の利いた助言ができるわけでもなく、圭馬とショコラはサキの足元にしがみ付いていた。飛ばされまいと必死だ。
「まずいよ、弾かれる!!」
「こんなっ……」
ただでさえミティアが放つ攻撃を防ぐので手一杯だというのに、邪神龍が高波を起こした。このままでは自分たちだけではなく、フィラノスまで波に呑まれてしまう。
諦めかけたそのとき、サキの杖にコーディの手が添えられた。手には複数の魔石を握っている。コーディも自己流で魔法を使うと言っていた。まだ魔石の残りがあるとは驚きだ。これはサキの助けになる。
「ちょっとならいけるでしょ!?」
「コーディ、ありがと」
「タイミング、よく見てよね!!」
高波が襲い掛かろうとしている。サキはやってやるが半分、残りの半分は諦めだった。障壁の範囲を町全体に広げ、波が襲う頃合いで威力を強める。難しくはない。目は見えているのだから。難しいのは体力の配分。サキは浄化の前に体が負けないかを懸念していた。
「だめ!! サキ、そんな無茶をしないで!!」
またミティアが叫んだ。凍てつく空気が、海も波も、高波も凍らせる。邪神龍も凍らせる勢いだ。だが、驚いたのは、そこにサキがいると認識していたことだ。目を瞑り、明らかにこちらを見ていない。
サキは驚き、ミティアを見る。
「ミティアさん!? どうして……」
自分のことなど眼中にないと思っていた。サキは複雑な思いを抱いた。しまい込んでいた淡い気持ち。報われない想いだと思っていたのに。こんな危機迫る状況で自分を気遣ってくれるなんて
心を乱すサキ。そんなサキの心をコーディは理解していながら言った。
「ねぇ、これじゃあまるで、ミティアお姉ちゃんは、邪神龍を抱えながら耐えてコントロールしようとしてるみたいじゃない? サキは持久戦がしたいの?」
添えた手は下ろさず、障壁に助力しているが、コーディの言っている線は正しいかもしれない。答えが見えそうになった。
ジェフリーは突風に耐え切れず、弾き飛ばされた。障壁地帯から大幅に後退し、凍てつく地面に伏せられている。しかもすぐに起き上がれなかった。足を挫いたように体が起こしにくい。
サキはいったん障壁を解いた。
「コーディ、ジェフリーさんのところへ!」
「おっけーだよ」
コーディはサキを抱え、ジェフリーのもとへ飛び寄った。サキが自力で歩くには厳しい。そのためこの手段を取っている。
辺りは凍っているが、ミティアの攻撃は止んでいた。少しの間なら、作戦会議ができそうだ。
コーディはジェフリーに手を貸そうとした。
「だ、大丈夫? 手、すごい火傷だよ」
ジェフリーはコーディの手を払って拒否した。体液なのか、血なのかはわからないが、右手の平から滲んでいるものを膝で拭う。拭ったのに、感覚がほとんどない。手がなくなっているのかとも疑ったが、感覚は鈍っているもののしっかりとまだ付いている。
作戦会議の流れに圭馬が反応した。気になることを言う。
「お姉ちゃんの適合属性に氷なんて出なかったよ。自分と相性の悪い属性を使うと、魔力も体力の消耗も激しいはず」
圭馬がミティアの様子に異変を感じていた。それはサキも同じだった。ミティアが魔法を身に付ける際に、圭馬が適性検査をしているはずだ。直感とは言え、ミティアは火や光の属性と相性がよかったと出た。だとしたら、彼女は真逆の環境にいる。
「のぉん……ミティアさんも策士にでもなったのかのぉん」
ショコラの言葉が最大のヒントになった。
サキはあることに気が付いた。それをジェフリーに打ち明ける。
「そうか。ジェフリーさん、わかりましたよ」
「ミティアを助ける方法か?」
「いえ、多分このまま魔力暴走を続けると、ミティアさんは本当に死んでしまいます」
