241 / 463
第9部 倒錯のイグニス
#241 嵐の予感⑱
しおりを挟む
ぐしゃ。
何かの潰れる音が響いた。
「いったあーい!
仰向けにひっくり返り、ふみが悲鳴を上げた。
ふみの体重に耐えかねて、椅子が砕け散ったのだ。
ば、化け物だ。
百足丸は腰を浮かせた。
こいつ、いったい何キロあるんだ?
優に百キロ超えてるんじゃないか?
「助けてよォ」
床に仰向けになって、ふみが引っくり返ったゾウガメのように短い手足をばたつかせている。
「おっさん、助けてやれよ」
にやにや笑いながら、凛子が言った。
「困ってるレディを助けるのは、紳士の役目だろ?」
なにがレディだ。
百足丸は胸の内で毒づいた。
それに俺は、紳士なんかじゃない。
「用事を思い出した。先に帰らせてもらうぞ」
そう言い捨てて、踵を返そうとした時だった。
突如としてテーブルがはじけ飛び、グローブのような手で右の足首をつかまれた。
「ねえ、おじさん、今すぐしようよォ。ふみ、おじさんみたいな苦み走ったタイプ、嫌いじゃないよォ」
テーブルの下に潜り込んできたふみが、その巨体でテーブルを跳ね飛ばし、百足丸につかみかかってきたのだ。
肉でできた達磨のようなふみの身体が、容赦なく百足丸の上にのしかかってくる。
ふみが動くたびに酸っぱい腋臭の匂いが発散され、つんと鼻をつく。
おまけに何を食べてきたのか、吐く息が恐ろしくニンニク臭い。
「よせ! どけ! やめろったら!」
ふみの手がズボンのベルトにかかるのを見て、百足丸は大声でわめいた。
近くのテーブルから、高校生らしきカップルが、目を皿のようにしてこちらの惨状を見つめている。
くそ、こうなったら、仕方がない。
下半身にしがみつくふみを立てた膝でガードしながら、百足丸は右手の手袋を外した。
慌ただしく手首を振って、5本の爪を鍼状に変化させる。
人差し指を伸ばして、ふみの眉間を突こうとした瞬間だった。
意外なほど敏捷な動きを見せて、ふみが百足丸の右手首を鷲掴みにした。
「おじさん、鍼刺すところ、違うでしょ~。それ、おま〇こに刺すんだって凛子が言ってたよォ。そうすると、ふみはもっともっと強くなれるんだってえ。杏里に負けないぐらいにね」
肉に埋もれた魯鈍そのものの目が、じっと百足丸を見つめている。
お、おまえ、それ以上強くなって、どうするんだ。
恐怖に駆られ、百足丸は心の中でうめいた。
頼む。
頼むから、俺の前から消えてくれ。
何かの潰れる音が響いた。
「いったあーい!
仰向けにひっくり返り、ふみが悲鳴を上げた。
ふみの体重に耐えかねて、椅子が砕け散ったのだ。
ば、化け物だ。
百足丸は腰を浮かせた。
こいつ、いったい何キロあるんだ?
優に百キロ超えてるんじゃないか?
「助けてよォ」
床に仰向けになって、ふみが引っくり返ったゾウガメのように短い手足をばたつかせている。
「おっさん、助けてやれよ」
にやにや笑いながら、凛子が言った。
「困ってるレディを助けるのは、紳士の役目だろ?」
なにがレディだ。
百足丸は胸の内で毒づいた。
それに俺は、紳士なんかじゃない。
「用事を思い出した。先に帰らせてもらうぞ」
そう言い捨てて、踵を返そうとした時だった。
突如としてテーブルがはじけ飛び、グローブのような手で右の足首をつかまれた。
「ねえ、おじさん、今すぐしようよォ。ふみ、おじさんみたいな苦み走ったタイプ、嫌いじゃないよォ」
テーブルの下に潜り込んできたふみが、その巨体でテーブルを跳ね飛ばし、百足丸につかみかかってきたのだ。
肉でできた達磨のようなふみの身体が、容赦なく百足丸の上にのしかかってくる。
ふみが動くたびに酸っぱい腋臭の匂いが発散され、つんと鼻をつく。
おまけに何を食べてきたのか、吐く息が恐ろしくニンニク臭い。
「よせ! どけ! やめろったら!」
ふみの手がズボンのベルトにかかるのを見て、百足丸は大声でわめいた。
近くのテーブルから、高校生らしきカップルが、目を皿のようにしてこちらの惨状を見つめている。
くそ、こうなったら、仕方がない。
下半身にしがみつくふみを立てた膝でガードしながら、百足丸は右手の手袋を外した。
慌ただしく手首を振って、5本の爪を鍼状に変化させる。
人差し指を伸ばして、ふみの眉間を突こうとした瞬間だった。
意外なほど敏捷な動きを見せて、ふみが百足丸の右手首を鷲掴みにした。
「おじさん、鍼刺すところ、違うでしょ~。それ、おま〇こに刺すんだって凛子が言ってたよォ。そうすると、ふみはもっともっと強くなれるんだってえ。杏里に負けないぐらいにね」
肉に埋もれた魯鈍そのものの目が、じっと百足丸を見つめている。
お、おまえ、それ以上強くなって、どうするんだ。
恐怖に駆られ、百足丸は心の中でうめいた。
頼む。
頼むから、俺の前から消えてくれ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる