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第9部 倒錯のイグニス
#12 入部審査②
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ふみに手渡されたレオタードは、小さすぎて容易に躰が入らなかった。
下着をつけたままでは無理だとあきらめ、全裸になってチャレンジしてみたのだが…。
下半身を入れるだけでも精いっぱいで、胸の下で乳房につかえて布がそれ以上うえに上がらないのである。
マシュマロのようにやわらかい乳房を無理やり中に押し込んでいると、
「手伝おうか?」
先に着換えを済ませた純が、たまりかねてそう声をかけてきた。
純の手助けもあり、なんとか肩ひもを両肩にかけるのに成功すると、杏里はふうっと太い息を吐いた。
「あのさ、杏里…それ、ちょっとヤバくね?」
着換えを終えてひと息ついている杏里を眺めて、純が言う。
「なんであんたのレオタード、パットも下地もついていないわけ? それじゃ、乳首も割れ目も丸見えだよ」
「言わないで」
杏里は赤くなり、とっさに胸と股間を手で隠した。
純に指摘されるまでもなかった。
着る前に予想していた通りだった。
極薄のレオタードは、杏里の躰に第二の皮膚のように隙間なく貼りつき、微細な陰影すらをも克明に際立たせてしまっている。
乳首どころか、乳輪の模様まではっきり見て取れるほどだ。
状況は股間も同じで、恥丘の盛り上がり、そしてその間の筋の部分さえ、肉眼で視認できるほどだった。
ふみと璃子のいやがらせかもしれない、と思う。
あのふたり、いつかの仕返しに、私を笑い者にしようとしているんだ…。
その証拠に、純の身につけているレオタードは、色こそ同じ白だが、大事な部位はちゃんとパットと下地の布でガードされている。
杏里にあてがわれたものだけが、明らかに不良品なのだ。
「それにしてもエロイなあ」
杏里のレオタード姿を腕組みして鑑賞しながら、純がつぶやいた。
「可愛い顔して、躰はムチムチで…杏里って、別の意味で最強だと思う」
”浄化”されて間もない純の瞳には、今のところストレスの翳はない。
だが、さすがに健康な性欲を刺激されたらしく、その漆黒の瞳の奥で、一瞬だが、ぬめりとした光が動いた。
「いつまで着替えてるんだ。準備が済んだら、早く出て来いよ」
ハスキーな声がして、衝立の陰から璃子が顔を出した。
白髪に見紛うばかりの銀髪に、逆三角形の顔に光る三白眼が見るからに陰険そうだ。
「あ、ごめん」
純に手を取られて、入ってきたのとは逆側から外に出る。
璃子がふたりを導いたのは、ステージの上だ。
そこにマットレスが敷かれ、即席の練習場ができている。
ステージの下には、野次馬なのだろうか、数十人の女生徒が鈴なりになっていた。
男子禁制なのか、男子生徒の姿がひとりも見えないのが、せめての救いだった。
「うわ、何、あの子」
「ちょっとお、レオタード、透けてない?」
「うっそー、ちょーハズイ! お尻の割れ目が丸見えじゃん!」
「でも、エロいよね」
「乳、でかすぎ」
「あれ、あの子じゃない? いっつも超ミニでパンツ見せて歩いてるあいつ」
「アンリだよ。2年E組のビッチ女」
「アンリがレスリング? AVの撮影と間違えてるんじゃないの?」
誹謗中傷の嵐に耐え、段を上がると、パイプ椅子から羆のような巨体が立ち上がった。
名前を」
腹の底に響く声で、小谷小百合が言った。
ジャージの上下を着ているにもかかわらず、その鍛え抜かれた筋肉のありかがわかる。
直立していても膝に届きそうな長い両手は、まるでネアンデルタール人の末裔のよう。
顔の幅と同じ太さの頸、切り立った崖のような後頭部、ひさしのように突き出た額。
その全体像は、フランケンシュタインの怪物という形容にぴったりだ。
「2-Eの入江純です」
胸を張って、打てば響くように純が言った。
純の均整の取れた肢体に目を細め、満足そうにうなずく小百合。
「同じく、2年E組、笹原杏里です」
純の背後からおずおずと歩み出て、杏里は一礼した。
相変わらず股間と胸を両手で隠している。
野次馬の視線が隠せない尻に集中しているようで、どうにも落ち着かない。
小百合は何も言わず、そんな杏里を無表情に眺めただけだった。
「じゃあ、入江さん。まずはあなたから」
小百合が純を差し招いた。
「相手はこのアニスがつとめます。どんな手を使ってもいいですから、この子をマットの上に倒してみせなさい」
その声に、もう一脚のパイプから、すらりとした人影が立ち上がった。
チリチリにウェーブのかかった髪。
チョコレート色の肌。
その肌が強調する、真っ白な歯と大きな眼。
黒人…?
