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第9部 倒錯のイグニス
#174 イベント準備①
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翌木曜日は、短縮授業だった。
きょう明日の二日間で、学園祭の準備を完了させるためだという。
土曜日が、一般参加のノーマルな学園祭。
そして、日曜日が、学内限定の例のシークレット・イベントという段取りだから、準備期間は1日半しかない。
杏里のクラス、2年E組は、表面上は模擬店を出店することに決まっている。
だから、午後からはその本格的な準備に入ることになっていた。
ただひとつ気になるのは、それと並行して、璃子中心に裏でもうひとつ別の準備が進められていることである。
「これは、全クラス同じだよ」
授業後、クラスメイトたちがそれぞれ班に分かれると、ひとり孤立した杏里に向かって、璃子は言ったものだ。
「どのクラスも、土曜日用の催しのほかに、日曜日のための準備を進めてる。杏里、おまえを捕獲するための準備をね」
だから、杏里は準備メンバーには入れない。
どうやらそういうことらしい。
「じゃ、私はどうしたらいいの?」
杏里が途方に暮れた時である。
マイクの入る音がスピーカーに響き、ふいに校内放送がかかった。
ー2年E組の笹原杏里さん、校長先生がお呼びです。至急、視聴覚室に来てください。繰り返します…-
「お呼びだよ」
意味ありげに璃子が薄笑いを浮かべた。
「鬼には鬼の、追われるほうには追われるほうの準備が必要ってことなのさ」
「私も、準備?」
今度は何をしろというのだろう。
第一、どうして校長室ではなく、視聴覚室なのか。
クラスメイトたちは、杏里を強く意識しながら、態度ではその逆に杏里を疎外しようとしているようだった。
それは純とて同じで、杏里は仕方なく教室を出ることにした。
出がけに、ちらりと隣の席に視線を投げる。
唯佳は欠席していた。
もしかしたら唯佳は生きていて、きょうもいつも通り登校してくるのではないか。
そう願いもしたけれど、その考えはやはり甘かったようだ。
が、クラスメイトたちは、唯佳の不在を特に気にする様子もない。
みんな、学園祭の準備で盛り上がってしまい、おとといの事件のことなどすっかり忘れてしまっている。
無理もない、と思う。
唯佳の死を知っているのは、学内広しといえども、あの変異外来種と直接戦った杏里とルナだけなのだ。
しかも戦いの大部分は仮設リングの下で行われたから、生徒たちは外来種の侵入にすら気づいていない。
後ろ髪を引かれる思いで、廊下を急ぐ。
視聴覚室は、校舎の4階にある。
途中、ふと窓の外に目をやった杏里は、グラウンドの真ん中に奇妙なものが出来つつあることに気づいた。
銀色のドーム状の建物である。
形はサッカーボールに似ている。
あるいはプラネタリウム?
なんだろう?
あれも学園祭の準備のひとつなのだろうか?
4階に上がり、視聴覚室のドアをノックする。
「笹原です」
声をかけると、
「入りたまえ」
打てば響くように、校長の大山の声が返ってきた。
引き戸を開けると、窓にカーテンが下りた部屋の中に、いつか見た撮影班の連中が、思い思いの恰好でたむろしていた。
「あの…何のご用でしょうか?」
戸口に立ったまま、警戒心も露わに杏里はたずねた。
「イベントのオープニングのリハーサルをしようと思ってね」
撮影班の中から、大山が現れた。
杏里の後ろで、誰かが引き戸を閉める音がした。
「そのために、きょうはプロのAV男優を呼んである。オナニーシーンだけでは、いくらなんでも、生徒たちも物足りないだろうからね」
きょう明日の二日間で、学園祭の準備を完了させるためだという。
土曜日が、一般参加のノーマルな学園祭。
そして、日曜日が、学内限定の例のシークレット・イベントという段取りだから、準備期間は1日半しかない。
杏里のクラス、2年E組は、表面上は模擬店を出店することに決まっている。
だから、午後からはその本格的な準備に入ることになっていた。
ただひとつ気になるのは、それと並行して、璃子中心に裏でもうひとつ別の準備が進められていることである。
「これは、全クラス同じだよ」
授業後、クラスメイトたちがそれぞれ班に分かれると、ひとり孤立した杏里に向かって、璃子は言ったものだ。
「どのクラスも、土曜日用の催しのほかに、日曜日のための準備を進めてる。杏里、おまえを捕獲するための準備をね」
だから、杏里は準備メンバーには入れない。
どうやらそういうことらしい。
「じゃ、私はどうしたらいいの?」
杏里が途方に暮れた時である。
マイクの入る音がスピーカーに響き、ふいに校内放送がかかった。
ー2年E組の笹原杏里さん、校長先生がお呼びです。至急、視聴覚室に来てください。繰り返します…-
「お呼びだよ」
意味ありげに璃子が薄笑いを浮かべた。
「鬼には鬼の、追われるほうには追われるほうの準備が必要ってことなのさ」
「私も、準備?」
今度は何をしろというのだろう。
第一、どうして校長室ではなく、視聴覚室なのか。
クラスメイトたちは、杏里を強く意識しながら、態度ではその逆に杏里を疎外しようとしているようだった。
それは純とて同じで、杏里は仕方なく教室を出ることにした。
出がけに、ちらりと隣の席に視線を投げる。
唯佳は欠席していた。
もしかしたら唯佳は生きていて、きょうもいつも通り登校してくるのではないか。
そう願いもしたけれど、その考えはやはり甘かったようだ。
が、クラスメイトたちは、唯佳の不在を特に気にする様子もない。
みんな、学園祭の準備で盛り上がってしまい、おとといの事件のことなどすっかり忘れてしまっている。
無理もない、と思う。
唯佳の死を知っているのは、学内広しといえども、あの変異外来種と直接戦った杏里とルナだけなのだ。
しかも戦いの大部分は仮設リングの下で行われたから、生徒たちは外来種の侵入にすら気づいていない。
後ろ髪を引かれる思いで、廊下を急ぐ。
視聴覚室は、校舎の4階にある。
途中、ふと窓の外に目をやった杏里は、グラウンドの真ん中に奇妙なものが出来つつあることに気づいた。
銀色のドーム状の建物である。
形はサッカーボールに似ている。
あるいはプラネタリウム?
なんだろう?
あれも学園祭の準備のひとつなのだろうか?
4階に上がり、視聴覚室のドアをノックする。
「笹原です」
声をかけると、
「入りたまえ」
打てば響くように、校長の大山の声が返ってきた。
引き戸を開けると、窓にカーテンが下りた部屋の中に、いつか見た撮影班の連中が、思い思いの恰好でたむろしていた。
「あの…何のご用でしょうか?」
戸口に立ったまま、警戒心も露わに杏里はたずねた。
「イベントのオープニングのリハーサルをしようと思ってね」
撮影班の中から、大山が現れた。
杏里の後ろで、誰かが引き戸を閉める音がした。
「そのために、きょうはプロのAV男優を呼んである。オナニーシーンだけでは、いくらなんでも、生徒たちも物足りないだろうからね」
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