激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【激闘編】

戸影絵麻

文字の大きさ
456 / 463
第10部 姦禁のリリス

#102 女王と魔少女②

しおりを挟む
「くう、参ったな」
 由羅がひとりごち、両腕で上半身を起こした。
 小田切たちは部屋を出た後で、残されたのは杏里たち3人だけだ。
 なんとか背骨は繋がったらしいが、由羅は胡坐をかくのも大儀そうだった。
「由羅? 気づいたのね? よかった」
 杏里の顔に喜色が戻る。
「ちっともよくねーよ。くそ、零の野郎、卑怯な真似しやがって」
 由羅がゆるゆるとかぶりを振って、憤懣やるかたないといった口調でつぶやいた。
 零が、いずなの身体を盾にして、由羅の腹をぶち抜いたことを怒っているのだろう。
 その時、小さなうめき声とともに、ルナが無事なほうの片目を開けた。
 潰されたほうの眼はなんとか出血も止まり、まぶたの下に眼球が再生されかけているのが外からも見て取れる。
「ごめんね、ふたりとも。私が不甲斐ないばっかりに」
「何殊勝なこと言ってんだよ。そんなん似合わないよ、ツンデレハーフには」
 珍しく気弱げなルナの言葉に、さっそく由羅が噛みついた。
「だいたいこれ、おまえのせいじゃないし。ただ運が悪かったんだ、お互いにさ」
「ふたりとも、立てる?」
 杏里が言うと、
「肩を貸してくれれば。自力じゃまだ無理だ」
 由羅が自嘲気味に笑ってみせた。
「わかったわ」
 杏里とルナが由羅の両肩を支え、なんとか立ち上がらせた。
「それにしても、ありゃなんだ? 何が起こってる?」
 由羅が呆れたようにつぶやいたのは、ふたりに支えられてようやく立ち上がった時だった。
「わからない・・・。私そっくりの女の子が現れて、いきなり零を呑み込んじゃったの」
 応えたものの、由羅の視線を追って、驚愕に杏里は目を見開いた。
 元杏里そっくりの少女だったモノは、今や奇怪な物体に変貌を遂げていた。
 天井まで届くほどの、巨大な肉の袋である。
 時折その表面が不規則に波打つのは、中に取り込まれた零が暴れているからだろう。
「気味が悪い・・・」
 ルナがつぶやいた。
 杏里も同感だった。
 肉塊の表面に、無数の人体の部位が生えてきているのだ。
 しかもそれは、すべて、杏里のものだった。
 無数の顔、無数の腕、無数の脚、そして乳房、性器・・・。
「どうなってるんだ? あいつは何者なんだ? なんで杏里、おまえの躰のパーツがあんなに・・・」
「見て。なんだか様子が変」
 由羅のうめきを、ルナが遮った。
「私には、あれが苦しんでるように見えるんだけど・・・」
 ルナの言う通りだった。
 肉塊の表面に浮かび上がった杏里そっくりの顔。
 そのどれもが苦痛に頬を歪め、軋むような音を発している。
「中で零が、抵抗してるのかも」
 ふと思いついて、杏里は言った。
「あれに取り込まれないように、あの中で・・・」
「とにかくここは、いったん退却だな」
 緊張にかすれた声で、由羅が言う。
「このままじゃ、杏里の言う通り、ヤバいことになりそうな気がする。あいつ、どんどんでかくなってるし」
 杏里の躰のパーツをあちこちから生やした肉の塊は、部屋の半ばを占拠するほど巨大化している。
 そして、杏里は感じていた。
 肉塊が発する目に見えない波動を。
 杏里の性感帯をダイレクトに刺激する、恐ろしく淫猥なバイブレーションを・・・。
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...