杏里は目を見張った。
こんな子、学校にいただろうか…?
下着をつけたままでは無理だとあきらめ、全裸になってチャレンジしてみたのだが…。
下半身を入れるだけでも精いっぱいで、胸の下で乳房につかえて布がそれ以上うえに上がらないのである。
マシュマロのようにやわらかい乳房を無理やり中に押し込んでいると、
「手伝おうか?」
先に着換えを済ませた純が、たまりかねてそう声をかけてきた。
純の手助けもあり、なんとか肩ひもを両肩にかけるのに成功すると、杏里はふうっと太い息を吐いた。
「あのさ、杏里…それ、ちょっとヤバくね?」
着換えを終えてひと息ついている杏里を眺めて、純が言う。
「なんであんたのレオタード、パットも下地もついていないわけ? それじゃ、乳首も割れ目も丸見えだよ」
「言わないで」
杏里は赤くなり、とっさに胸と股間を手で隠した。
純に指摘されるまでもなかった。
着る前に予想していた通りだった。
極薄のレオタードは、杏里の躰に第二の皮膚のように隙間なく貼りつき、微細な陰影すらをも克明に際立たせてしまっている。
乳首どころか、乳輪の模様まではっきり見て取れるほどだ。
状況は股間も同じで、恥丘の盛り上がり、そしてその間の筋の部分さえ、肉眼で視認できるほどだった。
ふみと璃子のいやがらせかもしれない、と思う。
あのふたり、いつかの仕返しに、私を笑い者にしようとしているんだ…。
その証拠に、純の身につけているレオタードは、色こそ同じ白だが、大事な部位はちゃんとパットと下地の布でガードされている。
杏里にあてがわれたものだけが、明らかに不良品なのだ。
「それにしてもエロイなあ」
杏里のレオタード姿を腕組みして鑑賞しながら、純がつぶやいた。
「可愛い顔して、躰はムチムチで…杏里って、別の意味で最強だと思う」
”浄化”されて間もない純の瞳には、今のところストレスの翳はない。
だが、さすがに健康な性欲を刺激されたらしく、その漆黒の瞳の奥で、一瞬だが、ぬめりとした光が動いた。
「いつまで着替えてるんだ。準備が済んだら、早く出て来いよ」
ハスキーな声がして、衝立の陰から璃子が顔を出した。
白髪に見紛うばかりの銀髪に、逆三角形の顔に光る三白眼が見るからに陰険そうだ。
「あ、ごめん」
純に手を取られて、入ってきたのとは逆側から外に出る。
璃子がふたりを導いたのは、ステージの上だ。
そこにマットレスが敷かれ、即席の練習場ができている。
ステージの下には、野次馬なのだろうか、数十人の女生徒が鈴なりになっていた。
男子禁制なのか、男子生徒の姿がひとりも見えないのが、せめての救いだった。
「うわ、何、あの子」
「ちょっとお、レオタード、透けてない?」
「うっそー、ちょーハズイ! お尻の割れ目が丸見えじゃん!」
「でも、エロいよね」
「乳、でかすぎ」
「あれ、あの子じゃない? いっつも超ミニでパンツ見せて歩いてるあいつ」
「アンリだよ。2年E組のビッチ女」
「アンリがレスリング? AVの撮影と間違えてるんじゃないの?」
誹謗中傷の嵐に耐え、段を上がると、パイプ椅子から羆のような巨体が立ち上がった。
名前を」
腹の底に響く声で、小谷小百合が言った。
ジャージの上下を着ているにもかかわらず、その鍛え抜かれた筋肉のありかがわかる。
直立していても膝に届きそうな長い両手は、まるでネアンデルタール人の末裔のよう。
顔の幅と同じ太さの頸、切り立った崖のような後頭部、ひさしのように突き出た額。
その全体像は、フランケンシュタインの怪物という形容にぴったりだ。
「2-Eの入江純です」
胸を張って、打てば響くように純が言った。
純の均整の取れた肢体に目を細め、満足そうにうなずく小百合。
「同じく、2年E組、笹原杏里です」
純の背後からおずおずと歩み出て、杏里は一礼した。
相変わらず股間と胸を両手で隠している。
野次馬の視線が隠せない尻に集中しているようで、どうにも落ち着かない。
小百合は何も言わず、そんな杏里を無表情に眺めただけだった。
「じゃあ、入江さん。まずはあなたから」
小百合が純を差し招いた。
「相手はこのアニスがつとめます。どんな手を使ってもいいですから、この子をマットの上に倒してみせなさい」
その声に、もう一脚のパイプから、すらりとした人影が立ち上がった。
チリチリにウェーブのかかった髪。
チョコレート色の肌。
その肌が強調する、真っ白な歯と大きな眼。
黒人…?
杏里は目を見張った。
こんな子、学校にいただろうか…?
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