転生悪役令嬢は、どうやら世界を救うために立ち上がるようです

戸影絵麻

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#38 謀略③

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 私は激怒した。

 あきれた王子だ。生かしてはおけぬ。

 つい頭に浮かんだのは、ついこのあいだ国語の授業で習った『走れ、メロス』の冒頭の一節である。

 女の色仕掛けでころっと寝返ってしまうだなんて、そんなの、動物と一緒じゃない!

「思えば、クリスには、初めから勝ち目はなかったのかもしれません。アグネスは、生まれついてのビッチなのです。幼少から、実の父親や兄弟のなぐさみものにされ、早い段階で頭のねじが狂ってしまった、かわいそうな娘なのです」

 リリスによると、アグネスの父親は高い地位の聖職者なのだという。

 ところが、それは表の顔で、家に帰ると実の娘に対して、長年、鬼畜の所業を働いていたというのだった。

 私は、胸がむかついて、吐きそうになった。

 そんな胸糞悪い話を、異世界に転生してからも聞かされることになるなんて…。
 
「だからと言って、アグネスに同情の余地なんてない。絶対、復讐してやるんだから!」

 気を取り直し、どんと床を叩くと、リリスが2、3センチ、飛び上がった。

「お気持ちはわかります。ですが、それでは、”M”の思うがままかと…」

 少し離れたところにまで避難して、おずおずとリリスが言った。

「M?」

 私は眉根を寄せた。

 また出たよ。この頭文字。

 はて、いったい何のことなのだろう?
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