やっといい言葉が聞けるのかと思えば、一番聞きたくない言葉だった。これにはジェフリーも舌打ちをした。嫌悪感をむき出しにして、やっと立ち上がる。足元はふらついていた。
サキはジェフリーに提案を持ちかける。
「僕がミティアさんの立場だったら、好きな人に、殺してくれと願うでしょう。同じ立場だったら、ですが……」
「……っざけんな!! ここまで来て、そんな答えが聞きたかったわけじゃない!!」
「僕が地下の研究所でかけた魔法がまだ効いているのなら、これ以上は悲しい存在は生まれない。だから、ミティアさんが抱えたたくさんの苦しみや悲しみ、憎悪を浄化すれば連鎖して邪神龍も消えるんじゃないかと。自信はないです。ないですが……」
「……言ってくれ」
「その……死にかけというか、半殺しというか、弱らせるというか? 僕にはとてもできませんが……」
「なっ!? お前、正気かッ!?」
サキは視線を合わせない。言っていることは真面目なのだろうが、ふざけているようにしか思えない。ジェフリーは額に手を付き、この状況を嘆いた。何度も首を振って真剣に考え込む。
ありえない。信じられない。どうして、どうして。ジェフリーの頭の中で、本当にこれしか手段がないのかと思考がぐるぐるとした。気分も悪い。考えすぎなのだろうか。いや、これは瘴気のせいにしてしまおう。ジェフリーは苦痛に顔を歪ませた。
この案に頭を悩ませたのはジェフリーだけではない。
使い魔として、賢人として、圭馬もサキの意見に同調した。
「要は弱らせて浄化なんだろうけど、やり方が強引だよね。もちろん、それが有効なのはわかってはいるけどさぁ?」
コーディは弱らせて浄化させる戦略に疑いを持っていた。
「私にも無理だなぁ。でもさぁ、それが本当に正解なのか、怪しくない?」
やり方に納得がいかないのはジェフリーも思っていた。だが、ショコラが口出しをして来ない。この賢人が何も言わない。つまり、この判断は正しいのだろう。
触れることも許されなかったのに、攻撃など通じるのだろうか。それ以前に、傷付けることが可能かというと、良心面で許せない。こんなにむごたらしい選択肢など、今までなかった。できれば夢で終わらせてほしいくらいだ。念のため聞いてみよう。ジェフリーは鈍い頭痛を抑え込み、ショコラへ質問をした。
「ばあさんはどう思う」
「半殺しの達人がおった気がするがのぉん? 今から呼ぶのぉ? 待てるかのぉん?」
冗談かと疑ったが、本当にこれが正解らしい。半殺しの達人とは、おそらくクディフだ。彼には貸しがたくさんある。あまり世話になりたくないし、待つような時間もないだろう。
好きな人を傷付けるなんて、どんなドラマや映画だろうか。ジェフリーは汗と火傷の手でひどい顔をしている。その表情は苦痛を堪えるようだった。腰の剣を引き抜いて構える。
「……わかった。俺がやる」
他の誰かに任せて逃げるのは嫌だった。そう、逃げたくなかった。向き合って、ミティアの感情を受け止めようと思う。恨まれるかもしれない。嫌いになられてしまうかもしれないと思いが交差する。
サキはジェフリーの複雑な表情を読み取った。
「ミティアさんはもっと色んな思いが混在する中、一人で戦っています。悲しみや憎悪を聞きながら、死にたい思いや、死にたくない思い。世界を救いたい思い、仲間を助けたい思い。あとは……ジェフリーさんに迎えに来てほしい思いでしょうかね」
サキは読心術でも使ったかのような呆れ疲れた笑みだ。
今度聞いてみよう。機会があるのなら。
ジェフリーは剣の柄を握る手が震えているのがわかった。火傷のせいで感覚が鈍い。
「さっきは触れることもできなかったのに……」
ジェフリーに独り言にショコラが反応した。
「それは心に触れるの間違いじゃのぉん?」
「ばあさん?」
