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第9部 倒錯のイグニス
#26 人外セックス③
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杏里の乳房の感触に気づいたのか、化け物が振り向いた。
髪の毛が抜けかけた、こけしのような球状の頭部。
そこに、瞼のない真ん丸の目がふたつ、飛び出している。
腐った卵の白身のような眼には虹彩も瞳もなく、ただ毛細血管だけが浮き出ていた。
変身の過程で欠け落ちたのか、鼻はなく、ただ小さな一対の穴が開いているだけだ。
唇のない口は顔面を半周する一本の線にすぎず、時折薄く開いては、ふいごのような息を吐いている。
杏里が驚いたのは、その気味の悪い顔がふっと目の前まで漂ってきたことである。
化け物の首が伸びたのだ。
まるで、そう。
ろくろ首のように。
耳まで裂けた蛙のような口が開き、舌が跳び出してきた。
表面を苔に覆いつくされた、深緑色の太い舌である。
ヤマビルそっくりのその器官が、目と鼻の先で、杏里の出方を探るように揺れている。
決断の時だった。
杏里は丸く口を開け、自分も舌を突き出した。
誘うように、化け物の舌先をつついてやる。
ホウ。
びくりと舌を震わせ、化け物が鳴いた。
外見に似合わぬ、甲高い野鳥のような声だった。
杏里はそのヒルそっくりの器官に己の舌を絡ませると、ゆっくりと口の中に導いた。
唇をすぼめ、ディープキスの要領で口の中に吸い込んだ。
化け物の舌は生臭く、ひんやりとしていて、あたかも生の魚を口に含んだかのようだった。
唾液を口腔内に溢れさせ、じゅるじゅる音を立てて吸ってやる。
表面の鱗のようなざらざらが、頬の内側の粘膜をこすり、不思議な感触を残していく。
十分吸い立ててから口を放すと、長い舌を宙で揺らめかせながら、また化け物がひと声、
ホウ。
と鳴いた。
見ると、蜘蛛のように節くれだった脚を、いずなの脇腹から抜き始めている。
杏里に興味を持った証拠だった。
化け物の脚の抜けた穴から、ぼとりと血の塊が落ちた。
よほど深く突き刺さっていたと見え、傷口からは爆ぜた脂肪と内蔵の一部、そして肋骨が見えている。
いずなにとっては、初めて被った大ダメージと言えそうだった。
大丈夫よ、いずなちゃん。
ぐらりと傾き、床に膝をついたいずなに、杏里は心の中で呼びかけた。
あなたは、私と同じタナトスなんだから。
その程度の怪我で、死んだりはしないから。
化け物は今や、すっかりいずなに興味を失ったようだった。
獲物に飛びかかるタランチュラのように毛むくじゃらの腕を広げ、残り2本の脚で仁王立ちになった。
「杏里! どいて!」
それを見て、柱の陰からルナが叫んだ。
だが、何も聞えなかったように、杏里は怪物に近づいていく。
両手を広げ、迫りくる怪物を自分から抱擁しにいった。
怪物のわき腹から生えた蜘蛛の脚が、ずぶりと杏里の柔肌に爪を立てた。
腋の下に、脇腹に、杭を打つようにしてずぶずぶと鉤爪がめり込んでいく。
「ああ…」
杏里はうめいた。
「何してるの! 早く離れて!」
ルナの必死の叫びが、だんだん遠くなっていく。
「ふう…」
両腕に力を籠める杏里。
傷口を中心にして、何重もの快感の波紋が、痛みの代わりにひたひたと全身に広がり始めたのだ。
髪の毛が抜けかけた、こけしのような球状の頭部。
そこに、瞼のない真ん丸の目がふたつ、飛び出している。
腐った卵の白身のような眼には虹彩も瞳もなく、ただ毛細血管だけが浮き出ていた。
変身の過程で欠け落ちたのか、鼻はなく、ただ小さな一対の穴が開いているだけだ。
唇のない口は顔面を半周する一本の線にすぎず、時折薄く開いては、ふいごのような息を吐いている。
杏里が驚いたのは、その気味の悪い顔がふっと目の前まで漂ってきたことである。
化け物の首が伸びたのだ。
まるで、そう。
ろくろ首のように。
耳まで裂けた蛙のような口が開き、舌が跳び出してきた。
表面を苔に覆いつくされた、深緑色の太い舌である。
ヤマビルそっくりのその器官が、目と鼻の先で、杏里の出方を探るように揺れている。
決断の時だった。
杏里は丸く口を開け、自分も舌を突き出した。
誘うように、化け物の舌先をつついてやる。
ホウ。
びくりと舌を震わせ、化け物が鳴いた。
外見に似合わぬ、甲高い野鳥のような声だった。
杏里はそのヒルそっくりの器官に己の舌を絡ませると、ゆっくりと口の中に導いた。
唇をすぼめ、ディープキスの要領で口の中に吸い込んだ。
化け物の舌は生臭く、ひんやりとしていて、あたかも生の魚を口に含んだかのようだった。
唾液を口腔内に溢れさせ、じゅるじゅる音を立てて吸ってやる。
表面の鱗のようなざらざらが、頬の内側の粘膜をこすり、不思議な感触を残していく。
十分吸い立ててから口を放すと、長い舌を宙で揺らめかせながら、また化け物がひと声、
ホウ。
と鳴いた。
見ると、蜘蛛のように節くれだった脚を、いずなの脇腹から抜き始めている。
杏里に興味を持った証拠だった。
化け物の脚の抜けた穴から、ぼとりと血の塊が落ちた。
よほど深く突き刺さっていたと見え、傷口からは爆ぜた脂肪と内蔵の一部、そして肋骨が見えている。
いずなにとっては、初めて被った大ダメージと言えそうだった。
大丈夫よ、いずなちゃん。
ぐらりと傾き、床に膝をついたいずなに、杏里は心の中で呼びかけた。
あなたは、私と同じタナトスなんだから。
その程度の怪我で、死んだりはしないから。
化け物は今や、すっかりいずなに興味を失ったようだった。
獲物に飛びかかるタランチュラのように毛むくじゃらの腕を広げ、残り2本の脚で仁王立ちになった。
「杏里! どいて!」
それを見て、柱の陰からルナが叫んだ。
だが、何も聞えなかったように、杏里は怪物に近づいていく。
両手を広げ、迫りくる怪物を自分から抱擁しにいった。
怪物のわき腹から生えた蜘蛛の脚が、ずぶりと杏里の柔肌に爪を立てた。
腋の下に、脇腹に、杭を打つようにしてずぶずぶと鉤爪がめり込んでいく。
「ああ…」
杏里はうめいた。
「何してるの! 早く離れて!」
ルナの必死の叫びが、だんだん遠くなっていく。
「ふう…」
両腕に力を籠める杏里。
傷口を中心にして、何重もの快感の波紋が、痛みの代わりにひたひたと全身に広がり始めたのだ。
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