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第9部 倒錯のイグニス
#227 嵐の予感④
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西棟の1階と2階の教室をすべて回ると、自分のクラスの模擬店でコーラとフライドポテトを買い、杏里と重人は人気のない屋上に上がった。
給水タンクの陰に肩を並べて座り込み、しばらく黙ってポテトをかじり、ちびちにとコーラを飲んだ。
屋上の柵の向こうには緑と家々の混じった平地が広がり、遠くにうっすらと山の稜線が見えている。
紅葉に彩られた山の斜面に秋の陽が当たって、美しく輝いていた。
こんな平和そのものの町にも、ストレスをためこんだ人間たちがひしめき、杏里たちタナトスの浄化を待っている。
しかも、そのなかには在来種である人間を駆逐して、少しずつ外来種たちが増殖しているのだ。
暗澹たる気分に襲われ、杏里は気持ちを切りかえるべく、かたわらの重人を振り返った。
「で、どうだった? この西棟のトラップは?」
ストローでコーラをすすりながら、重人が答えた。
「トラップ自体は東棟と大差なさそうだね。しょせん中学生が考えることだからさ。でも、さすがに学年が上になると、やばいアイテムもいっぱいだ。通販で買ったのかな。3年生の教室には大人のおもちゃの類もけっこうあるみたい。あと、手錠とか猿ぐつわとか鞭とかさ」
「拷問には慣れてるけど、できればつかまりたくないわね」
杏里はため息をついた。
「特に男子には気をつけないと。下手に挿入を許すと、相手を廃人にしかねないから」
セックスの達人であるAV男優でさえ、杏里とのセックスで射精が止まらなくなり、入院してしまったのだ。
大半が童貞の中学生など、ひとたまりもないに違いない。
「そっちの心配かよ」
重人が呆れた。
そして、改めて杏里の豊満な胸や腰のあたりをしげしげと観察すると、匂いを嗅ぐように鼻を寄せてきた。
「なんか杏里、前よりまた色っぽくなってるもんね。会うたびにエロ度が増してるのは、いったいどうしてなんだい?」
「うーん、美里先生に再会してから、特におかしくなった気がするの。なんだか、体の中の化学反応が加速されたみたいで…」
正確にいうと、美里の触手攻撃でイかされてしまって以来、ということにある。
身体から触手が生えてこなくなった分、舌が新たな触手に変貌し、自分の身体に愛撫を加えてきたのだ。
あの時体内で爆発した濃縮エキスが全身の細胞に取り込まれてからというもの、杏里の身体は火照って仕方がない。
「体育館を見たら、もう帰ろうか」
スカートについたほこりを払い、杏里は立ち上がった。
「どうせつまんない演劇や、コンサートしかやってないと思うけど」
「醒めてるね。やな中学生だ」
最後のポテトを口に放り込んで、重人が苦笑した。
給水タンクの陰に肩を並べて座り込み、しばらく黙ってポテトをかじり、ちびちにとコーラを飲んだ。
屋上の柵の向こうには緑と家々の混じった平地が広がり、遠くにうっすらと山の稜線が見えている。
紅葉に彩られた山の斜面に秋の陽が当たって、美しく輝いていた。
こんな平和そのものの町にも、ストレスをためこんだ人間たちがひしめき、杏里たちタナトスの浄化を待っている。
しかも、そのなかには在来種である人間を駆逐して、少しずつ外来種たちが増殖しているのだ。
暗澹たる気分に襲われ、杏里は気持ちを切りかえるべく、かたわらの重人を振り返った。
「で、どうだった? この西棟のトラップは?」
ストローでコーラをすすりながら、重人が答えた。
「トラップ自体は東棟と大差なさそうだね。しょせん中学生が考えることだからさ。でも、さすがに学年が上になると、やばいアイテムもいっぱいだ。通販で買ったのかな。3年生の教室には大人のおもちゃの類もけっこうあるみたい。あと、手錠とか猿ぐつわとか鞭とかさ」
「拷問には慣れてるけど、できればつかまりたくないわね」
杏里はため息をついた。
「特に男子には気をつけないと。下手に挿入を許すと、相手を廃人にしかねないから」
セックスの達人であるAV男優でさえ、杏里とのセックスで射精が止まらなくなり、入院してしまったのだ。
大半が童貞の中学生など、ひとたまりもないに違いない。
「そっちの心配かよ」
重人が呆れた。
そして、改めて杏里の豊満な胸や腰のあたりをしげしげと観察すると、匂いを嗅ぐように鼻を寄せてきた。
「なんか杏里、前よりまた色っぽくなってるもんね。会うたびにエロ度が増してるのは、いったいどうしてなんだい?」
「うーん、美里先生に再会してから、特におかしくなった気がするの。なんだか、体の中の化学反応が加速されたみたいで…」
正確にいうと、美里の触手攻撃でイかされてしまって以来、ということにある。
身体から触手が生えてこなくなった分、舌が新たな触手に変貌し、自分の身体に愛撫を加えてきたのだ。
あの時体内で爆発した濃縮エキスが全身の細胞に取り込まれてからというもの、杏里の身体は火照って仕方がない。
「体育館を見たら、もう帰ろうか」
スカートについたほこりを払い、杏里は立ち上がった。
「どうせつまんない演劇や、コンサートしかやってないと思うけど」
「醒めてるね。やな中学生だ」
最後のポテトを口に放り込んで、重人が苦笑した。
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