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第9部 倒錯のイグニス
#40 基礎訓練⑨
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「こうか?」
小百合の腕に力がこもる。
「ああ…」
首を90度近く折られて、杏里はうめく。
鏡の中の少女が、同じ角度に首を捻じ曲げられ、顔に苦悶の表情を浮かべ、杏里にすがるようなまなざしを投げてきた。
少女はさながら、壊される寸前の生き人形だ。
杏里の中で、蜜があふれ始めた。
倒錯した快感が、快楽中枢で渦巻いていた。
それはある意味、価値観の逆転だった。
ふいに日常に亀裂が入り、その隙間から、見てはいけない向こう側を覗いてしまったような…。
そうなんだ…。
全身をざわつかせる異様な快感にうち震えながら、杏里は悟った。
醜いものは、それが醜ければ醜いほど、虐げられる側のエロスを引き立てる。
気づいてみれば、それは前から潜在意識のどこかで知っていたことのような気もした。
圧倒的に醜いものの手で玩具のように弄ばれ、木の葉のように蹂躙される快楽。
それも悦びの最たるものなのだ。
現に、鏡の中で小百合の餌食になっている私のあの姿…。
苦しげな顔。
助けを求めるようなまなざし。
あえぎの形を留めたままの、ぽってりした半開きの唇。
その間から覗く、ピンクの舌の先。
汗で濡れた髪。
極薄のレオタードを押し上げて突き出した淫らな形のの胸。
ひくひくと波打つ下腹。
開き切った太腿。
そして、むき出しになった、あの部分。
ああ、なんて、なんていやらしいの…。
肌という肌が、ふいに熱を持つのがわかった。
レオタードが、濡れ始めた。
鏡の中の少女の全身が、オイルを塗ったように光沢を放ち始めている。
「おおお、こ、これだ」
小百合が感嘆の声を上げた。
杏里は軽く上半身をねじった。
更に続けて2、3度肩をひねってみる。
と、強い力で喉に食い込んでいた小百合の腕が、ずるりとはずれた。
リンボーダンスのバーをくぐるように身体を折ると、次の瞬間、杏里は拘束から逃れてマットに転がっていた。
「見事だ」
小百合は、信じられないといったふうに、己の両腕を眺めている。
「これなら、もっと危険な技もいけそうだな。たとえば、キャメルクラッチとかも」
キャメルクラッチ?
そう言われても、杏里は途方に暮れるばかりだ。
「どうすれば、いいんですか?」
「そこに、腹這いになって寝ろ。最初は痛いかもしれないが、なあに、すぐ気持ちよくしてやるから」
落ちくぼんだ目にぎらついた光を宿し、そう言って小百合が立ち上がった時だった。
だしぬけに、ドアのほうでノックの音がした。
「誰だ?」
振り返り、不愉快そうな声で小百合が訊いた。
「先生、アニスが呼んでます」
返ってきたのは、璃子の声だった。
なんだか笑いをふくんでいるような声音である。
「アニスが?」
小百合は、遊びを中断された子どものように不機嫌だ。
「ランニングが終わったので、次の指示がほしいそうです」
「スクワット1000回。そう伝えておけ」
「それは、先生の口から、直接どうぞ。だって先生、だめですって」
璃子がクスクス笑い始めた。
「それ以上、そいつとふたりきりでいると、先生、そのうち校則違反、犯しちゃいますから」
小百合の腕に力がこもる。
「ああ…」
首を90度近く折られて、杏里はうめく。
鏡の中の少女が、同じ角度に首を捻じ曲げられ、顔に苦悶の表情を浮かべ、杏里にすがるようなまなざしを投げてきた。
少女はさながら、壊される寸前の生き人形だ。
杏里の中で、蜜があふれ始めた。
倒錯した快感が、快楽中枢で渦巻いていた。
それはある意味、価値観の逆転だった。
ふいに日常に亀裂が入り、その隙間から、見てはいけない向こう側を覗いてしまったような…。
そうなんだ…。
全身をざわつかせる異様な快感にうち震えながら、杏里は悟った。
醜いものは、それが醜ければ醜いほど、虐げられる側のエロスを引き立てる。
気づいてみれば、それは前から潜在意識のどこかで知っていたことのような気もした。
圧倒的に醜いものの手で玩具のように弄ばれ、木の葉のように蹂躙される快楽。
それも悦びの最たるものなのだ。
現に、鏡の中で小百合の餌食になっている私のあの姿…。
苦しげな顔。
助けを求めるようなまなざし。
あえぎの形を留めたままの、ぽってりした半開きの唇。
その間から覗く、ピンクの舌の先。
汗で濡れた髪。
極薄のレオタードを押し上げて突き出した淫らな形のの胸。
ひくひくと波打つ下腹。
開き切った太腿。
そして、むき出しになった、あの部分。
ああ、なんて、なんていやらしいの…。
肌という肌が、ふいに熱を持つのがわかった。
レオタードが、濡れ始めた。
鏡の中の少女の全身が、オイルを塗ったように光沢を放ち始めている。
「おおお、こ、これだ」
小百合が感嘆の声を上げた。
杏里は軽く上半身をねじった。
更に続けて2、3度肩をひねってみる。
と、強い力で喉に食い込んでいた小百合の腕が、ずるりとはずれた。
リンボーダンスのバーをくぐるように身体を折ると、次の瞬間、杏里は拘束から逃れてマットに転がっていた。
「見事だ」
小百合は、信じられないといったふうに、己の両腕を眺めている。
「これなら、もっと危険な技もいけそうだな。たとえば、キャメルクラッチとかも」
キャメルクラッチ?
そう言われても、杏里は途方に暮れるばかりだ。
「どうすれば、いいんですか?」
「そこに、腹這いになって寝ろ。最初は痛いかもしれないが、なあに、すぐ気持ちよくしてやるから」
落ちくぼんだ目にぎらついた光を宿し、そう言って小百合が立ち上がった時だった。
だしぬけに、ドアのほうでノックの音がした。
「誰だ?」
振り返り、不愉快そうな声で小百合が訊いた。
「先生、アニスが呼んでます」
返ってきたのは、璃子の声だった。
なんだか笑いをふくんでいるような声音である。
「アニスが?」
小百合は、遊びを中断された子どものように不機嫌だ。
「ランニングが終わったので、次の指示がほしいそうです」
「スクワット1000回。そう伝えておけ」
「それは、先生の口から、直接どうぞ。だって先生、だめですって」
璃子がクスクス笑い始めた。
「それ以上、そいつとふたりきりでいると、先生、そのうち校則違反、犯しちゃいますから」
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