「ほむぅ、余計なことを言ってすまんのぉん」
心に触れるとは、意味深な発言だ。
ジェフリーは思い返してみる。
ミティアの心に触れる。単純なようで難しい。ミティアは一人で『声』を聞き、負の感情を抱え込んでいる。では、ミティア自身の負の感情はどこへ行くのだろうか。ミティアは何を抱えきれていないというのだろうか。神様が言った導きを思い出した。自分の力で『未来』へ導けるだろうか。期待と不安が交差する。
結局、すべての責任はジェフリー一人で背負う形になってしまった。
その謝罪も込められているのだろう。ショコラはわかりやすくも珍しく、サキに寄り添った。視線はそのまま足元から上がってサキと目が合った。サキも悲痛な表情だ。
「あまり時間は掛けないで終わらせたいよな」
「……嫌ですけど、ちゃんと見届けます。ジェフリーさんだけが悪者じゃないですよ」
すぐに目線は逸らされた。疲労もあるのかもしれないが、少なくともサキの目は光を失っていない。最後まで味方だと言ってくれたようなものだった。
これが、どんなに心強いものか。
「最高の友だちが味方なんだ。これほど信頼できる奴はいない」
サキがビクッと反応する。その理由は自分が褒められているからだ。彼は持ち上げられることや褒められること、認められることには過剰な反応を示す。
男の友情真っ最中だが、コーディが口を挟んだ。
「もっともっと褒めてやっていいよ」
魔石を持ったままニカリと歯を見せている。サキのキャッチフレーズを奪って何やら誇らしげだ。当然サキは口を尖らせ、不満そうにしている。遊ばれていることに早く気が付いてもらいたい。
相談も終わったが、ミティアはおとなしいままだ。作戦会議中に攻撃を仕掛けることもできたはず。だが、その様子はなかった。黒い瘴気に身を包みながら蹲って息を乱している。
この冷気の中でミティアの吐く白い息が、まだそこに存在していることを示していた。
「うぅぅう……ぁあぁぁぁ……」
苦しそうだ。こんな声は今まで耳にした記憶がない。
ミティアの声はもっと可愛らしい。だが、どこか芯を持っていて、力強さがあるのも特徴だった。それが、まるで怨霊でも憑依したような、おぞましい声をしている。
混在する意識が、己の意識と戦って苦しんでいることがこれだけで理解できた。
ジェフリーは周辺を確認する。サキはコーディと再び後退した。ミティアは苦しんでいる様子だ。それは邪神龍を抑え込もうとしているのかもしれない。邪神龍は動きを止めている。
「ミティア、どうしたらいい? どうしたらお前は楽になれるんだ? また、心から笑ってくれるんだ?」
ここでも確認を取った。ミティアに意志が残っているのなら、傷付けたくないのが本音だ。いっそのこと、彼女でなければこんなに苦悩はしなかった。
ミティアは目を開き、ジェフリーに目を向けている。ジェフリーが握っている剣を見て、立ち上がった。
「わら、う……?」
悲しみに満ちた瞳がこちらを向いている。よく知っている澄んだ綺麗な瞳なのに、潤んでいた。ミティアの本性が見え隠れしている。その顔を瘴気が覆った。ミティアはうっすらと笑みを浮かべていた。
「滅びよ!! 愚かな人間……」
意識は一瞬にして別の者に乗っ取られていた。剣を見たせいか、殺気立っている。今度は氷を砕くほどの激しい雷が走った。少し距離を置いた場所からサキが再び障壁を張っている。だが、残された力ですべてを防ぐことはできない。ミティアが放った雷は残っていた船着き場の街灯をショートさせた。小規模であったがいくつかの爆発が起こる。
雷を扱うなど、ミティアの適合属性ではない。身を削る行為に等しい。ミティアではない誰かが、ミティアの体を乗っ取ろうとしている。それは目に見えて明らかだった。
