【完結】愛する人には裏の顔がありました

風子

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三度目の破談

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「早く修道院に行くべきかしら‥‥」

ドレスもそのままで、ベッドに正面からパタンと倒れ込み顔を埋める。
悲しいのに涙も出てこない。
だってもう三度目だもの‥‥

「はぁ‥‥」

ため息しか出てこない。

「お嬢様!公爵家のライド様がお見えになっておりますが‥‥」

「えっ?ライド様が?
どうして、だって今日はライド様の為の夜会なのに!」

「今旦那様とお話されていますが、ミリディ様にお会いしたいと仰られておりますが、どうされますか?」

「‥‥いえ、ダメよ!
恥ずかしくて顔も合わせられないもの。
体調が悪くなったと言っておいてちょうだい」

「えっ!あの‥‥」

「そう言うと思ったよ!ミリーなら」

!?

その声にガバッと起き上がる。
戸の方を見れば、笑顔で立っているライド様がいた。

「やぁミリー、私に顔を見せないなんて、何て寂しいことをするんだい?」

「‥‥ライド様」

ベッドに倒れ込んだせいで髪もドレスも乱れたまま。

ソファーに腰掛けたライド様は、トントンと自分の横に座るように叩いている。
仕方なく隣に座ると、私の髪を直すように手で梳いてくれる。

「ミリーのかわいい顔を見にきたのに」

「かわいいなら三度もこんなことにはなりません‥‥。
しかも今日はライド様の帰国祝いの夜会でしたのに」

恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。

「ははっ、気にしなくていい。
君は何も悪くないんだ、そうだろう?
あの男にミリーは釣り合わない。
破談になった方がいいんだ。
あんな男にミリーは勿体ないからね」

そう言って優しく微笑むライド様は、ロベールトン公爵家の令息だ。
ロベールトン家は諸外国との外交を任されている名門家であり、そのうえライド様は女性達が大騒ぎするほどの美男子だ。
ダークブラウンのふわっとしたゆるいくせのある髪は色気があり、瞳は新緑のペリドットの宝石のよう。

三つ年上で兄と同じ歳であるライド様から見れば私は妹のようなものだろう。
幼い頃から父が公爵様と関わりのある仕事をしていたことで交流があり、よく遊んでもらっていた。

優しくて優秀なライド様は、皆が憧れる存在で、公爵家の地位の高さもあり王族との縁談話もあると聞いたことがある。

外交の勉強の為、隣国で三年間生活をされていたライド様はこの度終えられて帰国することになった。
今日はその帰国祝いとして公爵家で夜会が開かれていた。

私は婚約者である子爵家のレオン様と共に参加していた。

「ミリーという婚約者がいながら、他の女性にキスをするなんて最低な男だよ。
先程子爵とも話したが、すぐにこの婚約を破棄するそうだ」

「‥‥」

これが初めてではない。
三度目だ。
三度も破談になるなんて、今後の良縁は望めそうもない‥‥

一人目は侯爵家、二人目は伯爵家、三人目が子爵家のレオン様。
三人ともが私と参加した夜会で、他の女性と二人きりになり抱き合う姿を目撃され大騒ぎになり破談となっている。

一人目の時は世間は同情してくれたが、三度目ともなれば私に問題があると思われてしまうかもしれない。

「ミリーは気にしなくていいんだよ」

夜会で婚約者の浮気が発覚する度に、ライド様は慰めてくれる。
そういえば前の二回もすぐに駆け付けてくれていた。
本当に優しい人。


コンコンッ

ガチャ

「ミリディ?」

「!!ヘンリー兄様。‥‥あの、ごめんなさい」

「大丈夫か?謝ることはない。ミリディのせいではないよ」

「やぁ!ヘンリー」

「ここに来てたのか?ライド。
主役のお前がいなくなるなんて皆が心配して捜していたぞ」

「ああ、すまない。ミリーが心配で追いかけてきたんだ」

「‥‥。妹はもう大丈夫だからお前は戻れ。
皆がお前を待っている。
妹が夜会を混乱させて悪かったな」

「いや、ミリーのせいではない。
抜け出して悪かったな。すぐ戻るよ」

ライド様は立ち上がると私の頭を優しく撫でた。

「明日またミリーの顔を見にくるよ」

ペリドットの瞳を細めて優しく笑った。


ライド様が出て行くと、ヘンリー兄様は侍女のモニカにも部屋を出て行かせて私と二人きりになった。

「ミリディ。俺に詳しい話を聞かせてくれないか?
俺はミリディが帰った後、レオンを問い詰めたが酔っているのかまともな会話ができなかったんだ。
何故あんなことになったのか聞きたい」

「‥‥はい。
私とレオン様が公爵様にご挨拶を済ませ、ライド様のところへ行こうとした時、ハウスキーパーのスーザンさんに呼び止められて、久しぶりだから少し話し込んでしまったの。
それで気付いたらレオン様がいなくなっていて‥‥」

「そうか‥‥辛いことを聞いて悪いな」

「いいえ」

「レオンが他の女性と一緒だった時、お前は見たのか?」

「え?いえ、私は皆が騒いでる時に、公爵家のメイドが見ない方がいいと離れたところへ私を案内して座らせてくれたから何も見ていません」

「そうか‥‥」

ヘンリー兄様は何かを考えているようだったが、私がその姿を見ていることに気付くと「今日は早く寝た方がいいな」と言って出て行った。


婚約が決まるたび、父は喜んでくれていたのに、また花嫁姿を見せてあげることができなくなった‥‥
早く安心させてあげたいのに、何故こうもうまくいかないの‥‥。

















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