混血の子は純血貴族に愛される

銀花月

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不安

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 舞踏会の会場から外へと出たエイリアは、近くにあった柱を背にうずくまっていた。
 仮面を外し、見つめる先には手首に巻かれた包帯がある。

(ルディが謝ってばかりいたから、聞きそびれたけど、なんでキスしてきたのか聞けばよかった…)

 ルディが変だったのをエイリアは分かっていた。
 しかし、それが自分の匂いのせいだとは、気づいていなかった。

 キスの事に触れもせず、手首の痣は心配してくれるが、態度は変わらず…
 そんなルディにエイリアも忘れたフリをし、いつも通りにしてきた。気まずくなるより、そうするのが一番だと思ったからだ。

「…ルディは、サリーニァ様と結婚するのかな」

 お互いを見つめ、優雅に踊っていた二人を思い出す。

 二人が結婚したら混血を毛嫌いするサリーニァは、側近になることを許さないだろう。

「そしたら、僕はルディのそばにいられないね……」

 ポタポタと地面に水が落ちた。エイリアの頬を伝い、目から溢れこぼれ落ちる。

「うっ、ううっ……」

「どうしたんですか?」

 突然、横から声をかけられた。
 腕に顔を埋めているエイリアは、泣き顔を見られたくないので反応を返さずにいた。

「…エイリアさん?」
「え…」

 名前を呼ばれ、エイリアは思わず顔を上げてしまった。そこには、見覚えのある癖っ毛の黒髪が立っていた。

「やっぱり!エイリアさんだ!僕です、サクール=ヒルズです。甘いお菓子を頂きましたけど…覚えてませんか?」
「……覚えてる」

 慌てて涙を袖で拭いていると「どうぞ」とハンカチを渡されたので、エイリアはそれを受け取った。

「ありがとう…」
「差し上げますので、しばらく隣に座っていてもいいですか?」

 そういうとエイリアの言葉も待たずに、サクールが隣へと腰かけた。

「お腹空いてませんか?僕、いつもお菓子持ち歩いてるんです」

 ニコニコと笑いながらサクールは、ポケットからチョコや飴を次から次へと出してきた。
 どこに入っていたのか、というほど大量のお菓子がポケットから出てくるのでエイリアは驚いた。

「なんでそんなに入ってるの?」
「不思議なポケットなんです」

 その言葉に二人は思わずクスッと笑い合った。
 笑わせてくれようとしたサクールの気持ちが伝わってか、いつのまにかエイリアの涙は止まっていた。

「エイリア!」

 怒ったような声で呼ばれ、声がする方向を見つめた。
 息を切らし、険しい顔をしたルディが足早に近づいてくる。

「ルディ…」
「離れろ!サクール!」

 やってくるなり、サクールを掴み上げたルディにエイリアは驚きを隠せなかった。

「ちょっ、ルディ!やめてよ!サクール君は、ただ僕と喋っていただけなんだから!」

 すがりつき、ルディからサクールを離した。
 ルディの怒りを目の当たりにしたサクールは、三大貴族の喧嘩は買いたくないと、さっさとその場から逃げ出してしまった。

 あとには、エイリアとルディだけが取り残されている。

「エイリア、何故会場から出た」
「ごめん…」
「ジールから離れるなと言っておいただろう!?」

 沸々と自分勝手なルディに、怒りが込み上げたエイリアがえた。

「なんだよ!僕ばっかりっ!!自分は令嬢とベタベタして、楽しそうにダンスを踊ってたくせに…僕だって好きな事したっていいじゃん!」
「…好き好んで、舞踏会に参加したわけじゃない。俺だって、好きな事ができるならそうしたい」
「僕と違ってルディは、できるでしょ!三大貴族なんだから!」

 言い終わると同時にエイリアは、口を塞がれていた。

「んぅっ!!」

 振りほどこうと暴れるが、離れることを許さないとばかりに、腰へ回されたルディの腕にちからが入った。
 お互いの視線が交差し、ルディの赤黒い瞳だけが目の前に広がっている。

(サリーニァ様と見つめ合っていた瞳で、僕を見ないでよ!)

 入ってきた舌をエイリアは、思いっきり咬んだ。
「ぐっ」とルディが呻き声を上げ離れるが、舌には咬まれた跡が残っている。

「サリーニァ様がいるくせに!どうして、僕にキスなんかするんだ!」
「何!?」

「二人共、落ちつきなさい!」

 仮面をつけたジールが間に入り、呆れたようにルディに呟いた。

「ルディ様、殴られたくなかったら仮面をつけてください。匂いにますよ」
「………」

「エイリア君、一人にしてすみません。絶対に動かないで下さいと、言ったつもりだったのですが聞こえてませんでしたか?」
「…聞こえてました、ごめんなさい」
「会場に居ないので、心配しましたよ。もう帰れますから、みんなで一緒に寮へ帰りましょう」

 ルディが仮面をつけ直したのを確認し、三人は重苦しい空気のまま寮へと向かった。
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