ミティアは信じられない速さでジェフリーに接近戦を仕掛けた。しかも細身の剣を抜いている。
ジェフリーはミティアによる素早い剣戟で攻め込まれた。ジェフリーは手を焼かれ、その手で剣を握り、受けている。今まで鈍っていた神経の奥まで響く一撃だった。並々ならない痛覚に思わず顔が歪んだ。軋む剣の向こうで中身のない笑みを浮かべるミティアの目は、知っている目をしていない。
この笑みはどこかで見覚えがある。上辺だけで、中身がない『誰か』のような錯覚を覚えた。竜次に似ているがもっと違う『誰か』だ。鈍い頭痛が走る。
受け止めて気が付いたことがもう一つある。ジェフリーは子どもに言い聞かせるように優しい口調で言う。
「ミティアの剣は早いよな……」
「ふふふっ……」
「でも、どうして左なんだ?」
ミティアは利き手ではない方で刃こぼれした細身の剣を持っている。どうして左で剣を持つのか。
これも何かの抵抗を試みているのだろうか。ジェフリーはミティアと目を合わせ、訴えかけた。
「お前は誰だ?! 俺の……大切な、ミティアを返せ!!」
ジェフリーは剣を弾き返し、ミティアを押し退けた。ミティアは剣を握ったまま後退し、足元を崩しながらまだ立っている。本来のミティアなら、ジェフリーの力強い剣戟を食らって立っていることはできないはずだ。剣を手放し、倒れてしまうはず。
ミティアではない『誰か』は態勢を直し、じっとジェフリーを見ていた。そして空を仰ぎ、肩を震わせて笑う。
「ははははは……あなたの? 大切な?」
ジェフリーは背筋に悪寒が走った。直感がこの状況はまずいと訴える。『誰か』は、ミティアを支配したがっているわけではない。だが、次の言葉で目的が見えた。
ミティアではない『誰か』はジェフリーに向かって、まるで呪うように、ねっとりとまとわりつくような声で言う。
「何を言うのですか? この世界で、ミティアを一番愛しているのはわたしですよ。ジェフリー・アーノルド・セーノルズ」
ジェフリーは確信した。ミティアではない『誰か』の正体、それはルッシェナだ。ミティアが受け入れられないのも無理はない。抱え込めるはずがない。ミティアにとっては最大のトラウマだ。ルッシェナの蹂躙がここまで及んでいたとは想像もしなかった。
どうすればいいのか、答えがわからない。ジェフリーはルッシェナとはもう関わりたくないと思っていた。いったいルッシェナの何がここまで執着させるのか。それを知らない。
ジェフリーはミティアを救う前に立ちふさがる強敵に絶望した。答えが見えない。答えが見えない。
ここに神様がいたら、何を助言してくれるだろうか。いや、神様は世界を救うことに助言をくれるだろう。人間のいざこざには首を突っ込んではくれなさそうだ。こうやって誰かの助言を頼りにしていた。それはサキやローズ、仲間の誰かだ。自分で答えを導いたことは圧倒的に少ない。
ルッシェナは剣を持ち直し、再びジェフリーへ斬り掛かった。
迫る剣戟をジェフリーは受け止める。だが、受け止めただけではなく、『変化』に気が付いた。
向かい合っていたのは他ならぬミティアだった。
刃が軋む向こうではミティアは泣いていた。意識だけはミティア。ジェフリーは苦しんでいるミティアを見るのがつらかった。
「ミティア……ごめんな」
「ジェフ、リー……」
ミティアの力が弱まった。その好機でジェフリーはミティアを押し退ける。弾いた勢いでミティアの脇をかすめた。避けた服から見える白い肌、遅れて血が滲んだ。これだけで心が痛い。
弾かれた勢いのまま、ミティアが持っていた細身の剣は凍った地面をカラカラと滑った。剣につられるように、ミティアも膝を着いた。今なら彼女を仕留められる。
