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第9部 倒錯のイグニス
#225 嵐の予感②
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午前10時の開園とともに、かなりの数の一般客たちが校内に入ってきた。
土曜日で学校が休みだからだろう、生徒の保護者の姿に混じって、他の中学や高校の生徒の私服姿が目立った。
その中に一人だけ学ランを着込んでいる小柄な少年を見つけ、杏里は背後から忍び寄り、ぎゅっと抱きしめた。
「わっ、びっくりした! お、おどかすなよ!」
杏里の腕の中で身をよじったのは、栗栖重人である。
「よかった。来てくれて」
重人のカッターシャツの胸元から中に手を入れながら、杏里は耳元でささやいた。
シャツの下の乳首を探り当て、指でつまむと重人が露骨にいやそうな顔をした。
「やめろって! 何度言ったらわかるんだい? 僕はジェニに―に去勢されて…」
「へんなの。それにしては、ほら、もうこんなに乳首硬くしちゃってさ。まるで感じてるみたいじゃない」
「ち、違うよ。よせ、よせってば。いじわるするなら、このまま帰っちゃってもいいんだぜ? 杏里がどうしても、っていうから来てやったのに。僕、テスト直前で、ほんとはこんなことしてる暇ないんだからね!」
重人をからかうのは面白い。
だが、ここで帰られては困る。
明日のために、校内にどんな仕掛けが施されているのか、色々探ってもらわなければならないからだ。
「はいはい、わかりましたよ。模擬店はしごして好きなものおごるから、そんなにカリカリしないで」
適当にいなすと、恋人同士のように、重人の右腕をつかんで歩き出す。
中学生離れしたトランジスタグラマーの杏里と、小学生のように小柄な重人は、妙な組み合わせである。
そのアンバランスさ加減は、どこへ行ってもよく目立つ。
ふたりは、周囲の生徒たちの視線の的だった。
「まず、1年生の教室から回ろうか。テレパシーでどんな仕掛けがあるか探って、逐一私に教えてほしいの」
メモ帳を取り出し、杏里は言った。
明日は関係者限定のシークレットイベントである。
現在、隣町の荘内橋中学校に通う重人は、立ち入りを許されなくなるのだ。
彼の力を利用するのは、今日しかなかった。
「それはいいけど、相変らず、ルナは見つからないよ」
エントランスで来客用のスリッパに履き替えながら、重人が言った。
「杏里の言ってた幼稚園にも行ってみたけど、今日は休演日でさ、美里先生もいなかった」
「ま、土曜日だからね」
肩をすくめる杏里。
「もしかしたら、一般客に紛れてここに来るかもしれないから、気をつけて」
「美里先生が? うーん、怖いこと言わないでよ。見つかったら、僕、殺されちゃうよ」
美里”殺害”には、重人も加担しているのだ。
なるほど、その可能性は十分ある、と杏里は思った。
右手の渡り廊下から、1年生の教室のある東棟に向かう。
すれ違う生徒たちが、ここでも一様に不躾な視線をふたりに投げてくる。
「やだな。みんな、すごく欲情してるよ。この学校、まるで野生のけものを集めた動物園みたい」
歩きながら、肩をすくめる重人。
「あした、ほんとに杏里ひとりで大丈夫なのかい? なんだか僕、心配になってきた」
土曜日で学校が休みだからだろう、生徒の保護者の姿に混じって、他の中学や高校の生徒の私服姿が目立った。
その中に一人だけ学ランを着込んでいる小柄な少年を見つけ、杏里は背後から忍び寄り、ぎゅっと抱きしめた。
「わっ、びっくりした! お、おどかすなよ!」
杏里の腕の中で身をよじったのは、栗栖重人である。
「よかった。来てくれて」
重人のカッターシャツの胸元から中に手を入れながら、杏里は耳元でささやいた。
シャツの下の乳首を探り当て、指でつまむと重人が露骨にいやそうな顔をした。
「やめろって! 何度言ったらわかるんだい? 僕はジェニに―に去勢されて…」
「へんなの。それにしては、ほら、もうこんなに乳首硬くしちゃってさ。まるで感じてるみたいじゃない」
「ち、違うよ。よせ、よせってば。いじわるするなら、このまま帰っちゃってもいいんだぜ? 杏里がどうしても、っていうから来てやったのに。僕、テスト直前で、ほんとはこんなことしてる暇ないんだからね!」
重人をからかうのは面白い。
だが、ここで帰られては困る。
明日のために、校内にどんな仕掛けが施されているのか、色々探ってもらわなければならないからだ。
「はいはい、わかりましたよ。模擬店はしごして好きなものおごるから、そんなにカリカリしないで」
適当にいなすと、恋人同士のように、重人の右腕をつかんで歩き出す。
中学生離れしたトランジスタグラマーの杏里と、小学生のように小柄な重人は、妙な組み合わせである。
そのアンバランスさ加減は、どこへ行ってもよく目立つ。
ふたりは、周囲の生徒たちの視線の的だった。
「まず、1年生の教室から回ろうか。テレパシーでどんな仕掛けがあるか探って、逐一私に教えてほしいの」
メモ帳を取り出し、杏里は言った。
明日は関係者限定のシークレットイベントである。
現在、隣町の荘内橋中学校に通う重人は、立ち入りを許されなくなるのだ。
彼の力を利用するのは、今日しかなかった。
「それはいいけど、相変らず、ルナは見つからないよ」
エントランスで来客用のスリッパに履き替えながら、重人が言った。
「杏里の言ってた幼稚園にも行ってみたけど、今日は休演日でさ、美里先生もいなかった」
「ま、土曜日だからね」
肩をすくめる杏里。
「もしかしたら、一般客に紛れてここに来るかもしれないから、気をつけて」
「美里先生が? うーん、怖いこと言わないでよ。見つかったら、僕、殺されちゃうよ」
美里”殺害”には、重人も加担しているのだ。
なるほど、その可能性は十分ある、と杏里は思った。
右手の渡り廊下から、1年生の教室のある東棟に向かう。
すれ違う生徒たちが、ここでも一様に不躾な視線をふたりに投げてくる。
「やだな。みんな、すごく欲情してるよ。この学校、まるで野生のけものを集めた動物園みたい」
歩きながら、肩をすくめる重人。
「あした、ほんとに杏里ひとりで大丈夫なのかい? なんだか僕、心配になってきた」
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