卒業した剣術学校の誰もがこれを好機に思うだろう。敵を仕留められるのだ。自分は生き残れるのだ。国の兵士に志願したら即入れてもらえるくらい喜ばしいこと。そのはずなのに、振り上げた剣は愛しい人に下ろせなかった。
こんな甘さを捨てきれないのがジェフリーだ。彼の手からも剣が零れ落ちた。膝を着き、ミティアの背中に手を回す。
「やっと、触れられた。もう、一人で抱えないでくれ」
己が運命を知りながら、ジェフリーはミティアに唇を重ねた。やっと自分からキスをすることができた。それも長くはない。喉から上がって来る熱いものを抑え込もうと必死だった。身を引くつもりはない。胸にミティアの冷たい手を感じながら、深く、また深く抱き寄せた。
「ミティアの苦しみや悲しみはこんなものじゃないだろう?」
「ジェフリー、わ、たし……」
ミティアの声が震える。それもそのはずだ、ミティアは左手に円舞剣を持っていた。その剣は目の前の愛しい人の胸を突いている。
「あ……あぁ……」
「しくじったのかもしれないな、俺には……ミティアを傷付けるなんてできない」
「や……やめ……ジェフリー!!」
ミティアは抵抗を試みる。だが、ジェフリーは手を放そうとしない。
ミティアは強く抱き締められた。そのせいで、剣はジェフリーの中へみるみる入り込む。肘からは生暖かく、赤黒い鮮血が伝い、滴る。混在する意識で一瞬の入れ替わりがジェフリーを傷付けてしまった。いや、このままでは彼は死んでしまう。刃は肺に達しているだろう。
ミティアの中で、負の感情が溢れた。覆い尽くしたのは絶望だ。もう、抑えきれない。
ジェフリーはしばらく堪えていたが、血を吐き、脱力してしまった。凍り付いた地に伏せた。赤黒い血が広がる。
「……」
ミティアは握ったままの円舞剣を同じように自分の胸に突き刺した。右手には別の物を握ったまま。
離れて見ていたサキは我が目を疑った。コーディも息を飲んでいる。
サキはふらふらと一歩、また一歩とジェフリーに歩み寄った。
「ジェフリーさん、ミティアさん……?」
その足は、糸が切れてしまった操り人形のように力がなく、今にも膝を折って倒れ込みそうだ。
その状態のサキをコーディが支えに駆けつけた。
「ちょっとサキ!! ダメだよ、まだ邪神龍がいるでしょ!?」
コーディは今にも動き出しそうな邪神龍を警戒していた。主を失った邪神龍は本当に暴走しかねない。それこそ、やり場のない苦しみや悲しみがミティアという器によって制御されていたのなら、あとは想像できる。
状況は一転する。コーディがサキを支えたのち、ショコラがサキとコーディに向かって叫んだ。
「主ぃ!! 今なのぉ!! 浄化をするのぉっ!!」
弱らせて浄化する条件は整っている。だから浄化を優先しろとショコラは訴えていた。もちろんそれは理に適っている。
サキは頭では理解していたが、すぐに反応できない。切り替えられずにいた。それはコーディも同じだった。
コーディは倒れている二人を抱えて逃げることも考えていた。現実的ではないことはわかっている。それでも手当てはできるはずだと考えていた。少なくともサキよりは状況を理解している。コーディはショコラの様子を見て、間違いないことを察した。
圭馬は何も言わない。もちろん足元にはいるのだが、耳も尻尾も下げてしまい、諦めているようにも見えた。
コーディはこれも確認し、サキに向かって言う。
「サキ、今はこれ以上被害が広がらないようにしなきゃ!」
「信じ、られ、ない……」
ショコラだけは現実を見据えている。それが何を意味するのか。何か望みがあるのだろうか。
サキは浄化の呪文を詠唱する。血に染った惨状に我が目を疑いながら、ブローチを撫でた。
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